第13段階 好きな人が家に来る
12月、聖君の誕生日が近づいてきた。
「兄貴の誕生日、何あげようかな~。桃子は何をあげるの?」
学校からの帰り道、菜摘に聞かれた。
「うん、実はもう編み出してるんだ」
「手編みのセーター?」
「セーターは間に合いそうもないから、手袋とマフラー」
「え?そんなに?」
「だって、誕生日と、クリスマスのプレゼント…」
「あ~~、そっか~~。両方あげるのか~~!」
聖くんの誕生日は、クリスマスイブだから…。聖なる夜に生まれた聖君。プレゼント喜んでくれるかな…。
菜摘は、兄貴っていつも聖君のことを呼ぶようになってた。聖君の学校の文化祭が終わってすぐ、聖君は、菜摘の家に遊びに行ったらしい。その日の夜に電話があって、
「すげ~~!緊張した!!」
って、聖君はさわいでた。でも、菜摘のお父さんも、お母さんもすごく喜んでくれたって、聖君は嬉しそうだった。
「良かったね」
って、言ったけど、ほんのちょっと羨ましさもあったりして。いつかうちに来て、母や父に会ってくれることもあるのかな…。
私は母にどこかに行く時、必ずどこに行くか、誰に会うかを報告する。それから、どんな交友関係かも話している。前に好きになった人のことも、母になんとなく話したっけ。電車で会うだけなんだけどって…。その後、まったく会わなくなっちゃったって言ったら、もっと早くに、行動に出たらよかったのに、桃子はおくてね~って言われたっけな~。
聖君のことも、なんとなく話していた。最近、菜摘や蘭と一緒にみんなで会ってる男の子で、すごく優しい人なんだよって…。
私は、葉君や、基樹君の話もしてるのに、母にはすぐにぴんときたみたいで、
「聖君には、告白したの?」
とか、
「前みたいに、行動しなかったら、また駄目になっちゃうかもよ」
なんて、言われてたんだ。それを聞いてた妹のひまわりは、
「お姉ちゃんから、告白なんて無理無理!」
って、言ってたっけな~。
ひまわりには、もう彼氏がいる。それも、付き合ってと言われたらしい。それを聞いて、本当に驚いた。彼氏が前に遊びに来たことがあるけど、ひまわりよりもちょっと背も低く、可愛い感じの子だった。母は、すんごく喜んで、お茶だのお菓子だの出して、いろいろと話をしていたっけ。
でも、そんなだったから逆に、家にきづらくなったようで、それ以来、来ていないな…。
「桃子が彼を連れてくる日は、いつになるのかしらね」
って、その日、母に言われたっけ。
もし、聖君を連れて来たら、あの時みたいに、お茶だのお菓子だのを出して、ずっと話し込んだりするのかな。それはちょっと、嫌かも…。っていうか、聖君も嫌がるかも…。
だけど、母には聖君と付き合ってることもまだ言ってない。
聖君と初めて二人きりで会った日、母には聖君の悩み事をいろいろと聞いてて、今日もそれで会ってくると言って出かけたし。(実際、そうだと私も思いこんでいたし…。)その悩み事も、母にはおおまかだけど、話していたし。
だから、その後聖君に会ったとしても、悩み事相談でもしてるんだろうなって、思ってるようで、
「そろそろ、告白したら?」
といまだに言ってくる。もう付き合ってるんだとは、どうしても言えない。どう切り出していいかがわからない。そのきっかけを失ってしまって、言えないままなんだ。
でも、マフラーを編んでいたら、聖君にあげるんだって母にはすぐにばれてしまい、
「じゃ、その時、告白ね?」
って言われてしまった。う~~ん、どうしよう。いつ言ったらいいのかな…。なんだか、秘密にして付き合ってるみたいで、気が引ける。
その週の土曜、聖君と映画を観にいく約束をした。そして、映画館近くで待ち合わせをして、映画館に行ってみると、すごい混みよう…。
「げ!次の回のはもう売り切れだ。そのあとだと、俺、時間間に合わなくなるな…」
ああ、お店の手伝いをしに、帰るんだもんね…。
「わりい、インターネットで席予約しとけば、良かったね。まさか、こんなに混んでるとは思わなかった」
「うん、いいよ。全然」
「他のでも観る?っていっても、あまりいいのやってないよね…」
「映画観ないでもいいよ」
「じゃ、来週にする?来週は席をちゃんと取っとくよ」
「うん…」
あ~~。なんか、こうやっていつも、聖君に甘えている気がするな~~。
「じゃ、今日どうする?ぶらぶらその辺でも、歩く?」
「うん」
それからなんとなく、ぶらぶら歩いて、なんとなく家の近くにある大きな公園に行った。そして、ベンチに座り、二人でぼ~~ってしてたけど、急に冷たい風が吹き出した。
「さむ!桃子ちゃん、寒くない?」
「うん…。ちょっと」
「どっか、お店入る?お茶でもしようか?」
「うん」
そう言ってぶらついたけど、公園の近くには何もなくて、
「くしゅん!」
私がくしゃみをすると、
「寒い?」
と、また聖君が心配そうに聞いてきた。
「だ、大丈夫…」
「もしかして、風邪気味?」
「え?」
「ちょっと鼻声だし…」
「そ、そうかな…」
実は、そうなんだけど…。聖君に会いたいから、黙ってたんだ。でも、返って聖君に風邪うつしても、悪いよな…。
「ちょっと、鼻風邪ひいたかも。ごめんね、聖君にうつしたら、悪いよね。私、今日は帰ろうかな」
「…。うん。もっと悪くなるとやばいし…。今日寒いし、帰ってあったかくした方がいいよ。あ、俺は馬鹿だから風邪引かないし、うつるかもなんて心配はいらないけどさ!」
と、聖君は笑いながら言ってくれた。
ああ、本当に、優しいよね…。でも、まだまだ一緒にいたいよ…。でも言えない…。
家の前まで送ってくれて、
「じゃ、俺帰るね」
って聖君が、そう言った時に、家のドアが開いた。
「また、いらしてくださいね~~」
と、母の声。ああ、今日エステのお客さんが来ていたんだっけ。エステが終わり、ちょうど帰るところなんだ。
お客様を送った後に、母は私と聖君に気がつき、
「あら?お友達?」
と聞いてきた。
「あ、聖君」
「あら、まあ…」
母は少し、驚いていた。
「あ、どうも…。はじめまして。俺、じゃなくて僕は、桃子さんとお付き合いさせてもらってる、榎本聖といいます!」
聖君は、いきなり直立不動になってそう言うと、ぺこって深くお辞儀をした。
「え?!お、お付き合い?」
母はもっと、驚いて目を真ん丸くしながら、私と聖君を交互に見ていた。
「あ、あの…、紹介しなくちゃって思ってたんだ。ごめんね、言わなくて…」
私が、しどろもどろになってると、母が、
「玄関先で、なんだから家にあがって!」
と、強引に聖君を家に入れてしまった。
「お、お邪魔します…」
聖君は、少し戸惑いながら、家にあがった。ああ…。きっと、これから母は、お茶だのお菓子だのを出してあれこれ、話し出すんだ。どうしよう…。聖君、嫌がらないかな…。帰ったほうが良かったって、後悔しないかな。
でも、まだ聖君といられるのは、正直嬉しい。
母は思ったとおり、紅茶とお菓子を持って、リビングにやってきた。
「あ、おかまいなく…」
と、聖君が言ったけど、
「たいしたものがなくって、ごめんなさい。来るってわかっていたら、ケーキくらい用意したのにね」
と母は、そう言いながら、紅茶とお菓子をテーブルに置いた。それから、聖君の真向かいの椅子に、腰掛けた。
「いただきます」
と言うと、聖君は、紅茶を一口飲んだ。
「榎本聖…君」
「え?はい」
「桃子とお付き合いっていつから?」
「あ…、えっと、秋です。11月くらいかな」
「じゃ、ほんとにごく最近?」
「はい」
「そう~~」
母は、なんだか嬉しそうだった。
聖君はちょっと、部屋を見回して、
「あの、何か自宅で仕事してるんですか?」
と聞いてきた。
「あ、エステをね、してるのよ。さっきの人もエステのお客様なの」
「へ~~!だから、桃子ちゃんのお母さん、肌奇麗なんだ」
「え?あら…。聖君は、お世辞が上手なのね」
「え?いえ…。俺、いや、僕はあまり、お世辞って言えないんです」
聖君は、頭をぼりって掻きながらそう言った。
それから、母は嬉しそうに、聖君にいろいろと聞きだした。年齢や、学校、兄弟、住んでる場所。
「江ノ島なの?いいわね。海の近く?」
「はい」
「お父さんは何をしてらっしゃるの?」
「父は、ウェブデザイナーです」
「え?」
「あ、IT関係の仕事してます」
「そう…」
「母は、カフェをしてます」
「え?」
「そこで、僕も夜はバイトしてるから、あまり遅くはなれないんですが…」
「え?じゃ、あまり引き止めちゃ悪いわね」
「あ、でもまだ、平気です。ここを4時に出れば…」
「え?じゃ、まだまだあるわね、時間」
「…でも、そんなに長居したら悪いっすよね?」
「うちはかまわないわよ。もうエステのお客も来ないし」
「そうなんすか…」
また、聖君はぼりって頭を掻いた。もしかして、困ってる?早くに帰りたい…とか?
「桃子ちゃん、調子はどう?」
聖君はいきなり、私を見てそう言ってきた。
「え?あ…大丈夫」
「あら。桃子、どうしたの?」
母が聞いてきた。
「ちょっと、風邪をひいたかもしれなくて…」
「あら、そうなの?」
「でも、大丈夫」
そう言うと、聖君は、
「じゃ、その…」
と、何かを言いたそうにした。帰ると言い出すのかな?
「ずうずうしいこと言ってもいい?」
「え?」
「桃子ちゃんの部屋、行ってみたいなって…」
「え?」
え…?
「あら、どうぞ。そうよね。二人のほうがいいわよね。私、邪魔したわよね。あ、お茶とお菓子、部屋に持って行ったら?桃子」
と母が、そう言った。
「ま、待ってて。ちょっと片付けてくる!」
私は大慌てで、部屋に行き、編みかけのマフラーをクローゼットに閉まった。それから、少しベッドの上を奇麗にして、リビングに戻った。
リビングに戻ると、大笑いをしている聖君がいた。
「え?どうしたの?」
驚いて聞くと、
「あはは!桃子ちゃんのお母さん、最高!腹いて~~」
と、お腹を抱えていた。母も、涙を流して笑っていて、
「聖君のほうが、笑わせてくれるわよ」
と言っていた。な、何?何があったの~~~?
聖君と部屋に行った。聖君は部屋に入ったとたん、
「わ!」
って、何か驚いていた。
「え?何?!」
なんか変だったかな?
「すげ!女の子の部屋って感じ!杏樹の部屋、シンプルで、こんなじゃないから驚いた」
そう言うと、聖君は少し、固まってしまっていた。
「あ…、そのクッションに座る?」
と言うと、ようやくクッションに聖君は座った。
「クッションもピンクなんだ…。な、なんか変な感じ」
確かに…。ピンク色のクッションに聖君が座ってるのは、変な感じだ。
「あ~~、でも、桃子ちゃんらしい部屋だよね!」
聖君はしばらく、部屋を見回していた。
「…、桃子ちゃんのお母さん、面白いね」
「おしゃべりなんだ。前にね、ひまわりが彼氏を連れてきた時も、べらべらしゃべっちゃって、彼氏困っちゃってて…。それ以来もう、連れてこなくなったよ」
「へえ、そうなの?俺、けっこうはまったけど…」
そうなんだ。聖君も嫌がると思ったのにな…。
「ひまわりちゃん、彼いるんだ」
「うん」
「へ~~」
「……」
いきなり、意識をしてしまった。私の部屋に聖君がいる…。私が黙り込むと、聖君は、頭をぼりって掻いて、
「えっと…」
と、困った表情になった。
「やっぱ、ずうずうしかったね。部屋まで来て…」
「え?ううん」
「……。ほんとに、風邪、大丈夫?」
「うん」
「あ~~。なんてういか、この前、菜摘ちゃんち行ったじゃん」
「え?うん」
「菜摘ちゃんの部屋にも、寄ったんだけどさ」
「え?!」
菜摘の部屋にも?
「アルバムとか見せてくれて…。なんか、そんなに意識しないでいられて…って妹だし、当たり前か」
「……」
でも、なんか複雑だな…。
「そんな感じで、桃子ちゃんの部屋も来ちゃった。でも、全然、違ってた」
「菜摘の部屋は、水色で統一されてて、ちょっと男の子っぽい部屋だもんね」
「あ…。うん、部屋の感じもなんだけど」
「?」
「気持ちがね、まったく…。今、俺、すげえ緊張してて」
「え?」
なんで?!
「…やっべ~~!!!!」
聖君が、うつむいてしまった。
「ど、どうしたの?」
「桃子ちゃんの部屋って、桃子ちゃんの匂いがするんだね」
「え?!」
「あ、当たり前か…。ごめん、変なこと言ってる、俺…」
え…。え~~?!
聖君は、すっくと立ち上がり、
「やっぱ、俺帰るね。ごめんね、あがりこんじゃって」
と言って、ドアを開けて出て行ってしまった。
「あ、見送る!」
私も慌てて、追いかけた。それから、一階に下りて行き、聖君は、
「お邪魔しました」
と言うと、さっさと玄関に行ってしまった。
「あら?もう帰るの?」
母が慌てて、キッチンから出てきた。
「はい。突然、お邪魔してすみませんでした」
「いいのよ。またいらしてね」
「はい」
聖君はぺこってお辞儀をすると、私に向かって、
「あったかくして、風邪、早くに治してね」
と、笑って言ってくれた。そして、玄関を開けて、出て行った。
聖君が、家をあとにしてから、母がリビングのソファに腰掛け、
「びっくりしたわ~。いつの間に、お付き合い始めたの?」
と、私に聞いてきた。
「11月かな」
「告白したの?」
「ううん」
「じゃあ、告白されたの?」
「ううん」
「じゃ、どうやってお付き合いが、始まったの?」
「説明が難しいかな」
私がそう言うと、母はしばらく黙った。
それから、ぽつりと、
「桃子にまさか、あんなにかっこいい彼氏が出来るとはね~」
と言われてしまった。
「わ、私もそれは思う…。いまだに、信じられない」
「……。聖君、かっこいいし、話も面白いし、優しそうだし…。文句のつけようがないわね」
そう言うと、母はちょっとため息をついた。
「お父さんが知ったら、かなりショックだわね~」
「お父さんに、言う?」
「うん。言っちゃう」
「え?」
「反応見てみたいし。今度はお父さんがいる時に、来てもらおうね」
「ええ?」
ちょっと、父のショックを受けた顔は見たくない気もする。でも、聖君に会って欲しいような、そんな気もしていた。
夜、10時過ぎに聖君からメールが来た。
>今日は、ほんと、ごめんね。
何が、ごめんなのかな?
>何が?
わからないから、正直に聞いてみた。
>部屋、あがりこんじゃって。
>ううん。全然。
そうすぐに返信したけど、聖君からしばらくメールが来なかった。
聖君こそ、どう思ったのかな。母のことも、悪くは言わなかったけど、本当は嫌じゃなかったのかな。
>うちにあがってって言ったのは、母のほうだったし。
そうメールを送ると、聖君はすぐに電話をくれた。
「あのさ…。さっき母さんに、桃子ちゃんちに行った話をしたら、粗相しなかったかってかなり言われた。俺、なんかお母さんが嫌がるようなこと、してないよね?」
「うん。お母さん、聖君のことすごく気に入っちゃってた」
「まじで?!」
「うん」
「良かった~~~!!俺、お母さんの話にまじ、大笑いしちゃって、すげえ失礼なことしたかなって思って。そのうえ、部屋まであがっちゃって、ずうずうしい人って思われてないかって、ちょっと心配してたんだ」
え~~?聖君、そんなこと心配したりするの?
「全然、大丈夫だよ」
「良かった。ほら、お付き合いするなら、もっとしっかりした人にしなさいって、お付き合いを反対されたりしたら、大変だしさ。まじで、良かった」
反対~~?絶対にありえない。だけど、そっか…。そんなこと、聖君は思ったりもするんだ。意外だな…。でも、ちょっと嬉しいな。そんな聖君のことも知れて…。
「反対どころか、本当に聖君はかっこいいし、話も面白いし、優しそうだし、文句のつけどころがないって、お母さん言ってた」
「まじで?めちゃ嬉しい。じゃ、お付き合いしてるのも、もちろん賛成してくれたってことだよね」
「うん」
「桃子ちゃんは?呆れてない?」
「?何を?」
「だって、俺部屋にまであがって」
「うん、全然。でも、なんで緊張してたの?」
「え?だって、桃子ちゃんも緊張してたでしょ?静かだった」
ああ。そっか。わかっちゃったのか…。
「うん。ちょっとね…。聖君が、部屋にいるのが、なんか信じられなくなって」
「何それ」
こんなこと言って、笑わないかな…。呆れないかな…。
「この前、夢を見たの。私がまだ片思いしてて、私の部屋で聖君のことを思ってて、落ち込んでる夢。それが、今は部屋に聖君が来たりしてて…、なんだか信じられないような、変な感じがしたんだ」
「落ち込んでる?」
「初めのうちはね、会ってもあまり話も出来なかったし、笑顔も向けてもらえなかったから、夜、落ち込んだりしてたんだ」
「え?そうなの?」
「うん」
「…。笑顔向けてなかったって…、俺、そうだった?」
「う、うん…」
「…ごめん」
「あ、謝らなくても…。だって、その頃菜摘のことが、好きだったんだもんね?」
「……」
聖君が、黙り込んでしまった。あ、私変なこと言ったかな…。
「じゃ、じゃあさ、あの桃子ちゃんの部屋で、俺のこと思っててくれたわけだ」
「え?うん」
「……」
また、黙り込んでしまった。どうしたのかな。やっぱり、言わない方が良かったかな。
「あ~~~」
「え?」
「……。なんか、照れるって言うか…。そうだよね、俺と会った時から、俺のこと思っててくれたんだよね。なんか、そういうの知ると嬉しいっていうか…」
「え?」
「今も?」
「え?」
「今も、俺のことを、その…。思っちゃったりしてくれてる?」
「…うん。いつも思ってるよ」
って、言ってからまた、ああ!恥ずかしいこと言っちゃったって思ったけど、もう遅い。
「……。そっか…。ああ、俺馬鹿だよね。自分で聞いてて、照れてどうすんのって…。うん…。でも、俺も…」
「……?」
俺も…?
「俺も、桃子ちゃんのことばっかだな…」
「え?!」
「あ~~~~~~~~~~。いい、今のは忘れていい!ごめん、変なこといっぱい言ってる。そろそろ、風呂入ってくるから、切るね」
「え?うん」
「おやすみ!」
「うん。おやすみなさい」
聖君は電話を切った。私は思い切り、余韻に浸っていた。
聖君も、私のことを思っててくれる時間があるの?そう思うと、嬉しくて、胸がいっぱいになった。