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4話 神仙峯の力

 翌朝、二人は朝食を終えると散策に出かけた。山の景色はきれいだし、空気も澄んで気持ちがいい。二人は昨日の湖に向かって歩いた。


 フェリーシアは気を使える。昨日は感じていなかった土地の気脈を、緊張が抜けたせいか今日は感じ始めていた。

「リルネ、あなた昨日、身体が軽い感じがするって言っていたわよね。今はどんな感じ?」

「う~ん、昨日ほどはっきりとした感じはないけど、でも変わらず絶好調よ」

 そう言って、リルネはその場でジャンプした。しかし絶好調と言うほどジャンプは高くなかった。

 フェリーシアは歩きながら気を練った。そして、リルネの腰のあたりに手を当てた。

「何、、どうしたの、、」

 フェリーシアは自分の気を少しずつリルネに入れてみた。

「もう一回、ジャンプしてみて」

 そう言われて、リルネはもう一回ジャンプした。

 すると今度は、1m以上高く跳ねた。

「うわっ、、すごっ! 思った高さまで跳んだ! さっきはできなかったのに」

「あなた、自分で気を練ったことがないでしょう」

「うん、ないわ、、」

「センスはあるのにしたことはないのね。昨日は気づかなかったんだけど、今日は気の巡りの良さがはっきりと感じられるわ。この土地の気脈の流れがいいんでしょうね。それこそ老師様がおっしゃっていた、大地の浄化っていうものなのかしら、、。なるほど、、すごいわ、、」

 フェリーシアは歩きながら、両手でゆっくり空気をかき混ぜるように、空中で手を流している。

 リルネも真似してみたが、何ら手ごたえは感じなかった。


 湖に着くと、何人かの人々が湖畔で瞑想をしていた。ずいぶん長い時間しているように見える。微動だにせず、岩や木のように景色に溶け込んでいる。彼らが修行者たちなのだろう。リルネは興味をひかれた。


 修行者たちから離れた木陰で寝そべっている人がいた。よくよく見ると、老師だった。

「うわ、、あんなところに、老師様が、、、」

 リルネは小さな声を上げて指さした。フェリーシアが、リルネの指さす方向を見ると、老師が木陰で気持ちよさそうに寝ころがっていた。

「あの方は、どこでもマイペースなのね」

 フェリーシアは面白そうに言った。

 二人はそちらへ歩いて行った。


「老師様、おはようございます」

 リルネが声をかけると、老師は片目を開けてうなづいた。

「お隣、いいですか」

 珍しくフェリーシアから話しかけていた。

 老師はもう片方も開けてうなづいた。

「尊師様のお言葉は、雲をつかむようで理解しにくいのですけれど、老師様のお言葉は、、実は理路整然としていて、、わかりやすいですよね」

 フェリーシアに言われ、老師はにこっと微笑み「当然」とばかりにうなづいた。

 リルネは、こういうところだよな~と思う。ノリのいい老人。老師は飄々とし、つかみどころがないようで、実は的確に要点を押さえている。そして人を見ていないようでよく見ている。そして、、ノリがいい。


「私は何度も歪の橋を渡っていますが、、こちらから旧大陸へ行くのはいつでも行けますが、旧大陸からは、月に一回、満月の翌日と決まっていますよね。あれはなぜですか?」

 神仙峯が苦手なフェリーシアも、尊師と面会した後では、老師が話しやすい人物だと感じるのだろう、、今朝は積極的に話しかけている。


「ああ、詳しくは知らないのじゃな。あの橋は橋を架ける受持ちがおって、3人集まって時空に橋を架ける。こちらからかけるのは容易だが、あちらからは架けられない。だから毎月、満月の翌日と決めて橋を架けているのじゃ。使う使わないに関係なくのう、、」

「なぜ、満月の翌日なのですか?」

 老師は寝ころびながら伸びをする。

「おぬしは気づかぬか、、。気脈が充実する頃合いを、、、」

 フェリーシアは、どういう意味だろうと考えてみる。気脈の充実する時期、、。人の身体のように、大地にも気の流れの調子があるのだろうか、、。だとすると、それが満月の翌日、、。

「満月の時が、一番、大地に気が充満して、、それの流れ出るのが翌日、、ということですか」

「ふむ。そうじゃ」

 フェリーシアは、尊師に聞けなかったことをここで聞こうとばかりに、老師を質問攻めにする。

「場所は、、橋の場所は、新大陸の東の海の、、たぶん同じ地点だと思うのですが、、場所も決まった地点なのですか」

「いかにも」

「決まった地点だとすると、、、それは、、磁場の谷ですね」

「ほう、、察しがいいの。受持ちの話だと、意識を集中させる緯度経度があるんだそうじゃ、、わしはよく知らんが、、」


 リルネは二人の話を横で聞きながら、湖で修行をしている人たちを眺めていた。瞑想している者もいれば、体操をしながら気を練る者もいる、水面をジーと見つめている者もいれば、木に身体をこすりつけている者もいる。

「老師様、あそこで木に背中をこすりつけている人は何をしているのですか?」

 リルネはある方向を指さした。そこにはクマのように身体を上下に動かしながら、木の幹に背中をこすりつけている人がいた。

「あれは、木から気をもらっているのじゃ。宙から気を取りにくい者は、ああやって木を通して気を得るのじゃ。まあ、体質もあるから、、おまえさんは、ほら、あそこで体操をしとる者がおろう。あの者に体操を教わるとよい。おぬしなら、すぐに気を扱えるようになろう」

 リルネは老師の指さす人を見て、少しの間観察した。そして立ち上がると、その人に向かって歩き出して行った。


「リルネは、素質はあるが方法を知らん。フェリーシア、おぬしがここにいる間は、リルネに気の練り方を教えてあげるがよかろう。あれは、、おもしろいくらいに上達するぞ」

 老師はそう言って笑った。


「そうそう、明日は日の出の時間にここへ来なさい。楽しいものが見れるぞ」

 そう言うと老師はすくっと立ち上がり、リルネとは反対の方向に歩いて行った。


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