表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明智君という名の犬と見習い怪盗小娘と自惚れ初老新米怪盗の私  作者: バスバスキヨキヨ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/84

私が怪盗になって一番得をしたのは、阿部君パパ

「じゃあ、私も一応聞くけど、一人いくら負担するんだい?」

「そうですねえー。一人あたり200万円も出せば、そこそこ良い車が買えるでしょ」

 うんうん、阿部君と明智君に対する借金4000万円は別として、悪徳政治家から手に入れた2000万円のうち1000万円が残っているし、他に少なくない貯金がある。貯金額は秘密だ。そこから、旧アジトの修繕費とフランス旅行費用を差し引いても、200万円くらいなら痛くも痒くもないこともないこともないか。でも、我慢できる、してみせる。

 明智君、いつまで固まってるんだ? 明智君には今までに稼いだ600万円以上ものお金があるじゃないか。気を大きく持たないといけないぞ。私のように。

 いやー、多額の借金があるって、こんなにも強くなれるのだな。阿部君と明智君に感謝しないと。それに、阿部君パパの新車を買うために私もお金を出したんだぞと恩着せがましく言えば、怪盗団二軍の仕事で必要な時は有無を言わせず使える。ということは、怪盗団一軍はお古の車を使うのだろうか。ボロい方が雑に扱えていいかもしれないな。

「阿部君、阿部君パパの古い方の車はどうするんだい? 下取りか何かに出すの? できたら、我々怪盗団が必要な時にいつでも使えるように、私たちのものにしたいけど、いいかな?」

「そうですね。下取りに出しても大した額にはならないので、そうしましょうか。でも、パパの了承を得てくださいね」

 いくらなんでも断らないと思うが……なにせ阿部君のパパだからな。私たちの車になるかどうかは、良くて半々だ。だけど、理不尽な出費で意識を失いそうなくらいに落ち込んでいる明智君を励ますために、前向きに話すか。もし阿部君パパがお古の車をくれなかったとしても、その時は、明智君は元気に暴力を振るってくれることだろう。阿部君パパが丈夫にできてますように。

「ありがとう、阿部君。ほらっ、明智君、いつまでも落ち込んでないで、我が家に初めてのマイカーがやって来るのだから喜ぼうよ。一つ私からのアドバイスがあるとすれば、新車を買ってあげたのは私たちなのに、なんで中古車の方が私たちのもになるんだ、なんて考えてはいけないよ。ねえ、阿部君?」

「はい」

 そして、私は結局一人だけで、大変な後片付けや引っ越しを終わらせた。こんなことなら、最初からレンタカーを借りておけば安上がりだったのに、と思ってはいけない。これが経験というやつなのだ。経験とはお金では買えないものだ。結果として200万円も使ってしまったなんて考えるのは、三流の考え方だからな。

 私は超一流なので、得意技の一つである、やせ我慢を発動した。ついでに、ストレス発散をするために、自由に空を飛んでいるカラスに向かって、石ころを投げるフリをしてやった。そのカラスは一瞬身構えたようだ。そして恥ずかしそうに逃げ去った。あのカラスがストレスのはけ口として、阿部君パパを選んでくれたなら、これに勝る幸せなしだな。

 引っ越しを無事に終えて車を返しに行くと、笑顔の阿部君パパに車を買いに行くのに誘われた。もちろん私は笑顔で二つ返事だ。私は人間ができているので、引っ越しの手伝いを即答で断られた事や、私が運転して車屋さんまで行く事を全然怒っていない。むしろ喜んでいるかもしれない。

 それは、あのさっきのカラスが阿部君パパに何らかの嫌がらせをする場面を間近で見られるからではない。どちらかと言えば、あのカラスは私に仕返しをするだろうからな。私が喜んでいるのは、分かっている人は既に分かっているだろうけど、そうでない人のために説明すると、怪盗団二軍戦がより一層楽しみなものになるのだ。私は陰険ではないからな。ただ、阿部君パパが一日でも早く一軍に上がれる手助けをするだけだ。

 車屋に着くと、阿部君パパは既にお目当ての車があったようだ。価格なんて見ず、何の迷いもなく好きなだけオプションも付ける。結果、見積もりが終わると、当たり前と言えば当たり前だけど、残念なことに予算を大幅に超えていた。でも、まあ、車のグレードを下げオプションをいっぱい外し、最後に泣き落としでたくさん値引いてもらえたなら、ぎりぎり予算内に収まるだろう。

 何も気に病むことなんてないだろうと、阿部君パパを見ると……。あれ? なんかもう買ったつもりで喜々としている感じに見える。ああ、そうか。足りない分は自分で出すのだ。自らも出費した方が、思い入れや愛着が湧くものだからな。そのつもりで大幅に予算をオーバーさせたのか。うんうん。ほんの少しだけ見直してやってもいいぞ。

 と、私が思ってすぐに阿部君パパは携帯電話を取り出し、おそらく阿部君に電話を掛けた。

「あっ、ひまわり? ちょっとお願いを聞いてくれるよね? 予算をほんの少しだけ超えちゃったから、その分も追加でちょうだいね」

 なーにー! き、貴様はどれだけ図々しいんだ。それに、まず、目の前にいる私に相談すべきじゃないのか。いやいや、落ち着こう。さすがに阿部君も電話の向こうでキレまくっているはずだ。

「ありがとう。じゃあ、ちょっと代わるね。リーダー、ひまわりが話があると」

 これは、電話に出ると終わってしまう。出なくても変わらないとはいえ、何らかの抵抗をしてくれと明智君が訴えているのがはっきりと分かるのだ。この阿部君パパの携帯電話に向かってくしゃみをしてやるから、今回はそれで勘弁しておくれ。ごめんよ、明智君。

 明智君よりも悲惨な人間がここにいると思って、溜飲を下げておくれ。私は怪盗で稼いだお金がほとんど全部なくなるのだよ。見積もりは、これ見よがしに端数だけ値引いてくれて、なんと1200万円ちょうどなんだ。車って高いな。そして、もう一つ残念なお知らせが。阿部君パパなりに気を使ったのか、今の車を下取りに出しての見積もりだから、我が家には車はやって来ないことになったから。だけど、この下取りがなかったなら、私たちの出費はもっと大きかったから、考えようによっては良かったよ。明智君、あのカラスが阿部君パパに陰険な嫌がらせをしてくれるように、一緒に祈ってくれるよね?

「もしもし、阿部君かい? どうした?」

「言わなくても分かると思いますけど、一人あたり400万円です。明智君は笑顔で進んで払ってくれるので、リーダーも何も考えずイエスと言ってくださいね」

「イエス。ハックション! ガチャ……」

 明智君、私を褒めてくれるよね? もちろん拭きもせず、そのまま阿部君パパに携帯電話を返した。

 三日三晩、私と明智君は、阿部君パパの悪口を言いまくった。もちろん新居でだ。阿部君には、フランス旅行のための準備と称しての有給休暇を取らせた。阿部君自身は阿部君パパの悪口を気にしないだろうけど、私と明智君が気を使ったのだ。阿部君も察してくれた。トラゾウは、我が家の居候なので、悪口大会のために追い出すのはかわいそうだ。だからって聞こえない所で隠れているのは、私と明智君が気を使うだろうと、阿部君パパの悪口は言いはしないが付き合ってくれた。

 フランスに旅立つ頃には、すっかりいつもの私たちになっていた。私たちは基本的には前向きなのだ。阿部君パパのために使ったお金なんて、すぐにどこかの悪人から回収できるし。

 そして気づけば、私と阿部君と明智君とトラゾウは、最高の気分でフランスのホテルでチェックインが終わったところだった。注意しておくべきことがある。明智君とトラゾウは厳しい特訓の結果、手荷物のぬいぐるみとして飛行機には乗れたが、これを読んで自分のペットをぬいぐるみと偽って飛行機に乗せてはいけないぞ。簡単にバレるうえに、下手したら搭乗拒否にあってしまうからな。あくまでも物語の進行上おもしろいとかなと思って、突拍子もない事をしてみたかっただけなのだ。どうしてもやるなら止めないが、自己責任だからな。コンプライアンスがうるさいらしいので、一応責任逃れをさせておくれ。

 ちなみにだけど、絵の方はあまりに有名すぎるしX線検査だったので、レプリカだと思ってくれたようだ。検査員が絵の知識を持っていなかったのか、絵が強奪された当時の記憶が薄れていたのかもしれないがな。真相を検査員の人に聞くわけにはいかないし、問題なく飛行機に乗れたので、細かい事は気にしないようにしよう。読者の人たちもな。あっ、これも、本物の泥棒さんに断っておくと、同じように飛行機に乗ろうとして空港で捕まっても、私を恨まないでくれ。何もかもが自己責任だぞ。

 だいぶ話が逸れたかもしれないが、では、フランスの美術館に絵を返しに行くとするか。でないと、観光旅行を楽しめないからな。と思ったけど、長旅のせいか、トラゾウをずっと抱えていたせいか、私はすごく疲れている。ちょっとだけ休憩させてもらうぞ。アデュー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ