25話 フェリーシアの逡巡
朝食後、国王がリルネに言った。
「リルネ、重要な話があるのであとで私の執務室に来てくれるかい」
「はい」
国王とまだ1対1で話したことがない。重要な話なのだろう、、神仙峯行のことも詰めなければいけない。
リルネは執務室を訪ねた。
「お入り、リルネ」
国王はリルネを部屋に招き入れた。
「体調はどうだい。まだ救出されて何日も経っていないね、、。具合の悪いところはないかい」
「はい、国王様。いたって健康です。フェリーシアがいろいろ気をつかってくれ、私は安心して過ごしています」
「そうかい、、それはよかった。ところで、昨日はゆっくりと、老師様と話はできたかな」
「はい、とても気さくな方で安心しました。まだまだ、老師様の話されている内容は難しく、わからないことは多いのですが、それは追々理解すればよいことですので、、、不安はございません」
国王は安心したようにうなづいた。
「私も、、神仙峯については全くの門外漢でね、、」
そう言って国王は笑った。
リルネは国王の笑顔を見て少しほっとした。緊張の連続だったこの数日間、国王はずっと厳しい選択を迫られていただろう。しかし、こんな優しい笑顔で笑ってくれるのだ、、、それが嬉しかった。
「昨日、ヨハン君からジムヨークのウォルシュのところに連絡が来てね、、彼も、巡視チームの捜査活動に加わりたいと言ってきたよ。こちらとしては、もろ手を挙げて大歓迎だよ。さっそくジムヨークでもコロントンでも、手近な庁舎に来てくれるよう伝えてもらった」
「へえ、そうですか、、ヨハンが、。すごいな、、」
嬉しかった。彼としては人生を狂わされた事件なのだから、無視することはできないのだろうが、、。本来のヨハンは芯が強いんだなと思った。
「昨日のうちにフェリーシアにも伝えたのだが、、、彼女は、、どうもこの事件に関わることには、躊躇があるようだね」
「はあ、、そうですか、、」
「彼女には巡視チームを任せたいと思っているんだが、、どうも、違う考えがあるらしい、、。巡視チームに入る前に、神仙峯に行きたいと言ってきた」
リルネは返事ができなかった。
「昨日も、フェリーシアからは返事をもらっていなかったが、、ヨハンを旧大陸から呼んだのはフェリーシアだし、その彼が捜査に協力してくれると言ってくれているのだから、彼女も心を決めないといけないと思うのだけどね、、」
「あの、、それで国王様は、なんと答えられたのですか」
「うむ、、保留にしてあるよ。本人がどうしても嫌ならば、それを無理にさせるわけにはいかないからねえ、、。しかし彼女の性格からすれば、自分から率先して手を出しそうなものなのだが、、今回はどうしたのか、、、それがわからないんだよ」
一瞬、国王は父親の顔になっていた。
「確かに、彼女は神仙峯に自ら行ったことがないから、実際に行って、神仙峯の人々と親交を深めるのはいいのだが、、なぜ、それが今なのか」
フェリーシアは自分と一緒に神仙峯に行きたいと申し入れたのだ。しかし彼女の性格や立場上、そのまま巡視チームを率いるのが当然だし、ヨハンが加わるのなら、なおさらだ。だから、フェリーシアの胸中を測り兼ね、国王は私にその話をしてきたのだ。
「今後について、私もまだフェリーシアと話していないのでよくわかりませんが、、私を心配してくれているのだと思います」
「うむ、、確かに、それもあるな。君は、15年ぶりの新大陸だし、来た早々、事件に巻き込まれてしまい、それに責任を感じてもいるだろう。これから向かう神仙峯も、、、何やら問題を抱えているようだからな、、、」
国王はそう言ったが、、歯切れの悪さは否めなかった。
彼は、昨日老師が話したような神仙峯の問題は知らない。リルネとフェリーシアの胸にだけしまっておくようにと言われている。ただ、それのみで、フェリーシアが神仙峯に行きたいと言ったわけではないことを、リルネは感じている。
国王は腕組みをしつつ「どうしたものか、、」と、小さな声でつぶやいた。




