表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/44

第31話 遊びたがりのオルキーヌス・オルカ

 遊びたがりのオルキーヌス・オルカ。

 だったら遊ぶしかないよね!


「小舟を貸してください。わたしが乗って、海に……というか、オルカの近くまで行きます」

「危険ですっ! オルカに小舟が突かれて、小舟は大破! アイリス様が海に投げ出されます」

「はい、ですから、白の魔法師のどなたかに船に同乗してもらいます。オルカに突かれても、舟が海に浮かび続けるように。あ、あとわたし、舟、こげないので、誰か漕ぎ手も……」


 イグニス副団長は眉根を寄せたけど、真剣な顔でわたしの顔を見てくれていた。


「……アイリス様、小舟で海に乗り出して、何をなさるおつもりで?」

「オルカの前で、歌って踊ります」

「は?」


 アイドル・オン・ステージ! というわけではないけれど。


 大学の先輩たちに見せてもらった昔のアニメ。

 文化のない宇宙人。その目の前で、とあるアイドルが歌って踊ったら。

 宇宙人は文化に目覚めちゃって「デ・カルチャー」って叫んで世界は平和になりました……。


 歌姫は世界を救うのよ……。多分。


「うまくいくかどうか分からないけど。やってみる価値はあると思うんです」


 イグニス副団長はナイジェルさんと即座に相談。


 わたし、イグニス副団長、ナイジェルさんの三人と、それぞれの船のこぎ手で。

 三艘の小舟に乗って海に出ることにした。


 もしもオルカ・アタックをされたら、ナイジェルさんの魔法でガード。

 それ以外の不測の事態が起こったら、イグニス副団長が力技でなんとか……というか、剣でオルカを切って捨てるって……。


 オルカを剣で切るのって……。つるっと滑りそうな脂肪ガード……。

 たしか 海洋哺乳類の脂肪層って、密度が高かったはず。緻密に配列された結合組織の厚い層……。で、体脂肪率は五十パーセントを超えていたはず……。地球産の海洋類と、異世界の海洋性魔物の体が一緒なはずはないけど……、多分、剣では切りにくいよね……。


 まあ、でも、いざという時は頼りにします。わたしが海に落ちた時も、きっと泳いでわたしを救出してくれるはず。


 その時のために、イグニス副団長は鎧を脱いで、しかも泳ぎやすいようにとマントや上着も脱ぎだした。


 わあ! 半裸! 昼間の太陽に照らされた細マッチョの肉体美っ! まぶしい!

 なんてふざけている場合じゃないけど。


 女は度胸! ですよ!

 やりましょう!


 小舟で海に漕ぎ出す。

 するとオルカたちは「何? ナニ? 何が始まるの?」と、期待に満ちた目でわたしたちを見て……。小舟の周りをぐるぐる回る。

 その様子は、散歩に行くよとリードを持った飼い主の回しを走りまわる犬のよう。

 ある意味かわいいんだけど……。

 そのぐるぐる回るオルカの数が……増えていく。

 どんどん増えて、増えて……。

 期待に満ちた、オルカたちの瞳。二十四の瞳どころかその十倍……。ここまで多いと数の暴力!

 ええい!

 わたしは思いっきり息を吸って。そして。マイク代わりの扇を握り締める。


「みんなーっ! 抱きしめてっ! この異世界の果てまで!」


 とあるアニメの歌姫の、決め台詞アレンジバージョンを叫ぶ。

 そして、歌う。

 恥ずかしいとかは、言ってられない。


 一曲、二曲と歌っていくと、オルカたちが手拍子……じゃないや、腹ヒレでぱちぱちと胴体を叩いてくれた……。


 小舟が揺れるから激しいダンスは無理だけど。

 アイドルチックな手振りをちょっとだけつけて、歌って。

 そして、ピースサインを顔の横で構えて、ウインク。

 ウインクと同時に「キラッ☆彡」とキメポーズ。

 オルカたちから、やんややんやの喝さいをもらったわ……。

 そして、代表のように、一頭のオルカがわたしたちの前に進み出てきた。


『娘よ……。素晴らしい歌とおもしろい振りをありがとう☆彡』


 お、オルカが喋った!

 びっくりしつつも、せっかく褒めてもらったのでお礼を言う。


「あ……、ありがとう! 楽しんでもらえて何よりだわ」


 恥ずかしさを見ないふりして、全力でアイドル演じた甲斐があった!


『ふふふ……、これはお礼をしなければなりませんね……』


 お礼がおかしなものだと困る!

 わたしは即座に言う。


「あ、あのっ! お礼というのなら、わたしたち乗る小舟を、あの島まで運んでくれませんか⁉ わたしたち、全員、島に行きたいんです!」


 全員と、カリンちゃんや青の騎士団のみんな、白の魔法師団のみんなを指で指し示す。


「あの者たちも小舟の乗るので。小舟を突いて、島まで運んでもらえると助かります!」


 勝手にお礼をされる前に、こちらからの要望を告げる。


『ほほう……。鼻先で小舟を突いて運ぶ……。それもまた一興……』


 オルカの皆さんが、きゅいきゅいと賛同の声を上げた。よしっ!

 わたしは素早くイグニス副団長に目線を流す。

 わたしの視線の意味を理解してくれたイグニス副団長は、


「全員急ぎ小舟に乗れっ!」


 砂浜にいて、こちらを向いているカリンちゃんや青の騎士団の皆さん、白の魔法師団の皆さんに向かって怒鳴った。


「はっ!」


 青の騎士団の皆さんが、即座に砂浜の上の小舟のを波打ち際に押していく。

 カリンちゃんたちを乗せて、わたしたちのほうへと進む。

 オルカたちが、みんなを乗せた小舟のほうへと向かう。


「では皆様! わたしの歌に合わせてっ! あの島までGO! ですよ!」


 オルカたちが全員合わせたかのように同時に「キラッ☆彡」とウインクをキメてきた……。あははは……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ