表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/126

18話 ヨハンの気持ち

 ヨハンとウォルシュが現場から戻って来た。

 ヨハンはいくつもの現場に呼ばれ、ウォルシュもそれに付き添い、寝る間も惜しんで二人で現場を回った。地元警察と中央からの派遣組に任せておけるところまで現場で指揮をして、やっとコロントンの本部に戻って来たのだった。


 二人が統括チーム室に入って行くと、そこではフェリーシアが待っていた。

「ヨハン、お疲れ様。ウォルシュもありがとう」

 二人はフェリーシアに会釈した。

「ヨハン、金採掘業者の二重帳簿の発見は大手柄よ。ありがとう。まだまだ気の許る状況ではないけれど、ここまで踏ん張れているのは、こっちが先に不正報告を発見できたからだと思うわ。それで最悪の状況を回避できているのだと思う」


 ヨハンは久しぶりに見るフェリーシアの顔に、少しドキッとしながら言った。

「そうかな、、そうだといいんだけど、、。でも、、帰る途中の高架道は、避難のための車でいっぱいだし、エネルギー供給の途絶えたところもあるんだって、、ニュースで言っていたよ」

「そうなの、一部、電力供給がダウンしている。でも、食料不足だけは防ごうと、国王と連邦議会のほうで緊密なやり取りをして、配給形式だけど飲食料流通の流れを確保しているわ。緊急事態宣言が発令されて二週間になるけど、まだ一進一退ね。政府通貨の回収と電子決済のシステムの上書きが思うようにはかどらなくて、、、金が相当、流通していたこともわかったわ」

「そうだね、、あの量は尋常じゃないから、、」

 ヨハンも次から次へと出て来た巨額の二重帳簿に、愕然としていた。


「ゲズル長官が、金の回収をしているのかい?」

「ええ、彼も寝る間を惜しんで、各州での金の吸い上げに尽力している」

 ゲズル長官もフェリーシアのゲキに必死に応えていた。

「二人とも少し休んでちょうだい。ずっと移動しっぱなしだったでしょう。まだ先はあるのだから、、」

 フェリーシアの横にいたベインは、ヨハンに城の方に部屋を用意してあると伝えた。

「もう少ししましたら、城から侍従が下りて来ますので、一緒に上がってお休みください」

「ありがとう。でもその前に少しお腹に何か入れてから、部屋へ行かせてもらうよ」

「ヨハン、私も一緒に付き合わせてもらうよ」

 ウォルシュも空腹だったようで、ヨハンに言った。

「あら、お二人、、ずいぶんと仲がいいのね」

「そりゃもう、ここ何週間か、ずっと一緒でしたからね。彼の優秀さと勘の良さは私が一番知っていると思いますよ。時間さえ下されば、いくらでもご説明いたします」

 冗談ぽく笑いながらウォルシュは言った。

 フェリーシアが頼もしそうにヨハンを見ると、ヨハンは赤くなっていた。



 何時間寝たのだろうか。ヨハンは案内された部屋で倒れ込むようにして寝ていた。実際、徹夜続きだったので、やっとベッドでまとまった睡眠が取れたのだ。

 ヨハンは、疲れでさっきは自分が少しハイになっていたのだろうと思った。フェリーシアと久しぶりに会って、ドギマギしたことに自分でも驚いていた。

 旅先から、わざわざ連絡して統括チームに加わった。フェリーシアにはもちろん会いたいと思っていた。この事件に関わるにしても、彼女と一緒なら、過去の嫌な思い出も将来の糧に変えていけそうな気がしたからだ。自分が過去の苦しみから解放される経験をし、それを何度も何度も頭の中で反芻してきた。そして自分は新たな出発ができると思った時、心の底から喜びと活力が湧いてきて、それと同時にフェリーシアへの感謝の気持ちが湧き起こった。

 ジムヨーク別邸にいた時は最悪だった。フェリーシアがR.C.だと知った時は、彼女に裏切られたような気分だった。しかし彼女は、いつもと変わらぬ姿勢で自分に接してきた。彼女は、自分がR.C.であることに何のこだわりもないんだと気づくと、自分が何でそんなにこだわっているのか、自分自身が小さく見えて来た。そして意を決してジェスと向き合い、自分の過去と向き合った。そうやって一つ一つ越えてくると、日常の景色が違う色に見えて来たのだ。その大事な時に、フェリーシアがいつも一緒にいてくれた。だから隠遁者たちを敵に回して一緒に戦えるとわかった時は、本当に嬉しかった。

 彼女の指揮はわかりやすくはっきりしている。部下が動きやすいように考えをはっきりと伝え方向を示す。そしてそれは正義に根差し機知に富み、下で働く者に誇りを持たせてくれる。現場をいくつも回りながら、こうやってフェリーシアと一緒に隠遁者を追い詰めているんだと思うと、気力とやる気がみなぎった。 


 これが「好き」という感情なのかどうかはわからないが、何であの時、ドキッとしてしまったのか、、。今も少し動揺していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ