第14話 日舞に限らずどんな踊りでも
日舞に限らずどんな踊りでも、一番大切なのは、基本姿勢。
まずは棒立ちになって、リラックス。足の親指をつけて、踵は拳程度に開いておく。膝は自然に曲げる。ま、つまりは内また姿勢ね。
それから、腰から足の付け根の裏に向けて、「ぐーっ」とお尻をしまい込む。腹筋に力を入れる……。これだけでも日舞を習い始めた時はつらかった。時に太ももとふくらはぎが……。
更に上半身もあるのよ。胸を張って肩を後ろに落とす。顎を引く。頭のてっぺんが天井に引っ張られるイメージで。
で、二の腕を内側に捻る。捻るっていうか、内に仕舞うってカンジ。
全部維持するのは大変。
基本姿勢のキープだけでも筋力増強になりそう……。
で、ここまでは基本姿勢なのよね。
少なくとも上半身がぶれないように、踊らないといけないんだもの。
日本舞踊の動きは、人体を構成する二百以上の骨と六百以上の筋肉の組み合わせを、どのスピードとタイミングで組み合わせて作り出すのかによるらしい。
だけど、そんな組み合わせ、いちいち頭で考えながら踊れないでしょ。
だから、骨と筋肉の組み合わせを無意識から意識のレベルに認識できるか……ってコトなんだけど。
とりあえず、お師匠様に教わった通りにやるしかない。
頭で考えていても筋肉は動かない。
久しぶりに踊ります。
本当はお着物を着てからだけど、この世界に着物はないし、シーツを巻き付けるのもなんか違うので、ワンピースのまま。
まず、床に正座。そして、お辞儀。その状態からすっと立つ。
やらなくてもいいんだろうけど、長年身に着いた礼儀作法っていうのはそんな簡単には変えられない。お扇子がないのもなんか気持ち悪いけど。仕方がない。
西洋風の扇で代用もいいけどね。気分的にちょっとちがうかなー。
で、日本舞踊っていうのは歌舞伎から発生しているの。だから、踊りというよりはお芝居的。踊りっていうか、振りを覚えるのはストーリーや歌舞伎から発生している物語の世界を表現することでもある。古典的な日本舞踊は唄もね、ある。昔の言葉で聞き取りにくいし、歌われている世界の表現にも苦労をする。
だから、わたし、新舞踊のほうが好き。昭和歌謡的だけど、現代語の唄に合わせて踊るから、分かりやすい。
昭和の歌謡界の女王の歌を歌いながら、踊ってみましょうか。
代表曲を「あ~あ~、らららるららららあらー」なんて歌いながら踊る。
すり足のように足を捌いて。
手は扇を持っているつもりで。
どれほど没頭していたんだろう。
久しぶりに踊ったから、気持ちよくトリップしていたのかもしれない。
気がつけば、ローズたちだけじゃなく、カリンちゃんとイグニス副団長、白の魔導師団のブロニーおじいちゃんにジョナサン君まで、わたしの部屋のリビングに集まっていた。
ビックリして、思わず動きを止めた。
「えー、えっと」
カリンちゃんとジョナサン君が「すごいすごい」と手を叩いてくれて。
イグニス副団長も「美しいですね……」とボソリ。
おじいちゃんは「それが聖女様たちの国の踊りかの」と興味津々。
「あー、はい。わたしの国の伝統舞踊の一つで」
「聖女様も踊れるんですか」
ジョナサン君がカリンちゃんに無邪気に聞いたら、カリンちゃんは「む、無理無理無理無理」と、すごい勢いで首を横に振った。
「あたしが踊れるのなんて、妖怪なんちゃって体操くらいよ」
「ああ、子ども向けアニメのエンディングの曲の踊り」
大学のアニメ好きの知り合いたちとアニソンカラオケした時に教えてもらったっけ。
「わたしも踊れるよ、それ」
「お姉様、マジで⁉ 何で知ってるの⁉」
「うん。ほ〜でるほ〜でる……って、ヤツだよね。大学のみんなとカラオケで歌って踊った」
「なんと……!」
ちょっと踊ってみたら、ジョナサン君が「全部踊ってくださいよ~」っていうからカリンちゃんと歌いながら踊って。
「あと、あたしが踊れるのって、運動会で踊ったエイサーくらい」
「あ、エイサー。種類多いけど、どれ?」
カリンちゃんが知ってるエイサーと、わたしが知ってるのはちょっと違った。
両方交互に披露して。
あとはアイドルグルーブのダンスとか、ヒップホップとか。
ネットで流行ってるダンスとか。
カリンちゃんと踊りまくって、汗だくになった。
それで、お風呂を用意してもらって、マッサージまでしてもらって。
次の日、筋肉痛になりました。




