3話 ヨハンの合流
コロントンにはヨハンが来ており、ウォルシュが彼を迎えた。
「すっかり元気になったようですね。今回は統括チームにお力添えいただけるということで、感謝しています。あなたがチームにいてくださるとは、心強いです」
「お久しぶりです、ウォルシュさん。ボクこそ感謝しているんですよ。あなたが彼との取調べを段取ってくださり、後押ししてくれたので、ボクもやっと吹っ切れたような気がしているんです」
ヨハンは嬉しそうにそう言った。
「私のことはウォルシュと呼んでください。これからはチームの同僚なのですから」
「ありがとうございます。それでは、ボクのことはヨハンで」
二人は笑顔で握手した。
「あの、、ところで、フェリーシアは、このチームには入っていないのですか。連絡を入れようとしても、なかなか連絡がつかないのですが、、」
「ああ、フェリーシア様は今、神仙峯に行っていらっしゃいます。神仙峯の方でも、この隠遁者たちの事件は重く見ているようで、老師様が神仙峯より直々に来られたのですよ。そしてフェリーシア様とリルネ様は事件解決のために、老師様と一緒に神仙峯へ祈りに行っておられます。フェリーシア様が帰られるまでは、ベイン室長が臨時のチーム長をしています」
「えっ、帰られるまでっていうと、、、フェリーシアがチーム長なのですか」
「はい、そうです。国王陛下直々のご命令で、フェリーシア様が陣頭指揮をとられます。結団式では、相当のご覚悟を語っておられましたよ」
デュッセルン村で牢獄から助けられた経験のあるヨハンからすれば、フェリーシアが先頭に立ってこの事件にあたってくれるのは、この上なく頼もしく嬉しい。彼女の状況把握や分析、そして素早い決断と行動は素晴らしかった。とても信頼でき、そして好感が持てた。実はそれを少し期待して、ヨハンも今回加わったのだ。
「そうですか、、。それでは、戻って来るのが楽しみですね」
ウォルシュはヨハンを統括チーム室へ案内しながら、現在の捜査状況を説明した。
ベルフォンヌ元議員もジムヨーク元州知事も、二人とも黙秘している。ただIDリングを押収しているので、そこから通信履歴、内容、移動などのかなりの情報が取れている。しかし肝心の、隠遁者たちとのやり取りと思われる通信は、内容が暗号化されており、拾うことができなかったという。
「巡視チームでこの半年、R.C.一族を追ってきて、そのつながり、関係者はある程度リスト化されていますが、しかし、彼らは犯罪者ではありません。ジェス・ファーガストンによる爆破事件は、彼の承認欲求が起こした勇み足的事件であり、ベルフォンヌ氏もジムヨーク元知事もそれに直接関与した形跡はありません。しかし、監禁洗脳事件については、ベルフォンヌ氏はもとより、ジムヨーク元知事も知っていました。積極的に関与していたと言ってもいいでしょう」
「そうですか。それでは私が監禁された2年前くらいから、始まったということでしょうか」
「そのとおりです。あなたの時はそれほどまだ組織化されておらず、監禁の縛りも弱かったようです。しかし、あなたが自力脱出した頃から、より監禁の手口が巧妙になり、じっくり時間をかけて被害者たちを落としていったようです」
ヨハンはため息を漏らした。
「今回、なぜリルネが狙われたのでしょう」
「ベルフォンヌ氏は、隠遁者たちから神仙峯と関係のある者たちをグループに引き入れるよう指示されていたようです。それで、神仙峯に向かうリルネ様を狙ったと思われます」
「彼はどうやってリルネが神仙峯に向かっていることを知ったの、、、ああ、元州知事ですね」
「はい、そうです。フェリーシア様がリルネ様を連れて、一度、元州知事を訪ねています。彼はリルネ様の存在や神仙峯に向かうことを以前より知っていました。ただ、入国されたのを知ったのは、フェリーシア様から連絡を受けてからのようです」
何とも皮肉な話で、リルネをジムヨーク州知事に会わせなければ、監禁されることもなかったかもしれない。図らずもフェリーシアによって、リルネが危険な目に遭う羽目となったのだった。しかし、それによってジムヨーク州知事は炙り出されたとも言える。
「その二人は監禁洗脳事件で刑事告訴できそうですね。隠遁者たちはどうなのでしょう」
「はい、、彼らまでは、、今のところ、難しいです。ベルフォンヌ氏が指示を受けていたようだと申し上げたのは、あくまで我々の推測です。今、判明している彼の通話記録からすると、ベルフォンヌ氏側の忖度と言わざるを得ない状況です。隠遁者たちとの会話が、もし文字化できたとしても、そこに、指示と言いきれる形で証拠が残っているかどうかは、、疑問です」
「なるほど、、そうですか」
ヨハンもウォルシュも残念そうな顔をしている。
「それから、彼らの資産の洗い出しもしています」
ウォルシュは少々渋い顔で言った。
「資産の洗い出し自体は順調なのですが、、、二人とも、なぜだか大量に金を保有していまして、、。何か理由がありそうなのですが、、、まったく、、それがわからないのです」
「金ですか、、、」
宝飾品を収集する人もいるし、金塊をコレクションする人もいるだろう。しかし、この二人が同時に金を保有しているとは、、それが何かを示唆しているに違いないとウォルシュは考えているのだ。
ヨハンも同じように怪しさを感じた。
「今度、専門家に意見を聞いてみましょうよ」
ヨハンはエイマリアの経済状況や財政状態なども聞いてみたいと思った。




