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第33話 体力が完全回復するまで待って

 体力が完全回復するまで待ってもらうのも時間がもったいないので。

 このままわたしはテントで休憩させてもらって、カリンちゃんと護衛の皆様方で、先行してもらっても……って思ったんだけど。


「あたし、お姉様と離れるのは嫌です!」と、カリンちゃん。

「そうですね。今回のオルキーヌス・オルカの時のように、何かあったらアイリス様の機転を頼りにさせてもらかもしれませんし」とイグニス副団長。


 他の皆様からも、そうだと賛同いただいて……。


「オルキーヌス・オルカに歌ったことの疲れというよりは、こちらの世界に着て、長期の旅、慣れないこと尽くしでお疲れがたまっているのかしれませんね」

「それに、スキルの発動し続けで、そちらの疲労もあるかと……」


 えっと、ゲームでよくあるHPだけじゃなくて、MPとかSPとか、いろんなゲージが下がってきているとか、そんな感じなのかな、この疲れ……。


 うーん……。

 とはいえ、せっかく西の島についたのに、半日も歩けば多分結界の神殿に辿り着くらしいのに……。


「あ、じゃあ、南の結界島の時にあたしを運んでもらったみたいに、今度はお姉様をテントのお神輿で運ぶのは?」


 カリンちゃんが提案してくれた。


「ああ、そうですね。馬車が通れるような道はないですが、テントなら運べます」


 イグニス副団長が承諾してくれたけど。

 反対したのはナイジェルさんだった。


「スキルの発動に疲れが出るというのは、通常はないのですが。アイリス様の場合、異世界からのお方ですから。もしやということもあります。スキルの発動自体、しばらくお休みにしてみては」


 ナイジェルさんの言うことにも一理ある。


 話し合った結果、わたしはイグニス副団長におんぶしてもらって、結界の神殿まで行くことになったのよね。

 あ、ある意味恥ずかしいけど……。

 妥協点。


 だったんだけど……。

 もじもじと、恥ずかしがっていたら、なんと!

 お姫様抱っこで運ばれることになってしまいましたっ! あわわわわ!


「お、重いでしょうっ!」

「いえ、アイリス様は羽のように軽いですよ」


 何てにっこり笑ってくれる細マッチョ様……。


 ああ、なんてありがたい……。神ですか……。


 お姫様抱っこで運ばれて、途中休憩も挟んで、たどり着いた西の神殿。

 なんていうのか、やっぱり南の神殿とはぜんぜん趣が異なった。


 たとえていうのなら……、シリア砂漠のオアシスであるパルミラ。紀元前あたりのローマ帝国軍が侵攻して、壊された巨大な神殿……の、廃墟。

 列柱が並んで、その列柱が崩れて瓦礫になって。修復もなされないまま、風に吹き晒されている。

 そんな列柱の間を通っていくと、半ば崩れた台座とか、彫刻群なんかも出てくる。

 昔の神々とか、偉人の像が立っていたと思われるんだけど、頭部とか腕とかがなくなって、というか崩れ落ちている。

 更に奥まで進むと、天井のない円形劇場が見えてきた。

 いや、劇場ではないのかな。広い広場。その広場の奥に、地下へ進む階段がある。


「あの階段の先に、宝珠があります」


 多分、わたしが休んでいた間に、先遣隊の青の騎士の皆さんが調べていてくれたのよね。

 広場でちょっとだけ休憩。

 軽くお水を飲んで。

 それから、わたしも歩いて階段を下りていく。


「あ、あった……」


 台座の上に設置されている宝珠。南の時の真っ二つとは違うけど、西の宝珠も、ひびが入っていた。


「カリンちゃん、なおせる?」

「うん、まあ、二回目だから大丈夫だと思う」


 すっと、カリンちゃんが進み出て、宝珠に手を触れる。

 真っ白い光がカリンちゃんの手から溢れ出て……、地下から地上にまであふれていって……。


 そして、南の宝珠を治した時とまた、同じ。

 温かくて気持ちがいい温泉のような光の中。

 わたしは優太お兄さまのことを思い出していた……。



「どうして? どうして女の子は赤いランドセルなんて言うの?」


 小学校の一年生になる前。お父様とお母様からそろそろランドセルを選びましょうねって言われて、わたしは優太お兄様と同じ黒いランドセルが欲しいって言った。

 お兄様大好きなわたしは、ランドセルもお揃いが良かったの。


 なのに、「あら、あやめは女の子でしょう? だったらランドセルは赤いほうがいいわよ」って。


 わたしに選ばせてくれるんじゃないの?

 自由に、好きなものを選ばせてくれるんじゃないの?


 でも、ちがうの。

 お父様とお母様は、お父様とお母様が納得のいくものを、わたしが自発的に選べと強要してくるの。


 だから、ランドセルを選べと言うのは、自由になんでも選んでいいわけじゃない。

 お父様とお母様が良いと言った範囲から、選ぶしかない。


 お父様とお母様にとっては、女の子のランドセルの色は、当然赤とかピンク。

 パステル系の水色なら、よくはないけど、妥協の範囲。

 黒い色や、剣やドラゴンのモチーフ付のランドセルなんて、論外。そういうものは男の子のもの。


「ねえ、六年間使うのよ? だったら、六年後のあやめちゃんが後悔しない色を選ぶべきじゃない?」


 やんわりと、黒は駄目と言われる。


 わたしは、両親が良いと言ったものの中からランドセルを選ばざるを得なかった。


 いつも、そう。


 親の言う「自由に選んでいい」は「本当の自由」なんかじゃない。

 制限された中から選べ。そうすれば間違いはないから。


 ああ……苦しいな。



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