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12話 フェリーシアの帰国

 フェリーシアは、飛行機を降りるとすぐ車に乗り換え王城に向かった。

 すでに飛行機の中で国王との会話は済ませていた。思ったより切羽詰まった国王の様子にフェリーシアも驚いていた。次にウォルシュにつなぎ、彼からヨハンのことと現場についての話を聞いた。


 王城に着くと、ベインが待っていた。

「フェリーシア様、お待ちしていました。こちらへどうぞ」

 ベインはフェリーシアを統括チーム室へ案内し、今までの調査結果と現在の状況を説明した。

「さすがヨハンね。金の不正は確実なのね」

「はい、そちらは確実です」

「政府通貨下落の原因はわかったの?」

「はい、ゲズル長官は、政府通貨の過剰発行という結論を出しました。それに則して対処していくと話しております」

「そう。ゲズル長官と直接話ができるかしら」

「はい、緊急アポを取ります」

 

 ゲズル長官からすぐ連絡が来た。

 パネルを立ち上げると、げっそりとしたゲズル長官が映っている。

「ゲズル長官、お疲れ様。大変だろうけど、ここが勝負どころだと思って、踏ん張ってちょうだいね」

「はい、お言葉ありがとうございます。フェリーシア殿下」

「ところで、政府通貨の過剰発行の件だけど、今の時点で、それはどうして起こったと考えられるのか教えてくれる? ああ、誤解しないでね。責任を問うているわけではなく、何らかの勢力が意図的に経済をコントロールしようとしていると考えているの。だから後手に回るのでなく、どこかで先手を取りたいの。そのための質問だから、気にしないでちょうだい」

「は、はい、、。その、、こちらは、、経済の停滞は認められず、その伸長率はほぼ一定で、安定した伸びをしておりました。ただ、州間の流通量はそれ以上のペースで増えておりまして、政府通貨が流通量に間に合わず、大幅発行がここ数年の間、続いていたのでございます」

「ええと、、ここ数日間の間だけに注目すると、どういうことになるのかしら」

「は、はい、、。政府通貨が大量に市場に流れ出た、、ということになります」

「それは、故意にしようと思えばできることなの?」

「はい、、数年にわたって、政府通貨の貯め込みが行われていた場合、考えられないことではありません、、、」

「数年に渡って、、、地域通貨に換金されずに、そのまま貯め込むということね」

「は、はい」

「それで、この場合の対処法というのは何?」

「は、はい、、。臨時通貨を発行し、政府通貨の桁を、落とします」

「それはもう準備しているのね」

「は、はい、、、。ただ、それだけが原因とも考えづらい、、と申しますか、、地域通貨に換金せずに、品物だけが市場に出回る、、、ということは、、ありえないのです」

「そう、、他にどんな原因が考えられるのかしら、、そうね、、、物々交換とか?」

「はい、、理論的に考えられなくはないのですが、、現実的には、、、これだけの経済規模で、通貨の価値をさげるほどの、、、多業種にまたがっての、、、物々交換は、、難しいかと、、」

 ゲスル長官の声は、力なく活舌も悪い。責任を感じているのはわかるが、今一番しっかりしなければならないのは彼なのだ。

「何か、理由は考えられない?」

「は、はい、、他の通貨が、政府通貨の、肩代わりをしている、ということなどが、、考えられますが、その形跡は、、見当たりませんでした、、」

「金なら、どう?」

「は、はい、、金、、」

 責任を重く感じているのだろう、、どんどん声が小さくなってくる。

 フェリーシアは思わずカツを入れた。

「ゲズル長官! これはテロなのよ。武器を使わない経済テロ! 相手は国をマヒさせようと悪意を持ってテロを起こしているの。だから私たちはそれに立ち向かわなくてはならない。武器や力で対処するのでなく、知恵でするしかないの。今、先頭に立って戦えるのは、あなたなのよ! この国を守るのはあなたなの! 今は責任問題なんて考えないでちょうだい。私は全面的にあなたを信頼する。私たちは知恵を出し合って、この国を守らなければいけないの」

 ゲズル長官は神妙な顔つきになっている。

 フェリーシアは畳みかけた。

「今は一刻の猶予も許されない時、そういう敵を相手にしているの。だから今は責任問題なんて二の次。もし今、あなたが自分を恥じているならばそれは間違いよ。そうではなくて、この危機的状況で何もできないことを恥じなさい」

 ゲズル長官の丸くなっていた背が伸びた。

「は、はい。フェリーシア殿下」


 ゲズル長官は深く深呼吸をして、再び考え出した。

「金を、、通貨代わりにしようと思えば、できないことはありません。ただ、その場合、、政府通貨より信用のあることが前提になります」

「今のこの状況では、どうなの?」

「はい、、今の、、通貨暴落では、、可能だと思います」

「以前から、金を通貨の代わりにしようと思えばできた?」

「はい、、できます、、が、、まずは、、信用の根拠の度合が焦点になるかと思います」

「そう、、、信用の度合、、、。それで、今、すべきことは何?」

「はい、まずは通貨を安定させるための臨時通貨発行、それから金の通貨としての流通を防ぐために、政府の信用を維持することです」

「金より政府通貨の方が価値があると思ってもらうことね」

「はい、そうでございます」

「ゲズル長官、統括チームと財務省は同じ事件にあたっているので、これよりホットラインで繋ぎます。新しくわかったことや変化、進展など、何かあったら、すぐに連絡をちょうだい。そちらでほしい情報がある場合も同じよ」

「はい、わかりました」


 フェリーシアは、全捜査員へ一挙に回線をつないだ。

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