第10段階 好きな人とのメール
しばらく聖君とのことを思っていたけど、お母さんが呼びに来て、夕飯を食べに下に行き、すぐにお風呂に入った。
それから、部屋に戻り、聖君にメールをしてみようかって思った。
>今日は、ありがとう。
それだけの短い文だけど、他に思いつかず、ドキドキしながら、そう書いて送った。聖君、メール返してくれるかな…。今、何しているのかな…。
>こっちこそ、楽しかった。サンキュー。今、何してるの?
わ!すぐに、聖君から、メールが来た…!私もすぐに、返信した。
>夕飯食べて、お風呂に入ってた。聖君は?
>俺は、勉強中!すごい?えらい?
わ、勉強中に私、メールしちゃったんだ。悪いことをしたと思い、
>ごめん。邪魔したね。勉強続けて。
と、メールをすると、
>うそうそ!勉強してないよ。全然頭にはいらなくて。今日はもう、勉強できなさそう。
って、返ってきた。
>え?そうなの?なんで?
って、聞いてみると、
>そりゃ、やっぱり、桃子ちゃんのこと考えちゃうから…。なんつって(>▽<)
っていう、顔文字まではいったメール…。
ああ、また…。こうやって、きっと、からかってる。でも、嬉しい。でも、絶対にからかってる…。しばらくどう返すか悩んじゃって、
>冗談ばかり!そういうの、本気にしちゃうから、やめてね。(>_<)
と、返した。
>冗談じゃないし、ほんとだし。だから、本気にしていいし。
また聖君から、すぐに返信がきた。
ええ…?ほんとに…?からかってるんじゃないの?じゃあ、私も、
>私も、ご飯も食べれなかった。
っていうメールを送ってみた。
>なんで?
聖君が、今度は聞いてきた。
>だって、聖君のこと思うと、胸いっぱいになって、お腹も空かないから。
ものすごい恥ずかしいことを、書いていると思う。でも、送信を押しちゃった…。ああ!
しばらく、返事が返ってこなかった。ああ、呆れてる?送らなかったら良かったかも…。って落ちこんでいたら、返信が来た。
>て、照れます…(^^ゞ
また、顔文字もはいっている可愛いメールだった。
照れますって…。可愛い。なんか、聖君のイメージがどんどん変わっていく。
嬉しいやら、可愛いやらで、私はしばらくにやけていたけど、返信しなくっちゃって思って、さっきの聖君から来たメールの真似をしてみた。
>でも、ほんとのことだし。
また、しばらくメールが来なかった。でも、少しすると、
>もう、あとは寝るだけ?
ってメールがきた。
>ううん。髪を乾かして、明日の用意をしたら。
>ああ、そっか。まだ、髪濡れたままなんだ。長いから乾かすの大変だね。
>聖君は、もう寝るだけ?
>これから、風呂入る。あ、そういえば、夕飯もまだだった。
>え?お腹空かないの?
>さっき、チーズバーガー食べたから。
>ああ、そっか。それでも、夕飯も食べるの?
>食うよ。余裕で入る。
>そうだよね、よく食べるよね、いつも。それでも、痩せてるよね。
>俺、痩せてる?
>ごめん。痩せてるんじゃなくて、太ってないって意味で。
>でも、けっこう筋肉はこう見えてもあるよ。腹筋は割れてないけどさ。あ、それとも、もっとマッチョな方が好き?
>マッチョは苦手かも。
>そうなんだ。じゃ、どんなやつが好み?
好み…?えっと…。しばらく悩んだけど、どう考えても、こうしか浮かばなくて、素直に恥ずかしいけど、送ってみた。
>私の好みのタイプは、聖君かな。
また、しばらくメールが返ってこなかった。あれれ?それから少しして、
>だ、だから…、そういうの、照れます。俺!(>人<)
っていうメール。か、可愛い…。なんか、めちゃくちゃ、聖君って可愛い…。
>じゃあ、聖君の好みのタイプは?
まさか、私の名前は書いてこないだろうなって思ったけど…、
>えっと…。自分でもわかんない。今まで好きになっていた子は、けっこう元気で明るい子。
と、書いてあった。
ああ、墓穴。落ち込む…。私と真逆かもしれない。そうだよな…。だって、菜摘のことが好きだったんだもんね・・・・・。
じゃ、私のことは?ってまた、不安になる。しばらく返信を送れないでいると、また聖君からメールが来た。
>でも、桃子ちゃん好きになってるし、だから、タイプって別になかったのかも。
ほんと…?なぐさめの言葉じゃなくて…?
携帯の画面を見ながら、私はしばらくぼ~~ってしていた。なんて返信しようかな…。なんて…。本当に?って聞いてみるか。それとも…。
>私ももっと、明るくて元気な女の子になりたいな。
そうしたら、聖君の好みのタイプになれる…。そんなことを思って、メールした。すると、
>今のまんまでいいよ。俺には、十分です。
っていう返事。 俺には十分…?どういうことかな。そのまま、聞いてみた。
>俺には、十分ってどういうこと?
しばらくして、返信がきた。
>だから、今のままで、十分、可愛いってこと。
可愛い?本当に?私なんかの、どこが可愛いんだろう…。
>明るくもないし、内気だし、とりえないし、コンプレックスだらけだよ?
>それでも、可愛いと思っています、俺。(^^ゞ
……。聖君のメールは、可愛いだけじゃなくて、あったかいし、優しい。思わず、涙が出そうになった。
>ありがとう。
ってメールを返すと、
>どういたしまして。
って返って来た。それから、
>髪乾かした?ちゃんと乾かして、寝ないと風邪引くよ。じゃ~ね(^^)
っていうメールが来て、そのあと、メールが来なくなった。
私は、髪が塗れたまま、ベッドに横になり、もう一回メールを見直した。嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、涙が出た。ドキドキして、ぎゅって携帯を胸に抱きしめた。
信じられない。聖君からメールが来ることだけでも、信じられない。そのうえ、こんな可愛いメールで、すごく嬉しいことがたくさん書いてある…。
全部を保存した。この言葉はすべて、宝物だ。きらきら輝く、そして優しい宝物だ…。
それからも、聖君はよく、メールをくれた。顔文字の入った、可愛いメールだし、写メも入っている。意外だったな。こんなメールをくれるなんて思ってもみなかったから。
ある日、葉君からも写メが送られてきた。聖君と基樹君のふざけあって笑っている写真だった。すぐに、聖君に、葉君から写メをもらったよって、メールをしたら、
>どんな写真?!
って、メールが来た。だけど、私は、
>内緒。
と、送った。そうしたら、
>え~~~~~~~~~~~~((>д<))
それから、メールが来なくなって、10分後、
>げ~~~。その写真は即行、消去すること!
って、メールが来た。どうやら、葉君にその写メを送ってもらったらしい。大笑いしている、聖君。可愛いんだもん。絶対に消去なんてしないんだ。
>今度の、土曜日うちの店に遊びに来ない?
聖君から、そんなメールが突然来た。わあ…。私一人で行くのは初めてだ。緊張する!でも、もちろん行くってメールした。
そして、土曜日、改札口で聖君は待っていてくれて、一緒にれいんどろっぷすに行った。
「こんにちは」
お店に入ると、聖君のお母さんもお父さんもいた。それから、私と同じ位の背丈の、真っ黒に日焼けした、ショートカットの女の子がいた。
「うわ~~~~~!可愛い~~~!」
いきなり私を見るなり、そう叫んだから、ものすごくびっくりしてしまった。
「あ、妹の杏樹。杏樹、桃子ちゃん…」
聖君が、すんごい簡単に紹介してくれた。
「こんにちは、はじめまして。桃子ちゃんですね。可愛い~~。名前も可愛い。お兄ちゃんにはもったいない。可愛い~~!」
「……」
ああ、どう反応したらいいのか…。すると、聖君が杏樹ちゃんの後ろから、
「うっせーよ、お前は~~」
って、頭を軽くこついていた。
「だって、こんな可愛い人が、お兄ちゃんの彼女だなんて、信じられないよ」
「おいっ!」
また、聖君は、杏樹ちゃんの頭をこつんってしてた。いいな…。お兄ちゃんっていうのも、いいな~~。
聖君は、きっと優しいお兄ちゃんなんだろうな~。
それから、二人でゲームセンターに行き、ゲームをした。聖君は何をやっても、高得点。私は何をやっても悲惨な結果だった。
ゲームセンターをあとにしながら、私は聖君に、
「杏樹ちゃんのこと、可愛がっているんだね」
ってちょっと、羨ましそうに言った。すると、
「桃子ちゃんのことも、可愛がってますよ。俺」
って言いながら、頭をなでなでされた。ええ~~?私は、子ども?犬?
「犬じゃないもん」
って言うと、あははって笑われた。
浜辺に行き、手をつないで歩いた。それから石段に座り、しばらく二人でぼ~~って海を眺めた。
「海って、ほんとあきないよな」
聖君が、そうつぶやいた。
「うん。そうだね」
「寒くない?」
「うん。大丈夫…」
もう、すっかり秋の涼しい風になっていた。
「菜摘から、メールがあったんだ」
「え?菜摘ちゃんから?」
「うん。月曜日、一緒に学校行こうねって」
「…そうなんだ」
「葉君と、蘭と、基樹君と今日は、遊びに行くって」
「ああ、4人で会ってるみたいだね」
「うん…。良かったよね」
「そうだな。もう、大丈夫かもな…」
「聖君と、仲良くねって書いてあった」
「え?」
「聖君の彼女は、桃子だったら許すって…」
「ふうん。そっか…」
聖君は、遠くを見ながら、そう答えた。
「妹二人から、お許しが出たって事か~~」
「え?」
「あはは…。杏樹も、桃子ちゃんのこと気にいってたから。あ、うちの親もだけど」
「あんなに可愛い可愛いって言われて、びっくりしちゃった」
「だって、可愛いじゃん。桃子ちゃん」
聖君は、私の方を見ながらそう言った。私は照れて、
「わかんないや。それ…」
って、下を向いてつぶやいた。
「絶対、女子高で正解」
「え?」
いきなり聖君がそんなことを言うから、また私は顔をあげた。
「共学だったら、大変だったよ、きっと。俺、身が持たないよ」
聖君は、ちょっと照れくさそうな顔をして、そう言った。
「なんで?」
「やきもち、やきっぱなしだったよ」
「え?やきもち?やきもちなんて、聖君、やくの?」
驚いた。
「やくよ。思い切り俺、やきもちやきだったみたい。自分でも知らなかったけど…」
聖君は、ぼりって頭を掻いてそう言った。
「そ、そうなんだ」
嬉しい…。でも、信じられない。ほんとに?なんかもう、信じられないことばかり起きるよ。
「で、でも…。私、聖君以外の人、どうでもいいから。そんなにやきもちなんてやかなくても…」
「え?」
ちらって、聖君を見たら、頭をがりがり掻いて、照れていた。
「あ~~。そういうの、俺照れます…」
この前の、メールみたいなことを聖君は言った。そんな聖君も、可愛いいな~~。
そして、しばらく海を見ながら、いろんな話をして、それから、聖君は駅まで送ってくれた。
6時から聖君は、お店のお手伝いをしているから、あまり遅くまでは一緒にいられない。それでも、私には十分すぎるほどの、幸せな1日だった。
次の土曜日には、聖君と、多摩動物園に行った。ゴリラやサルを見たり、ライオンバスに乗ったり。お弁当を二つ作っていき、お昼は一緒にお弁当を食べた。
まだ、私と聖君は、他のみんなと一緒に行動していなかったけど、今度は6人で来たいねって話した。
動物園でも、手をつないで歩いた。聖君はいつも、ゆっくりと歩いてくれてた。片方の手はジーンズのポッケに入ってて、もう片方の手でつないでくれる。
いっつも、聖君の方から、
「はい」って手を出してくれる。まだ、私の方からは、手をつなげない。どうしても、恥ずかしくて…。
聖君は、いっつも優しくて、楽しく話をしてくれる時もあるけど、たまに、ベンチに座ると、目をつむって、風を感じたり、緑を見たり、空の雲の流れを、見ている時があった。それは、海でも同じだ。
そういえば、花火も、ひたすら見て喜んでいたっけ。そういう時の聖君は、言葉数が少なくなる。
私も、そういう時には一緒に、風を感じてみたり、緑を眺めたり、雲の流れを目で追った。それと、聖君の顔を交互に見ていた。聖君は、そんな時にも、優しい表情をしていた。
思い切り、蘭や基樹君とはしゃいでた時には、見なかったな…、こういう静かな聖君。いつも明るく、はしゃいでいたから。
初め、聖君が静かな時、私といてつまらないのかなって思ったけど、そうじゃなかったんだな~。
「今日の空、秋晴れってやつだね、すんげえ気持ちいい」
「うん…」
「この動物園いいね。自然たくさんで…」
「うん、子供の頃、よく両親に連れてきてもらった」
「そうなんだ。じゃ俺が、海や水族館行ったのと一緒だね」
「うん」
「いいよね。俺、子供生まれたら、動物園、家族でお弁当持って来たいよ」
「え?」
「よくない?そういうの。俺、動物園ってあまり来たことないよ。ま、水族館が近くにあったからかもしれないけどさ」
「…子供が生まれたらとか、考えるの?」
「え?考えない?結婚とか…」
「け、結婚?!」
「あれ?女の子って考えないの?」
「考える…けど。なんか、思い切り妄想って言うか」
「あ!それ聞きたい!!!!」
「やだ。言わないよ~~」
「いいじゃん。減るもんじゃなし。妄想なんでしょ?じゃ、なんでもありだよ。例えば、アラブの石油王と結婚とかさ。ハリウッドスターと結婚とかもありだし」
「そんなの考えたことないよ~~」
「あれ?そう?」
「聖君は、あるの?スターと結婚とか…」
「ないない!」
「でしょ?」
「俺は…、そうだな。多分、早くに結婚して、早くに子供が出来て、子供といっぱい遊んで…とか。あ、でも、その前にちょっとやりたいことがあるからな~」
「何?やりたいことって?」
「父さんと、いろんな海に行って、潜ること。世界中行きたいね」
「…スキューバダイビング?」
「うん。それ、父さんの夢でもあるんだ。俺、大学行ったら、さっそく行きたいって思ってるんだ」
「へえ…。そうなんだ」
「父さんは母さんも連れて行くって言ってた。母さんは潜れないから、まあ、観光は一緒にできるか」
「ふうん…。いいね。家族みんなで行くんだ」
「あ、結婚しててもできるか。俺も奥さん連れて行ったらいいんだもんね?」
「え?うん…。そうだね」
ドキってしちゃった。私、一緒に行けるのかな…とか。でも、結婚なんてまだまだ先だし、それが私かどうかなんて、わからないし…。
「桃子ちゃんは、やりたいこととかってあるの?」
「私は、まだ決まってない」
「そうか。そうだよね。まだ高1だもんね」
「うん…。だけど…」
「ん?」
「聖君のお母さん見てて、いいなって思ったんだ」
「なに?何が?」
「カフェとかやるの…。可愛いお店いいな。私そんなにお料理嫌いじゃないし」
「うん。今日のお弁当も美味しかったよ」
「ほんと?」
「ほんと!」
嬉しい…!!!
「あのね…。私お菓子作るのも好きなんだ」
「へえ。そうなんだ」
「うん…。クッキーとか、ケーキとかもたまに作る」
「え?まじで?それ、食べてみたい」
「うん。じゃ、今度クッキー作ってくるね」
「まじ?すげえ。楽しみ!」
「あ、でも、そんな期待しないで…」
「うん、わかった。あ!そうだ。俺のおばさん、父さんの妹なんだけど、パテシエだよ。すんげえケーキ美味しいんだよ」
「え?!本当?」
「うん。前はれいんどろっぷすでも、おいてたけど、今は伊豆のばあちゃんの店で働いてる」
「いいな~~。食べてみたい」
「あ、じゃ、行こうよ。いつか、ばあちゃんの店」
「え?伊豆でしょ?」
「うん。来年の夏、きっと俺また、行くと思うよ。あ、そだ、俺受験か~~。でも、1日か2日くらいなら、気晴らしに行けるかな」
「来年の…、夏…?」
「うん。ずいぶん先の話になっちゃうけどね」
「その時まで、私…」
「え?」
「彼女でいられるかな?」
「へ?」
私はなんだか、不安になった。こんな私でも、ずっと彼女でいられるんだろうか…。
「……。え~~と…。俺多分、そんなに簡単に別れるつもりはないけど」
「うん。ごめんね。変なこと言っちゃった」
「うん。ほんとだよ…」
「ごめんね」
「いいよ。そんな未来の話ばっかりしても、しょうがないよね。今は今」
「え?」
「今を、生きることの方が、大切だもんね」
「今?」
「あ、これ、父さんや母さんがよく言うんだ。今を生きるってことが大事なんだって。先のことよりも、今目の前のこと、楽しんで、受け止めて、今を感じて、生きていけってさ」
「今を感じて?」
「うん。例えば今日みたいな綺麗な空とか、雲とか、風とか、緑とか。今しか味わえないこと、たくさんあるじゃん。桃子ちゃんが作ったお弁当の味とか、今日の桃子ちゃんとか…」
「今日の?」
「そ。また先週とは違ってる」
「え?私違ってる?」
「同じ日がないように、同じ桃子ちゃんはいないんだよね。だから、毎回新鮮」
「……」
そうか。そんな風に思ってたんだ。あ…、だから?
「だから、さっきも、目をつむったり、空を見上げたりしてたの?」
「うん。桃子ちゃんも一緒に、感じてた?もしかして…」
「うん。まねしてた」
「やっぱり?静かに目を閉じたり、黙って空見てたから、一緒に感じているんだろうなって思った」
「そっか…。それでなんだ…」
「え?」
「時々、聖くん静かなの」
「ああ、まあね。友達といる時には、あまりしない。あ、葉一とはするかな。なんか葉一は黙ってても平気だから」
「…平気?」
「遠慮がいらないって感じかな。他のやつだとつい、はしゃいで明るくしちゃう。バカやったりして、盛り上げちゃうんだよね。学校でもそうかな」
「そうなの?会った時も、蘭や基樹君といつも、はしゃいでた」
「ああ、そうそう。いつも、そんな感じ。まあ、それも俺の1部だろうけどさ。あれはあれで、楽しいし。でも、俺、けっこう静かな時も多いんだ。家にいたら静かだし。父さんや母さんとも、海行くと、ぼ~ってしていたりするし。あ、話をする時には、けっこうすることもあるけど」
「じゃあ、私といる時も、自然体でいるの?」
「え?」
「静かでいる時多いし…。初めは、私といてもつまらないのかなって思ってたけど、最近違うのかなって、さっきも思ってたところ」
「え?つまらないって思ってたの?」
「私はつまらなくないけど、聖君がそう思ってたのかなって」
「あはは!思うわけないじゃん!見てるだけでも桃子ちゃん、面白いのに」
「……」
お…。面白いって…?
「そうだな。俺が静かな時は、さっきみたいに、今を感じてる時と、あとは、桃子ちゃん、可愛いって思って見てる時かな」
「え?!」
「なんか、隣にいるだけで、けっこう嬉しいしさ。満足しちゃうんだよね」
「……」
わあ~~。なんか、嬉しいこといっぱい言ってる。でも、聞いてて恥ずかしい…!でも、私も、一緒にいるだけで、すごく幸せ。
「さて、あとはどこ回る?なんの動物が見たい?」
「コアラ!!」
「え?コアラいるの?」
「うん!」
二人でまた、手をつないで、歩き出した。なんだか私は嬉しくて、
「早くコアラ見に行こうよ!」
って、走り出していた。