冒険の目的
魔王戦争から20年。勝手気ままに、各々の冒険を行えるような世の中になった。
魔王の支配から解放されたのは、人間たちだけではなく、魔物たちにとっても、魔王の目を気にすることなく、各々の縄張りで、気ままに過ごすことができるようになったという。
魔王と戦い、魔王を倒すという目的からも解放されたのかもしれない。
しかしながら、冒険者から冒険を取ったら、ただの『者』しか残らないとは、このことだ。
俺、カズマは、知り合いもなく、宛もなく、孤独に過ごしていた。しかし、俺にとっては、この孤独こそが、自分でいられる環境なのだ。
むしろ逆に、一人でいられる時間が欲しい、誰にも気兼ねすることなく、好きなこと、やりたいことに熱中できる時間が欲しい、というタチだ。
一人孤独に、自分の世界の中で過ごしていきたいのに、周りが引っ張り出そうとする。
自分は孤独だからと、孤独が理由で通り魔事件を起こしたやつもいたが、俺はむしろ、関わりを持ちたくない人間と、無理矢理関わりを持つくらいなら、孤独でいた方がいい、というタチだ。
おっと、説教じみちまったな。
突然現れたのは、ミスターXと名乗る人物が造り出したという、地下100階のダンジョンと、100階建ての塔。皆、その話で持ちきりとなる。
ミスターXによると、絶対に完全攻略させないという自信をもって造り出したとか。
皆、様々な冒険の目的がある。
ラスボスを倒すという目的。それは達成された。
レアアイテムや、レア装備を集めるため。
あるいは、人々のささいな困り事を解決するための、クエストをクリアしていくこと。
ベストドレッサーで、最高ランクを目指す。
カジノで、何万コイン貯めて、最高ランクの懸賞品と交換してもらう、などもそうだ。
ダンジョン攻略、スキルの向上。いろいろある。
あるいは、中には特定のモンスターだけを殺しまくって、何匹殺せるか、その数を競うことを目的とするような、ある意味快楽殺人とも思えるような、そんなやつもいる。
20年過ごしてきたが、目的も無く、ただ年だけをとってきた気がする。
目的も無く、ただ年を取っていくだけ、ただ無為な時を過ごしていくだけ、それでいいのか?と思いながらも、ただ時を過ごしてきたようだ。
あの6人と出会うまでは。最初に出会ったのは、あの魔法使いのモロゾフだった。年齢不詳、いったい何年生きているんだ、あのじいさんは。
「おお、かれこれ20年ぶりだな。」
20年ぶりに会ったモロゾフは、車椅子だった。
他にも、仲間たちと出会うのだが、もともと仲間意識もそれほど無く、各々が勝手気ままに動いているような状況だ。
「私も驚いたよ。なんと、地下100階まであるダンジョンと、100階まである塔だからな。」
そのダンジョンは、入るたびにフロアの構造が変わるという、不思議のダンジョンだという。
それから、数多の冒険者たちが果敢にも挑戦したものの、いまだに100階までたどり着いた者はいないという。
よーし、それならば、俺たちがその最初のクリア達成者になってやろうと、意気込む。
まずは、全員の顔合わせだ。ちなみにスマホは、異世界でも使用可能という設定になっている。