6話 王立図書館
王城の少し離れたところに王立図書館はあった。大学のキャンパスかと思うほどの広さで、緑の美しい敷地の中央に石造りの荘厳な建物が立っていた。散歩している人や読書している人、木陰にマットを敷いて寝ている人もいる。のんびりとした時間が流れていた。
図書館に入り、ヨハンはさっそく革命前の金融、通貨などについて、特にR.C.に特化した文献を探した。しかし、ピンポイントで欲しい書籍や文献は見当たらなかった。ウォルシュもR.C.専門の経済学者を探してみたが、そういう学者はいなかったという。
文献探しをして初めて気づいたが、経済分野の原資料や分析書は他の分野よりかなり少ない。ゲズル長官が、嬉々として講義を行っていたのもうなづける。人気がないということは、その分野の考察や研究も停滞しており、人材の過疎化を意味していた。
ヨハンは気分転換に、他の書籍や文献に手を伸ばし始めた。そういえばゲズル長官は、金は国と民間で50%ずつ保有していると言っていたが、実際、双方どのくらいの量を持っているのだろう、、。ヨハンは気になって数字を追ってみた。しかし、国の月々の保有量の数値は見つけたが、採掘状況をまとめた一覧は見当たらなかった。国の保有量と流通量が同じであることを確認したかったが、これではできない。人気がないだけでなく、データすら揃っていない。
統計がないとなると、市場に出回っている金の量を何を見て確認すればいいのだろう、、。採掘業者は金を卸売業者に卸す。金専門の卸売業者を見ればいいのだろうか、、。
ヨハンは金の流通元となる専門業者の関係資料を探し始めた。
ベインは、国王に捜査状況を報告していた。
「連邦捜査員には引き続き、各州の隠遁者とその関係者リストを洗ってもらっています。巡視チームとジムヨーク州警察局メンバーにも、続けてベルフォンヌ氏とジムヨーク元州知事の方を調べてもらっていますが、その後、新しいことは出て来ていません」
「そうか、、。ゲズル長官の話はどうだった。何か参考になりそうだったか」
「はい、、陛下から、経済面からの調査のご指示がございまいしたが、我々では専門外になりますので、、ゲズル長官の説明も少々難しすぎました。そちらは特化したメンバーが必要です。ただ、まだ何も出てきていない状況で、そこまでは、、とも、正直、思います」
「金に関しては、ゲズル長官も思い当たることはない、とのことだったな」
「はい、そうおっしゃっていました」
捜査は行き詰まりつつあった。
「フェリーシアは、いつ頃帰ってくる予定だ」
「はい、まだご連絡はございません。連絡があり次第、お迎えにあがる手はずになっております」
「そうか、、。彼女を少し急かせるかな、、」
ウォルシュは、図書館にこもっているヨハンを誘い出し、一緒に昼食を取っていた。
「ヨハン、君が図書館にこもりだして一週間になるが、、調子はどうだい?」
「そうですね、、最初はあてずっぽうに資料に当たっていましたが、今はどの資料に当たれば何がわかるかがわかってきましたので、最初よりはスムーズです」
「金の市場流通量を確認したいとのことだったね」
「はい。いわゆる一次資料から見ているので時間はかかりますが、現場の数値ですから、いろいろ想像が膨らみ、、興味が広がっていきますね」
「おいおい、、我々の本来の目的を忘れちゃいないだろうね、、。私たちは、隠遁者たちをあぶり出さなければいけないのだよ」
「はい、わかっています。あなたも言っていたように、監禁洗脳事件での刑事告訴が難しいとなれば、他の違反行為を探すということになりますが、彼らは、ジェスみたいな短絡的な方法で国家転覆を狙っているとは考えられないのです。父が金を保有し出した時期を見ると、グループと接触を始めた時期と一致するんですよ。だから、やはり金は何らかのポイントではないかと思うんです」
「なるほど、、同時期か、、」
ウォルシュは食後のコーヒーを飲んでいる。
「何か手伝ってほしいことはあるかい。資料を精査するにも、手間がかかるだろう」
「ええ、それはそうなんですが、、、当たりかはずれかも、まだもわかりませんので、、そこまでは頼めませんよ」
ヨハンは苦笑いした。
「実は、捜査も少々行き詰まっていてね、、ベイン室長も、可能性のあることであれば、人員を割いてもかまわないと言って下さっているんだよ」
ヨハンはお茶をすすりながら、思い出したように言った。
「そう言えば、、フェリーシアはまだ戻って来ないのですか」
「お嬢様は、、どうだろう。それに関しては、別に何も言っていなかったな、、」
ヨハンはフェリーシアの意見も聞いてみたいと思った。
確信はなかったが、ヨハンとしては金に関してとことん調べてみたいと思っている。
「それでは、、、お言葉に甘えてもいいですか。ボクは、金がどんな役割を果たせるのか、それをとことん調べてみたいと思っています」
ヨハンの力強い真っすぐな言葉は、少し焦り始めていたウォルシュに勇気を与えた。
「わかったよ。私を含めて、数人集めよう」




