単独
みなしごのようだ
自分をよくそう思った
周囲は 家族がいて当たり前の人々だらけ
実家 親兄弟 親戚 結婚した自分の家庭
そんな人たちの会話を 聞くたびに感じた
それは 幸せなんだろう
同時に感じる 自分がみなしごのままだと
料理を作る 一人分が作りにくい
何度作っても 何年繰り返しても
消えた人数分以下は 作りにくい
一人分の買い物をして
一人分の生き方を進む
空がどれほどきれいでも
綺麗だよと 家に帰って言う相手はいない
小さな楽しさを
一日の終わりに話す誰かはいない
ただ
そんな毎日は そう嫌でもないんだ
慣れたのかもしれない
もともと 気にしないのかも
誰かといることが
不自然だと感じた
理由もないあの日
その後に訪れた
幾つもの離別が
事あるごとに
誰か側に来た途端
徹底した完了が訪れるそれを
運命だと思わなくもない
自分の幸せは
窓さえ開ければ 入る風に宿る
見上げれば等しく注がれる光に
誰の影も曖昧にする雨降りにも
呼吸を続ける体の許可に
悪魔の開ける戸口の手前
冷たさと温情の汽水域に
眠りから覚める夜明けに
食事の可能な強い肉体に
言葉を作れる思考と心に
俺は一人でも大丈夫と思うんだ
家族がいなくても
家族のように日常を
取り巻いている全てがあると知っているから
だから独りなんだろう