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ロールアウトフロムザリアル(その2)
伊奈香織は悩んでいた。なぜならば、くだんの少女が自分の目の前にいるからである。どう話題を切り出したらいいかわからない。高い。いきなり目の前に現れるなんてハードルが高すぎる。せめて帰り道で一緒になるとか、そういったシチュエーションであってほしかった。
ぐずぐず悩んでいても仕方がない。行くんだ私。明るい明日はきっとある。
「あの、」
「伊奈さんは部活どこに入るの。」
いきなりガチで話しかけられた、なんてコミュ力だ。今どきの子供ってみんなこうなのか。
「いや、あの、その。」
「あ、ごめん。私、戸田明。私新しい部活立ち上げようと考えてるんだけど、伊奈さんも一緒にどう。」
「え、私ですか。いや、その、かまわないですけど。」
「やったぁ。これで一人確定だね。」
話しかけるタイミング、完全に逃した。