第13話 体力増強のためのダンスレッスンを
体力増強のためのダンスレッスンをお願いするつもりだった。なのに……。
「どうしてドレス選び……」
「ダンスを踊るためにはドレスが必須でございますよ」
ローズはそう言うけど。
商人を呼んで、生地とか選んで、採寸して。あれやこれやと装飾品も選んでって……。
「オーダーする必要なんてないでしょ! 既製品のやっすいので十分!」
「聖女様からお姉様とお呼ばれになっているアイリス様なのですよ。安物を着ていただくわけには……」
ううう……。
下着姿になって、体の寸法をあちこち測ってもらっています……。
ううう……。
成人式のお着物を選ぶ時よりもっとずっと時間がかかってる……。
コルセットも面倒……っていうか、しんどい。着物着る時の帯よりキツイ。帯は自分で結べば調整出来るから。実はそれほど苦しくはないのよ。
で……、ダンスレッスン用に一着ドレスを作る……ではなくて、せっかくだから普段着るワンピースから謁見用、お茶会用、散歩用のドレス……と作ってもらったのね。
ローズの指示のままに、山ほど……。
深い青色のベース生地に、繊細なビーズ刺繍を施したドレスとか。
胸元から流れるようなレイヤーチュールとか。
フリフリひらひら紺色と白のレースを交互に重ねたものすごくボリュームのあるドレスとか。
使っている色は紺色とか青系。そこに白色を加えて。
他の色は挿し色程度。
主に紺色と白色なのに、バリエーションが豊富。
胸のあたりは白色で、スカート部分が腰のあたりは水色。裾に向かって行くにつれて段々と青みが強くなっていくドレスとか。縦ストライプとか。淡い色のドレスなのにレースとリボンだけ濃紺とか。腰から裾にかけて青薔薇のコサージュがたくさんついているとか。
盛りだくさん。
そのバリエーションゆたかなドレスとワンピースは、全部ローズが……すんごく楽しそうに……、生地やら、リボンやら、選んでくれたもの……。
会社の制服代……、企業に勤めて、制服を作ってもらう……にしては、お金が掛かりすぎな気がする……。
「ローズ、お支払いは大丈夫なの……」
わたし、今のところ、この世界の通貨を持っていない。離宮でお世話になって、衣食住は……、全部……、誰が受け持っているのかな。税金?
白の魔法師団と、青の騎士団と半々?
それとも王族の私財?
贅沢をしていいのかも……、分からない。
聞いたら、ローズににっこりと微笑まれました。
「予算の範囲内でございますよ」
だから、その予算は誰が受け持っているの……?
まさか、キーファー第三王子の私財じゃないよねえ?
今のわたしには確かめるすべはない。
ドレスやワンピースに合わせた靴や帽子、装飾品まで一揃い。
外見だけならどこに出してもおかしくないお嬢様のでき上がり。
貰った分は働かないといけないとか思うんだけど……。
とりあえず、宝珠修復の旅に同行して、その動向の皆様を癒すことで対価を払うとするしかない。
そのために、今できることと言ったら、体力作り。
長旅に出て、怪我も病気もしないでいられる体力を!
いざ魔物とかが出たら、カリンちゃんを連れて逃げるだけの根性を!
「で、ダンスレッスンの先生とかは……」
「はい、手配済みでございますよ」
「ありがとう、ローズ」
うん、まあ、ローズを信用するしかないわけで。
とにかく、体力増強。
聖女様と行動を共にするなら、この世界流のダンスを覚えるのも必要だろう。
王政の国なのだから、どうせ国王に謁見だの、夜会でパーティだのなんだの参加させられるに決まってる。
だから、ダンスで体力つくりっていうのは一石二鳥かな。
まさか、パーティで、わたし、日舞とか踊るわけにはいかないだろうしねえ……。
「ローズ、手配済みってことは、いつからレッスン開始日も、決まっている?」
「はい、来週のオンスダークの日からでございますね」
曜日の呼び方は、神様の名前が付いているとのこと。
日曜日がスンダークの日。月曜日がマンダークの日。ティーシュダークの日、オンスダークの日、トーシュダークの日。フレイダークの日で、土曜日がロールダークの日。
わあ、神様、最低限7名はいらっしゃるのね。
「今日が、ティーシュダークの日だから……八日後からね」
「はい」
八日もボケっとしているのはもったいない。
どんなダンスも結局のところ、下半身がぐらつかないようにするのは必須だよね。
かといって、いきなりこの部屋でスクワットとか始めたら、おかしな令嬢ってことになりそう。
「とりあえず、わたしの世界の踊りでもして、筋肉を目覚めさせておくかな……」
就職活動にかまけて、しばらくお稽古ごとから遠ざかっていたから、ちょうどいいかも。練習、練習っと。




