16話 狩猟班の友人
二人は狩猟小屋に向かった。
「トッティィィー」
リョンファンは小屋が見えてくると友人の名を呼んだ。しかし返事はなく狩猟小屋にも人の気配が感じられない。
小屋のドアを開けるとやはり誰もいない。中は整理されており、狩猟の道具や罠がきれいに立てかけてあった。
「今は、狩場に出る時間じゃないからいると思ったんだけど、、、」
リョンファンは裏に回ってみた。
小屋から少し下ると小川の源頭部がある。彼らはそこで釣りをしていることが多い。
リルネもリョンファンについて行った。
「あ、いたいた。トッティィィー、ゲティィィー」
リョンファンが呼んだ先には、青年が3人、岩の上に立って釣糸を垂らしている。
リョンファンの声に気づいて、3人が振り向くと、そのうちの一人が手を振り返してきた。
「あれが、トッティ。幼馴染よ。その隣がゲティー、彼も同い年なの。もう一人は3年後輩の子よ」
リルネは故郷の山村を思い出した。同い年の子は同学年だから皆友だちで、人数も少ないのでお互いに何でも知っている。
リルネは目の前のこの牧歌的な様子に、先ほどの緊張が一挙にほぐれた。
「どうしたんだ、まだ仕事中だろ」
トッティは、リョンファンがここまで来るのは珍しいとばかりに、岩から下りながら話しかけてきた。
「そうよ、仕事中よ。これも仕事なの」
そう言って残りの二人が下りてくるのを待った。
「ところで、あなたたちが獲ってきている鹿肉のことなんだけど」
リョンファンは早速本題に入った。
「あれの解体は、誰がしているの?」
「へっ、誰って、ボクたちだけど」
「3人でしているの?」
「うん、順番でしているよ」
「今日の鹿肉は、誰がさばいたの?」
「ボクだけど」
隣に立っているゲティーが言った。
「ゲティー、あなた、、もう少し仕事をきれいにできない。あれでは肉が傷むじゃない」
「傷む、、ああ、そのことか。あのほうが肉の味がしみ出ておいしくなるって聞いたから」
「ええっ、そんなこと誰から聞いたのよ。厨房長、、、もう、カンカンなんだから」
「えっ、ホント?」
「そうよ。ここ数か月、だんだん肉の傷みが激しくなってきてるって」
「ああ、それならボクもそうしているよ。ゲティーの兄さんから聞いたから」
トッティも同じようにしているらしい。
リョンファンはついでに、その後ろにいる後輩にも聞いた。
「あなたも同じようにしているの?」
「いや、、ボクは、、、」
「こいつは、昔からのやり方さ。こいつの親父さんは頑固だから、イマ風のさばき方は気に食わないんだって」
「う~ん、そうなの、、。まあ、どっちにしても、厨房長が怒るから、その、イマ風とやらはやめてちょうだい。昔よ、昔のやり方でやってちょうだい」
「え~、何だよ。やっと調子つかんできたと思ったのに」
トッティもゲティーも残念そうにしている。
リルネはリョンファンの後ろから、そーと聞いてみた。
「あの、、、鹿肉って、叩けばおいしくなるんですか、、」
トッティとゲティーはリルネの方を見て、ニコリとした。
「君、老師様と毎日修行している子だよね。結構有名になっているよ。どこから来たんだい?」
「あ、えーと、エイマリアから、、」
「そう、エイマリアの子なんだ。老師様とあんなに親しいなんて、すごいね。どういう知り合いなんだい」
リルネが返答に困っていると、リョンファンが横から割って入ってきた。
「ちょっと、こちらはお客様なのよ。そんなに馴れ馴れしくしないの」
「だって、話しかけてきたのは彼女の方だぜ」
「話しかけたんじゃなくて、質問したんでしょ」
「あ、まあ、、そうとも言う」
そう言って、トッティが答えた。
彼が言うには、「おいしくなれ」と思いながら肉を打つと、肉も心地よい弾力をもって応えてくれるそうだ。
これといった根拠もない、、これがイマ風のやり方の説明だった。




