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第32話 途中でオルカたちが飽きると困るから

 途中でオルカたちが飽きると困るから、国民的アニメで有名な「お散歩」の歌を歌う。もちろん扇を指揮者の棒のように振りながら。歩こう、歩こう……だと海にはそぐわないので。  

 歌詞を泳ごう、泳ごう……に変えて歌う。歌いまくる。


 歌詞に合わせるように、オルカたちもきゅいきゅいと楽しそうに歌いながら、小舟を島まで押してくれた。


 そして、全員、無事に、西の結界島に到着。


『では、楽しい余興をありがとう娘たちよ! さらばっ! またいつか会う日まで!』


 きゅいーきゅいーと、オルカの群れは去って行った……。



 あー……、よかった、結果オーライ。

 さすが日本のアニメの曲。異世界の魔物さえも魅了する……。


「アイリスお姉様っ! すごい!」

「わ、わああああ!」


 砂浜を走ってきたカリンちゃんに抱き着かれて、わたしはそのまま尻もちをついてしまった。ははは、力が抜けたのかも。


「巨大トビウオが出た時は、この島に辿り着くのなんて無理だと思ったけど。すごいわ!」

「あはははは……。うまくいって良かったわ……」


 イグニス副団長もナイジェルさんも。カリンちゃんに賛同して「うんうん」と頷いている。


「いや、あの遊びたがりのオルキーヌス・オルカを、手懐けるとは……」

「実に素晴らしい……」


 青の騎士団の皆さんも、白の魔法師団の皆さんも、イグニス副団長とナイジェルさんの言葉に盛大に頷いている。


「手懐けるって……、そもそもオルカの対処法は、イグニス副団長が教えてくれてんですけど……」

「はい? 私ですか?」


 目をぱちぱちと。あら、イグニス副団長、意外にまつげ、長いですね……。


「ええ。遊びたがりって、教えてくれましたので。だったら、遊べばいいだけだって……」


 うん。遊びたがりなら、気が済むまで遊んであげればいい。

 何か用事を頼むのなら、その用事も遊びにしてしまえばいい。


 だって、小さい子どもってそうだよね。

 遊んだあと、部屋に散らばったおもちゃ。きれいに片付けなさいって叱ると嫌がるけど。

「さ、次はお片付け競争だよ!」って言うと、率先して片付けるし。


 オルカも、三歳児とか四歳児とかかなあって思って。


 そんな三歳児に向けて、全力でがんばったから……、気が抜けたというよりは、力が出ない……。


「あの、島に着いたので、すぐにでも宝珠に……とは思うんですが、すみません、わたし、休みたい……」


 体力的にではなく、気力的に疲労困憊なんです……。


 テントを、張っていい場所を選んでもらって。

 わたしとカリンちゃん用にレベル7のテントを出して。


「ごめんなさい、わたし、少し休みます……」


 ベッドに横になったら、そのまますうすう眠ってしまったわたし。


 夕方になって、後から夕ご飯をもらって、五右衛門風呂のお風呂に入って、また寝てしまいました……。


 イグニス副団長やナイジェルさん、他の皆さんは、この西の結界島の海岸あたりに拠点となる海の家を作っていたそうなんだけど。

 その物音にも気がつかずにわたしは寝こけておりました。

 朝、起きたら既に日は高くて。

 早朝から、青の騎士団の皆さんが、結界がある神殿の場所まで、探索してきてくれたらしいです。


 南の結界島とは異なり、この西の結界島は割と砂っぽい感じで。

 それほど鬱蒼としていなくて、草刈も必要なかったとのこと。


 それで、わたしの体調が整うのを待って、それから行こうということになりました……。


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