第27話 南の宝珠を修復して
南の宝珠を修復して、カリンちゃんの体も回復して、更に五右衛門風呂の温泉にも入って。
気分一新、新たに西へ向かう。
と言っても、来た道を王都方面に戻っていくだけ。
途中、王都の少し手前から西に行くらしいけど。
まあ、ルートの選択は、この世界を知らないわたしたちより、青の騎士の皆様のほうがよくご存じよね。
わたしはカリンちゃんと一緒に馬車に揺られるだけ。
体調も整ったし、風景も来た時見たから新鮮味がないし。
暇に任せて、馬車内女子トークです。あはははは。
五右衛門風呂に入ってもらったためか、マグノリアさんとカメリアさんとの距離もなんとなく縮まった感じがする。
護衛中だから、口数は多くはないけど、二人ともピリピリした感じはなく。あれやこれやと教えてくれるようになり……。休憩中は軽口まで言える間になった。
そうして、おずおずと、マグノリアさんが聞いてきた。
「……あの、ずっと聞きたかったのですが」
「ん、何?」
「聖女様の世界では、本当にイグニス副団長がカッコイイのでしょうか? 第三王子殿下を遠ざける言い訳としてではなく」
嘘じゃないまでも、口実ではないか。
そんなふうにマグノリアさんもカメリアさんも疑問に思っていたらしい。
「え? イグニス副団長、普通にカッコイイでしょ」とわたし。
「第三王子のクソ野郎を遠ざけるために言ったところも無きにしも非ずだけど。イグニス副団長は一般的にかっこいい部類だよ。というか、青の騎士様、みんなイケメンぞろいだよね」とカリンちゃん。
「はあ……、本当なんですねえ……」
マグノリアさんもカメリアさんも溜息を吐いた。
「逆に聞きたいけど。あれだけカッコよくて、仕事もできるイグニス副団長がどうしてモテないの?」
わたしにしてみれば、不思議だ。
「はあ……、副団長は……目つきが凶悪じゃないですか」
そうかなあ?
「正直に申し上げまして、怖いです」
女性騎士から怖いって言われるくらいなの……?
「カリンちゃん、イグニス副団長、怖い?」
カリンちゃんは首を横に振った。
「眼光鋭いなって、思っても、怖いなって思ったことはないよ。武士みたいでかっこいいじゃない」
「そうだよねえ。やっぱり異世界の人とわたしたちの感覚って違うのかしら?」
悩む。
「わたしとしては、今まで出会った男の人の中で一番カッコイイんだけど、イグニス副団長」
「あれ、アイリスお姉様、イグニス副団長に惚れてたの?」
「ほへ⁉ い、いや、そこまでじゃないけど!」
そもそもわたし、初恋もまだです。
カッコイイ男子を見てキャーって黄色い叫びを上げる程度。
「んー。敢えて言うのなら、推し?」
かなあ……。ちょっと違うような……。
「芸能人見てきゃあきゃあいう感じ?」
そんな感じに近いかなあ?
どうだろう?
「そう言いうカリンちゃんはどうよ?」
「あたし、これでもモデルというか、芸能人志望だから。恋愛はご法度ではないけど、うーん。どうかな? 眼鏡外したナイジェルさんもカッコイイよねえって」
「ああ……。目の下のほくろが色気あって……。アニメキャラみたいだよね」
カリンちゃんは、あははははと笑った。
「あー、わかる! 眼鏡取ったらセクシー系お兄さんなんて、多分、リアルではいないよね。アニメならいるかもだけど」
恋愛談議にもならない女子トーク。
馬車の旅にも慣れて、暇なんです……なんて。
「まあ、この世界で恋愛しても、日本に帰ったら意味ないよね」
お別れせざるを得ないからねえ。
「恋愛とか結婚とか、しないで生きていけたらいいのにねえ」
思わず言ってしまった。本音。
「あら、お姉様。現代日本、おひとり様だって大勢いるよ」
「うん。だけど、うちのほうは、田舎だから。やっぱりまだまだ昭和を引きずっているのよ。結婚して跡継ぎ産んで……」
「社長の娘だから、言われるのかな?」
「それもあるかもね……」
あー。うまく何とかなる方法ってないのかな。魔法みたいに。
わたしだって、お兄様は嫌いじゃない。でも結婚は無理だよ。兄にしか思えないもの。
そこで、停滞。ぐるぐるとおんなじところを行ったり来たり。ぐだぐだうだうだ……の、繰り返し。
「カリンちゃんと、この世界で宝珠をなおして。日本に帰るのが数年後とかで。その間に優太お兄様、どこかの誰かと結婚して子どもでもできてくれていればいいのになーなんて思うけど」
失踪扱いになったわたしを、探して、探して、探しまくっているのかも……しれない。
優太お兄様のことだから、そうなる可能性のほうが高い。
うわあああ……と頭を抱えてしまう。




