第23話 三百年間ずっと放置していたわけではない
三百年間ずっと放置していたわけではない……のだけれど。それでも、それほどこまめに手入れをしていたわけではない場所……らしい。
なにせ南の結界島は小さな島で。
そこで暮らすことはかなり厳しいらしい。
畑はないし、水も海水だけ。清水はない。魚釣りはできそうだけど、野菜や果物なしで人が生きるのは厳しいよね。
結果、遠くから眺めて、時折手入れに行って。……年を経れば、それもだんだんしなくなるというものよ……。
神聖な祭壇がある場所って言ったって、平和な時期は別に誰も見向きしない。結界にほころびが生じているって、その状態でようやくみんな慌てる。今がまさにそれ。
「現状、南と西の結界の神殿には、先遣隊を出しておりまして、聖女様が通れるよう、整備をしているはずなのですが」
うん、放置して、雑草が生えまくっている……とか、容易に想像できるよね。
みんなで島に辿り着いて、茫然として、それから聖女が通れる世に雑草を引き抜く……のではなく、ちゃんと先遣隊を派遣しているとは。
イグニス副団長もナイジェルさんも有能だわ……。
「予想以上に祭壇が荒れておりまして……、もう三四日、島に渡らずお待ちいただきたい」
申し訳なさそうに頭を下げるイグニス副団長とナイジェルさん。
あ、ナイジェルさんは、テントのスキルで近眼が治り、眼鏡をはずしました。そうしたら、左目下のほくろが目立って、なんとセクシー系お兄さん顔に! 無駄に色気がありますよ!
真面目ビジネスマンが、歌舞伎町のホストみたいになっている!
大学の先輩たちだったら、オイシイと言うかもしれません。それとも設定盛りすぎとかいうかも。なにはともあれ、眼福です。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「のんびり海でも眺めて、お魚食べて、待ってます~」
……第三王子がいないせいか、ご機嫌ですねカリンちゃん。笑顔が可愛いわー。
とりあえず、船で島に渡るまで。
わたしはちょこちょこテントを出しては仕舞ってを繰り返してみた。
そうしたら……。
「具現化スキル『テント』 LV6 回復量(中) 「具現化スキル『テント』 LV6 回復量(中)」って、出た!
お、おおお!
見た目はレベル5のロッジ型テントと同じ。
テントの中を覗いたところ、備品もレベル5と同じ簡易折り畳みベッド二人分。で、回復量(中)ですよ! わー! 進化した!
あ、でもレベル5にあった異常状態回復のオプションはついていない。
毒とか痺れとかの場合はテントレベル5で回復するしかないかー。
オプションではないけど、追加機能で、今後はテントを一つだけではなく、二つ、出せるようになったらしい。
おおお、これも進化だね!
テントが二つ出せると言うのなら、とりあえず、やってみましょう!
レベル6のテントはいったん仕舞って。レベル1の小さなテントとレベル5のベッド付きテントを同時に出す。
念じてみたら、二つとも、横並びに出て……。
「わあ……、すごい立派!」
「そうね、びっくりだわ……」
機能はそれぞれのままらしい。
レベル1のほうは、マットで、回復は一人分。
レベル5のほうは、回復は四人分。
つまり、一日五人分、回復ができるようになりました……。すごい。
あ、レベル4とレベル5のテントで回復すれば、六人まで回復できるか……。
いや、レベル5のテントを二つ出せれば……。
レベル1のテントをいったん消して、レベル5を二つ出ろーって念じる。出た。わー、できた。
色々実験しようなんて思ったら……。
島で、魔物が出たって……連絡が。
「ま、魔物って……どんなタイプ……」
「はじめは単なる島の蛇だと思っていたのですが……、切っても切っても死なず、増えるので……」
「ひいいいいいっ!」
あ、カリンちゃんが、悲鳴を上げた。
「あ、あたし、蛇とか、そういうの駄目……」
蛇か……。切っても増える……。それは厄介ねえ。
「うーん、島の神殿に結界を機能させてしまえば。結果的に、蛇の魔物はどこかに逃げていく……ってパターンかな」
大学の先輩に借りて読んだ大量のラノベ。
その中に、そんな対処法があったような気がする。
「島に渡りましょう。それで……、えーと、お神輿って、この世界にあるのかな? 木を組わせて、担ぎ棒を作って、その上に平らな板を張って、テントを乗せる……」
「こんな感じですか?」
ナイジェルさんが砂の上に指で絵を描いた。まさしくお神輿の形!
「はいそうです。わたしのレベル1のテントの中に、カリンちゃんが入ってもらい、青の騎士団の皆さんに、担いで運んでもらいます。わたしと白の魔法師団の皆さんは、走って付いて行って。で、結界の神殿に着いたら、急いでカリンちゃんに宝珠をなおしてもらって……」
テントの中に入っていたら。カリンちゃんの身は安全。
木の上から蛇が降って来ても、テントで防げる。
その代わり、テントごとカリンちゃんを運ばないといけないから、運ぶのが大変。
蛇が大丈夫であれば、カリンちゃんをイグニス副団長におんぶしてもらって運んでもらうこともできたと思うけど。
蛇が降ってきたらと思うと……怖いもんね。
「だいたい理解しました。それではその作戦で」
わたしが説明するや否や、即座に動くイグニス副団長とナイジェルさん。
さすが仕事早い。




