第30話 しかし、選ばねば、
しかし、選ばねば、西の結界島にはたどり着けないのです……。あ、あああああ……泣くわ~。
更に数日後。
王都から、大量の香木とやらが海の家に届きました。
まず、海岸線近くに三か所くらい、キャンプファイヤーみたいに木を四角い形に組んで。
その中に更に香木を突っ込んで、燃やしたのね。
煙はそんなに出なかったんだけど、辺りにすごい香りが充満した。
何というか……、苔を凝縮したみたいな香。
もわーんと、もはーんと。
「臭い……って程じゃないけど」
「あんまりかぎたくない臭い……」
とりあえず、ハンカチで鼻と口を塞ぐ。
そうしているうちに、びよーんびよーんと飛んでいた巨大トビウオが逃げていった!
お、おおお!
トビウオが逃げていけば、それを捕食する、魚型巨大海洋生物もトビウオを追いかけてどこかに行くというもので……。
こ、これは、イケるかもしれない⁉
小舟で西の結界島に辿り着ける⁉
青の騎士団の先遣隊が、小舟に乗って、漕ぎ出していった。
そうしたら……。
今度は朱色に藍色に金色の縁取りの……、極彩色のシャチみたいな生き物が突然、数匹現れて、小舟にその体をぶつけてきたっ!
ぶつかられて、海に投げ出される青の騎士さんたち。
ナイジェルさんや白の魔法師団の魔法師たちが、風の魔法で青の騎士たちを海から引き上げるというか、風圧で、空に投げ飛ばす感じで……。
うああああ……。何これっ!
「しまった! オルキーヌス・オルカだ!」
イグニス副団長が叫ぶ。
オルキーヌス・オルカ⁉
えっと、つまり、あの極彩色のシャチみたいな海洋生物は、やっぱりシャチとかオルカとか、そういう系の生き物なんですね?
「アイツは……、遊びたがりなんです! 香木も効果がありません!」
「えええ!」
「しかも、海から海岸……砂浜のほうまでその身を乗り出して、我々を海に引きずり込んで遊ぶという習性もあり」
「あ、遊ぶって」
「ボールみたいに放り投げてですね……」
「運悪かったら死にませんかそれ⁉」
「そういう生き物なんです。気が済むまで遊ばないと去ってくれないのです」
「何と迷惑な……」
せっかく巨大トビウオも、巨大海洋生物もいなくなったというのに。
もっと迷惑な遊びたがり屋がやってきちゃった……。
「あのオルカを無視して地下通路を通ります?」
それしか方法はなさそう……。
「いえ、生き物の匂いとか気配とかを察知する生き物ですので。我々が地下通路を通って行ったら、下に何かいると思って、海底を突いて……」
「つ、通路を壊すとか、そういう感じですか⁉」
「……あり得る話です」
うわあ……。
海の上もダメ、下もダメってコト?
「あのオルカの気が済むまで何もできない……」
「……小舟を突いて放り投げて。それを遊びとしているのでしょう。ほらあの顔を見てください」
海を見れば、オルカが「遊ばないの?」みたいなつぶらな目でこちらを見つめている……。
大きさも、普通のイルカサイズで……かわいいんだけど。外見だけは……。
「お、お姉様……、どうすれば……」
カリンちゃんも動揺。
ええと、じゃあ……。
「遊んであげればいいのね……?」
これで正解か、分からないけど。
巨大じゃないし、意思の疎通もきっとできるよね、多分。
だったら……。
やってみるか!




