第2話 白とピンクのフリルのヘッドドレス
白とピンクのフリルのヘッドドレス。
コテで巻いたのか天然パーマなのかは分からないけど、腰まで長いゆるふわウェーブの髪。
きょとんとした大きな目は薄ピンク……って、カラコンかな?
色付きリップなのか、唇までピンク色。艶があるからグロスかも。
着ている服もすごい。
フリルをふんだんに使用した淡いピンク、水色、白のカラーリングのワンピース。ゴスロリではなくて、甘ロリって言うんだっけ、こういうひらひら系。
リクルートスタイルのわたしと比較するまでもない。
「あなたが聖女だな?」
王子様っぽい美少年が、美少女の前にひざまずいて、その手を握る。
「俺様はフィッツジェラルド神聖王国王位継承権第三位、キーファーという。聖女よ、そなたの名は?」
はい、わたしなどはガン無視ですね、キーファーとかいう美少年王子様。
わたしだって、リクルートスタイルの普通の女と美少女が居たら、美少女が聖女だとは思うだろうけど。
聖女って、外見で選ぶものじゃないよねえ……。
その美少女は「は?」と言ったきり動かない。
そんな顔もかわいいわー。すんごい美少女。いいなー、こんな顔なら、就職活動、一発合格できそう。
うらやましいわー。
なんて思っている間に、
法王なのか教皇なのか、役職名は分からないけど、白いローブを着た白髭の、いかにもっていう感じのおじいちゃんがやって来て。
「こちらの宝珠に手を触れなさい」って、サッカーボールサイズの、虹色に光る石をわたしたちに示した。
隣の美少女が触ったら出ましたよ。虹色の石の表面に、聖女の文字と、ゲームのステータスみたいなのが。
〈称号〉異世界から召喚されし聖女 LV1
〈状態〉良好
読めたのはそれだけで、後は文字化けしているみたいで分からないのが並んでいた。
……はい、隣の美少女、聖女確定です。おめでとうございます。ヤッパリナー。
そして、わたし。
一応、聖女が二人召喚されたという場合もあるかもだから、わたしも宝珠とやらに手を触れてみた。
〈称号〉具現化スキル『テント』の使い手 LV1
〈状態〉良好。だが、やつれ気味。
とにかく……聖女ではないことは、宝珠に手を触れる前から予測できたことだけど。宝珠に触れたことで確定となりました……。
聖女じゃないのはいいよ、聖女じゃないのは。
でも、スキル『テント』って何?
「あのー、スキル『テント』ってなんですか?」
聞いてみた。
まさか、キャンプとかで使うテント……、つまり、雨・風・日光などを防ぐために用いる厚い布製の幕のこと?
いくら何でもまさかねぇ……。
異世界に召喚されてテントなんて。
余りにもしょぼい。
白髭のおじいちゃんや白ローブを着た魔導士的な人たちは首を傾げている。
「『テント』というのは……」
「知らない言葉ですね……」
この世界、テントという言葉自体ない⁉ えええええ⁉
あ、それでさっきのステータス画面みたいなのに、カギカッコ付きで『テント』ってあったのか。
じゃあ、具現化とかスキルって言葉はあるのね。カギカッコついてなかったから。
スキル……、スキルねえ……。
就活シーンでよく出てきたのは、たとえばコミュニケーションスキルやビジネススキル、ポータブルスキルとか。生まれ持った才能ではなく訓練や学習によって得た能力……なんだけど。
ファンタジーの世界においては、魔法とか何らかの不思議な力によってもたらされる特殊技能……でいいんだよね?
多分、異能や超能力、特殊能力……とかの意味で使うような。
で……。
具現化スキル『テント』ってことは……。
「ええと、具現化……。ビジネスシーンで使うアイデアを具体的に形にするってやつじゃないよね。やっぱりファンタジー的に考えると……某有名少年漫画で使われたみたいにオーラを物質として顕現させる能力? 『テント』出ろって言ったら、出るの……?」
まさかと思いつつ、ちょっと言ってみたら。
わあ……!
本当にテントが現れた!
海水浴とかピクニックの時に使うような、簡易屋根付きレジャーシートというか、専用ケースから取り出すと、ばねの力でポンって開くタイプのテント。格安店なんかだと二千円くらいで買えちゃう、UVカットも施されていないペラペラな安いテント。
でも、大学のフィールドワークの授業なんかでは、この軽くてペラペラなテント、すごく役に立ったのよね……。
で、それが、出た。
なるほど、これが具現化……。




