第18話 堪能していたら、ドスンと背中に
堪能していたら、ドスンと背中に突進された衝撃が!
「うわっ! カリンちゃん⁉」
「もー駄目! 疲れた。お姉様~、テント出してえ」
カリンちゃんが、妖怪みたいにわたしの背中に縋りついてくる。
仕方がないな、スキル発動。
「あ、あれ⁉」
今までの簡易テントとは違うのが出た!
「大きい!」
かまぼこ型のファミリーテント! 進化した!
しかも、リビングと寝室に分かれたツールームタイプ! レベルも3だ!
こ、これは……、わたしとカリンちゃんが寝室で眠って、護衛の人にはリビングにいてもらうっていう使い方も可能⁉
テントの中を覗いてみたら。付属品も、マットに加えて寝袋も二人分!
「増えてる……」
大きくなって、備品も追加。
うーん、ホント、どういうスキルなんだろう?
カリンちゃんは吸い込まれるようにして、テントに入る。
二つある寝袋の片方を敷いて、その上に横になり、もう一つの寝袋を掛け布団にして、速攻寝落ちした。
愛らしい寝顔。
カリンちゃんも「推せる」なーんてね。
なんか楽しいなあ。
異世界召喚されてよかったなー。
……なんて言えるのは、まだ実際に旅に出ていないからで。
魔物に遭遇とか、怖い目に遭っていないからで。
でも、先のことを考えても仕方がない。
日々、楽しみましょう!
……余裕をかましていられたのは、秋が過ぎて冬になって。
もうすぐ春……って時までだった。
春になって暖かくなったら。
そうしたら、カリンちゃんにくっついて旅に出る。
予定はとっくに聞かされていたし、そのための体力作りもした。
馬車に乗って出かけるなら、当然がたがた揺れるんだろうから、お尻の下に敷くクッションは円座仕様。お尻に優しいものを量産した。
たまにキーファー王子がうろうろ付きまとって、カリンちゃんに撃退されていたけど。
それ以外、別に目立った出来事はないし。
カリンちゃんも宝珠修復の訓練とかしているし。
わたしのテントスキルも、少しずつ成長していった。
そう、テント!
スキルアップして、どんどん大型になっている。
寝袋だったら十人は寝られる! 高さもある! さすがにイグニス副団長は無理だけど、わたしとかカリンちゃんなら立ったまま入れる!
更に更に! 煙突ポート付きのテント! つまり、テントの中で薪ストーブが使用可能!
そのためテントの生地は、高温に熱せられても解けないグラスファイバー製!
煙突取出し用の穴もすでに開いているし、排気管もある!
これで、旅が長期化して、冬にまでかかったとしても大丈夫!
具現化レベルも4!
準備万端。
いつでも出発オッケー。
だけど……。
「だけどその前に、出立式とか大々的に行うなんて、聞いてない……」
しかも、国王陛下主催の出立式。
またもや、ドレスを作ります……。ローズが張りきっている……。フローラもウキウキ顔……。今まで作ったドレスでまだ着用していないのあるよ。それでいいでしょーって言ったら。
「アイリス様! 式典の季節に合わせ、春の装い、そして、出立に相応しいドレスを……」
ローズの演説は、右から左に流して。
「……うん、任せるわ」
わたしは大人しく着せ替え人形と化す……。
ああ、めんどうねえ……と思って、とりあえずリビングでお茶を飲んでいたら。カリンちゃんがやってきた。
「アイリスお姉様……。出立式のお話、聞きました?」
「うん……」
二人でげっそりと。ええ、げっそりとして、背中を丸めた溜息をつきましたとも。
「式典、スピーチとかだけならともかく。ダンスまで踊るって……」
「あー、パートナー必要なやつね」
体力つくりに習っておいてよかった……。
パートナーがいるのならイグニス副団長に頼もう。そうしよう。
「キーファー第三王子があたしのパートナーとか言いだして。速攻断ったんですけど、しつこくて」
あー、最近大人しくしていたと思ったんだけど、そうじゃなかったか……。式典で、聖女様のパートナーになるべく暗躍していたのかな、キーファー殿下。諦めが悪いなあ……って、あれ?
キーファー殿下って、第三王子ではあるけど。王族で王子様っていったら……。普通は……。
「カリンちゃん。キーファー殿下って、婚約者いるよね?」
「さあ? 興味ないから知らないです」
異世界からの聖女が王子様のパートナーとなってダンスを披露。
で、王子様には当然婚約者が居て、その婚約者が悪役令嬢って……。
「ネット小説のお約束。異世界から来た聖女様。王子様と結婚させられるパターン多い……」
「嫌」
一言で即答……。
「だよねえ。でもよくあるのよ。異世界から召喚した聖女様と王子様。王子様には婚約者が居る。で、言ったもん勝ち的に、王子様が」
「何て……?」
「悪役令嬢! キサマ、この可憐なる聖女を虐めたな! キサマとの婚約は破棄だ! この俺様は、可憐なる聖女と新たなる婚約を結ぶ!」
「うっざ! 何その王子!」
「キーファー殿下も言いそうなセリフじゃない?」
「あーもう、あのクソ王子っ! 地獄に落ちろっ!」
わあ! カリンちゃん、地団駄踏んでるよ……。
「もしも言われたら、どうする?」
「断固拒否っ! この国が滅びても知らない! 宝珠なんてしらない!」
そうすると、カリンちゃん、日本に帰れなくなっちゃうよね……。
それは困るよね……。
「じゃあ、こんな策はどうかな……」
誰にも聞かれないように、寝室のベッドに移動して。カリンちゃんと二人、毛布を被って。
小声でぼそぼそと、対策を立ててみた……。




