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22話 客人と国王の会見放送

 リルネとフェリーシアは、フォーエンに連れられて、客間へと向かった。


 フォーエンはドアをノックした。

「リルネ様、フェリーシア様をお連れいたしました」

 そう言ってドアを開けた。フォーエンはリルネとフェリーシアを中へ案内した。

 その客人も立ち上がった。

「老師様、こちらがリルネ様でございます。急遽ジムヨークからお越しいただきました」

 老師はリルネをじっと見た。そしてその後ろに立っているフェリーシアにも目を向けた。

 フォーエンはリルネとフェリーシアに老師の紹介をした。

「こちらは神仙峯の老師様です。ここからはるか西にある神仙峯は、聖者様たちがいらっしゃる霊山ですが、その山に住まわれているお方です」

 

 そうフォーエンが紹介した老師は、年は70を優に越えているだろう、ふさふさとした白髪を後ろに束ね、背筋をしゃんと伸ばした小柄な老人だった。

 老師はずっとニュースを見ていたらしく、壁にかけられたイーエルパネルにはキャスターが映っており、ジムヨーク州知事のことを伝えていた。そして画面の右下には、国王の会見放送のカウントダウンが表示され、あと30分と出ていた。


「まだ、金と権力の亡者たちが生き残っておるようじゃのう」

 老師はそう言うとまた椅子に座り、立っている二人にも座るよう手招きした。


「人間の欲とは、一度それに囚われるとなかなか抜け出せないもののようじゃ。彼も最初は立派な青年だったがのう、、、」

 老師はジムヨーク州知事をよく知っているかのように言った。

「老師様は、ジムヨーク州知事とお知り合いなのですか?」

 リルネがフェリーシアの代わりに質問した。

 老師はリルネを見た後、ゆっくりとフェリーシアに目を向けた。

 コロントンに入ってから、フェリーシアは明らかに口数が減っている。今のリルネの質問は、フェリーシアの代わりにしたものだった。


 老師に視線を向けられ、フェリーシアも自分が聞くべきところだろうと思い、言葉を引き受けた。

「私は、R.C.家がこの国にとって大きな意味を持っているなんて、今まで知りませんでした。お父様も私に父祖たちについて話したことはありませんでした。今回起こっている一連の事件には、昔のR.C.家の者たちが関わっています。私はこれに対してどう臨めばいいのか、まだ整理はついていません」

 フェリーシアは、今の正直な気持ちを言った。

 

 老師は少し考えると、、おもむろに話し出した。

「あなたがたは50年前まで続いていた、昔のこの国の姿を聞いたことがありますかな、、。皆、自分のことしか考えない。だから人を信じることができない。そんな人間たちになっていた」

 老師は昔を思い出すように言った。

「正義や真実、、、そして神までもないがしろにして人々は生きていた。ちょうど、利己主義をかかげてまた自分本位の世界をつくろうとする、彼らのような生き方じゃ。よくまたそんな世界に戻ろうと考えるものじゃ、、、。本当に、、人々は欲に囚われると限りを知らない」

 老師はため息をつくと、続けた。

「利己主義や今回の『Mr』のような人物を作り出したのは、確かにR.C.の父祖たちじゃ。そして、今も昔の栄華を忘れらず、悪あがきをしているようじゃのう。しかし、今の国王も前の国王も、同じ血が犯した過ちを償おうとしている。もちろん彼らが悪いのではない。彼らは彼らの良心に従って立派に生きておる。しかしこれは、彼らが清算しなければならない内容なのじゃよ」


 フェリーシアは老師の言っていることはわかったが、同意できなかった。お父様も老師も過去のR.C.の罪はその後孫たちが贖わないといけないと考えている。理屈はわかるが、感覚として身に迫るものはなかった。国民に対する王族としての思いや責任感は、深くある。しかしそれは贖いではなくて、運命であり、使命である。運命や使命であるならば、幸せな未来を夢見てそれを受け入れたい。そこに贖罪が必要だとは思わない、、これは無責任なのだろうか。


 イーエルパネルでは、もうすぐ国王の会見が始まることを知らせている。

 3人とも自然に画面の方に顔を向けた。映像は連邦議会議事堂の一室、国王室を映し出している。あと少しで、国王が入室されるとアナウンスされていた。

「これから始まるようじゃのう。国王のお話を拝聴しようか」

 老師はそう言って、ソファに深く座った。


 画面に数人の側近と一緒に国王が現れた。国王は中央の執務机に腰を下ろした。そして正面を向いて、画面を通して見ている全国民に向けて、話しかけるように口を開いた。


「愛するエイマリアの国民の皆さん、私は皆さんに、このような形でお話ししなければならないことを残念に思います。皆さんももうご存知のように、このエイマリア国は、新しく生まれ変わって再出発いたしました。この50年の間、先々代のジョージ王から今に至るまで、国と国民を思い、粉骨いとわず邁進して来ました」

 国王は机に置いてある水を一口飲んだ。


「今日、私は、皆さんにお詫びとお願いがあり、この場にいます。お詫びというのは説明するまでもなく、ジムヨーク州知事の逮捕のことです。彼は、再び金と権力が牛耳る世界を作ろうと、クーデターを企図する者たちと手を組んでいました。彼はその昔、金と権力の世界を作り上げた特権階級を出自とする者でもありました。今はもう存在しないと思っていた特権階級を意識する者たちは、地下で生き続け、今この時代に再び現れました。そして彼らは、連邦議会に『アジェンダ』を送ってきました」

 国王はまた一息入れた。言いにくいことも、はっきりと言わなければならない。


「こう言えば、皆さんは私のことを笑うかもしれません。『そんなこと言ったって、あなたも同じ特権階級の子孫ではないか』と。そうです、私も先々代王の血を継ぐ、元特権階級一族の子孫です。しかし私は、ジョージ王のように良心に恥じないように生きてきました。友人のつつましい幸せを自分の幸せと感じられる、そんな人間でありたいと思っていました。ジョージ王は自分の一族と闘い、そして裁かなくてはいけませんでした。一度きれいに清算しなければ前には進めなかったのです。深い信念と信仰によって彼はそれを行いました。今の私の気持ちも、篤く彼の思いに重なります」

 国王の額からは汗が流れていた。ただ彼は訴えるしかなかった。国民に信じてもらえるように。そして後戻りしてしまわないように。


「私はこの場をお借りして皆さんにお詫びいたします。私の実弟、ライアン・ロッキーチャックが皆さんを裏切ってしまったことを。彼は自己中心の罠にはまってしまいました。皆さん、、私に時間をください。私は何としても、前時代に戻ろうとするこの愚行を止めたい。皆さんの中には、もうすでに私を信用できないと思う人もいるかもしれません。しかし私はここで皆さんにお願いをしたいのです。私に彼らを捕まえさせていただきたいのです。なぜか、、。それはジョージ王が言っていたように、これが私たちに課せられた使命であり、宿命だと考えるからです」

 国王の目にはうっすらと涙が浮んでいるようだった。

「私は、皆さんを心から愛しています。皆さんと皆さんのご家族に神の祝福がありますように」


 国王がそう言うとカメラはターンして、横に用意された演説台に立っている巡視チームのチーム長が映し出された。そして、今回の事件の経過と今まで巡視チームが秘密裏に調べていた調査内容の一部が公開された。


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