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第15話 そんな感じで、知っている踊りで

 そんな感じで、知っている踊りで体を動かして。

 体がほぐれてきたところでこちらの世界のダンスレッスン開始。

 予想通り、ソシアルダンス系統の踊りだった。

 当然パートナー役の男性も必要。


 というわけで、ダンスレッスンの先生は男性だった。


 いきなり踊るのではなくて、まず基本のステップから。

 前進、横、クローズ。後退、横、クローズ。これを一、二、三のリズムで繰り返す。

 初回の授業はこの足さばきだけで終わった。


 次の日、また筋肉痛になったけど、お風呂に浸かった後マッサージをしてもらって、なんとか。

 次回の練習日まで、足さばきの練習。

 ギクシャクしないで、滑らかに動けるようになった。


 足さばきができたら、実際に男性の先生と一緒に踊る。ワルツみたいなゆっくりとしたダンス。

 レッスンだけど……、男性と密着するのは、やっぱりちょっと……照れる。


 なるべく気にしないように練習して、まず一曲、踊れるようになった。


 ちなみに今日からは、カリンちゃんもわたしと一緒にレッスンです。


 初めは、カリンちゃんはお城でわたしとは別の先生に習っていたんだけど……。それを、カリンちゃんが拒否した。というか、キレた。


「ダンスの先生はどうでもいいっ! だけど、王城で色々授業を受けると第三王子がやって来て鬱陶しい! あいつ嫌いっ! 誘拐犯の親玉のくせして、へらへらへらへら薄っぺらい笑いを浮かべて! しかもエラそーに『この俺様のパートナーを務められるよう、しっかりと覚えろ』とか言うのよっ! ムカつくっ! 何様よアイツっ! えらそうにっ!」

「あー……」


 王子様だけどねえ……。

 第三王子、キーファー・フィッツジェラルド殿下。御年十六歳。

 聖女召喚を主張し、ブロニー・ベネット白髭のおじいちゃん、つまり白の魔法師団の団長さんを焚きつけて、異世界より聖女を召喚とかさせちゃった元凶。

 ま、国王陛下とかの許可はもちろん取ったのだろうけど。


 そのキーファー殿下は、召喚以来カリンちゃんに付きまといだした……。


 わたしは聖女様じゃなくて、お付き扱い。聖女様の旅の同行者扱いだから、キーファー第三王子からは放っておかれて、この離宮でのほほんとさせていただきましたけどね。

 カリンちゃんは……お城で囲われて、エライことになっていたらしい。


 うん、カリンちゃん、モデルさんになれるくらいの美少女だもんねえ……。

 キーファー殿下から、惚れられたよねえ……。

 かわいそうに……。


「も、ホント鬱陶しいわっ! 隙あらばお茶をしようだの、薔薇園を見に行こうだのっ! ベタベタセクハラしてくるしっ! わたしが逃げても、瘴気みたいにいきなり湧き出てくるしっ! ほんとにもう嫌っ!」


 むきーっ! とおサルさんみたいになってますよカリンちゃん。


 まあ……外見だけはキラキラ金髪青目の美少年だけど、カリンちゃんの好みではないのね。


「聖女やらなきゃ日本に帰れないから、しかたがなしに言われたとおりに聖女の勉強だのマナーだのなんだの学んできたけどもう限界っ! キモイ王子の相手までしていられるかっ!」


 わあ……、段々口が悪くなってきたよカリンちゃん……。本気でキーファー第三王子のこと嫌なのね……。


「あー……、じゃあ、何かあったらこっちに逃げておいで……」

「そうさせてっ! というか、お城に戻りたくない。今日からアイリスお姉様と一緒の部屋で 寝起きさせて!」

「うん、じゃあ、許可取ろうか……」


 誰に許可を求めればいいのか分からないけど、とりあえず、自己主張はしないとね。


 んー、王様……にはそんな簡単に会えないだろうから。

 聖女様召喚の責任者……、キモイ第三王子ご本人様に、あなたが嫌ですなんて言っても聞いてもらえないだろうから……。白の魔法使いの親玉のブロニーおじいちゃんかな。


 とりあえず、ローズに頼む。

 ローズなら、誰に申請すればいいかはわかるでしょう。

 あとは上の人にお任せ。


 で、数時間後。


 慌ててやってきたロニーおじいちゃんとジョナサン君、イグニス副団長に、カリンちゃんはもう、機関銃のごとく、文句を言いまくり……。


「あの王子気持ち悪い! あたしに近寄らせないでっ! あと、あたし、お姉様と一緒の離宮に住む!」


 あっという間に離宮にカリンちゃんのお部屋が用意されました……。

 ブロニーおじいちゃんも仕事早い……。

 警備の配置も見直されました……。

 イグニス副団長もお仕事早いですね……。


 カリンちゃんにつけられたマナーの家庭教師とかも、なんかねー。将来的に、聖女様が王族の誰かに嫁いでも大丈夫なようにって感じの淑女教育だったらしく……。

 カリンちゃんが激怒した。


「誰が王族になんて嫁ぐかっ! あたしは日本に帰るっ!」


 怒りの度合いがものすごかったわー……。

 今までは、右も左も分からなくて、耐えていたんだね……。がんばったよ、カリンちゃん。耐えた分、今、盛大に文句言ってもばちは当たらないよ……。


 というわけで、カリンちゃんは、家庭教師の皆様も、全員拒否の姿勢。

 つけられていた侍女にメイドも全員拒否。

 特に、カリンちゃんのメイドの皆さん、今日のカリンちゃんは何をしたとか何を食べたとか、逐一キーファー殿下に報告していたみたいで……。


「個人情報保護しなさいよっ! ストーカーに情報漏洩なんて冗談じゃないっ!」


 怒鳴る気持ちはよくわかる……。




 というのが、昨日までの出来事。

 きっとお城はてんやわんやしていたに違いない。


 でも、一応、最低限の知識は得て、この国の常識もある程度は学んで。宝珠を四つ修復。日本に帰るために……。


 とりあえず、城のほうから……というか、キーファー殿下がぎゃあぎゃあ言ってきたけど。


 カリンちゃんが完全拒否の姿勢なので。


 妥協案として、わたしと一緒に、わたしと一緒の授業を受けてもらうことになった。


「お姉様と一緒なら……」


 カリンちゃんも渋々承諾。



 というわけで、今日はまずは、カリンちゃんとわたし、一緒にダンスの練習です。


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