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21話 国王の思い

 世間は大騒ぎだった。ネット上にはフェイクニュースや陰謀論も含め、ありとあらゆるコメントや記事が行き交った。

 ベルフォンヌ議員は、逮捕後の取り調べにずっと黙秘を貫いていた。そして弁護士を呼んだ。刑事事件で弁護士を呼ぶのはめずらしいことで、単に刑事事件の少なさもあるが、それ以上に黙秘することが珍しかったのだ。そのため、このベルフォンヌ議員の行動は多くの国民に違和感を与えた。そして、高齢の者たちには前時代を思い起こさせた。

 ベルフォンヌ議員が黙秘を続けていたならば、ジムヨーク知事の名前は出るはずがなかったが、どこから証拠が出てきたのか、当局は任意同行から逮捕に切り替え、家宅捜査を始めていた。

 その知事逮捕のニュースと共に、連邦議会に送られてきたアジェンダについても報道された。数十年前のアジェンダと同じく「IFR」のサインがあり、そこにジムヨーク知事も含まれていたと報道され、アジェンダの内容解説と、50年前のコロン革命の話も詳しく説明された。

 これで国王の願いとは裏腹に、「R.C.」の話題が半世紀ぶりに再燃した。


 フェリーシアとリルネは、これらのニュースを車の中で見ていた。フェリーシアはリルネにすべてを話していた。リルネはニュースを見ても、フェリーシアに改めて聞くことはしなかった。


 コロントンの城に到着した。入口ではフォーエンが待っていた。

「お嬢様、リルネ様、お帰りなさいませ」

「ただいま、フォーエン。ずいぶんと久しぶりにあなたの顔を見るような気がするわ。お父様は、、どうしていらっしゃるかしら」

「はい、お嬢様、国王様は執務室にいらっしゃいます。国王もお嬢様をお待ちでございますよ」

 二人はフォーエンに案内されて執務室に向かった。

 

 執務室では国王が二人を待っていた。

「リルネ、大変な目にあったね。大丈夫だったかい」

 何事もなかったかのように、冷静に優しく話しかけてくる国王に、リルネは即座に返す言葉が見つからず、「はい」と作り笑いで答えた。

 国王は隣に立っているフェリーシアに近づき、娘の目をじっと見つめた。フェリーシアも静かに国王を見ている。国王は何の言葉も発さないままフェリーシアを抱き寄せた。

「フェリーシア、、私は、、できれば自分だけでこの問題を解決したかったんだよ。誰かを傷つけたり、不信に陥れたり、、、そんなこと、、これっぽっちも、望んでいなかった。でも、、事は、そんなささやかな私の望みを、木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった、、。今では、国家を揺るがす、、重大事にまで発展してしまった」

 国王はフェリーシアを抱きしめたまま、、話し続けた。

「私は、、、私は、国民に申し訳ない、、。だが、逃げずに私は真正面から受け止めるつもりだよ。隠遁者たちは国体を共和制に戻し、苛烈な自由競争の社会を再び作り出したいと画策している。しかし、その是非を決めるのは国民だ。私は今の国を守る立場で働く。もちろん今までしてきたことへの自負と自信がある。だから、負けない」

 国王はフェリーシアを腕からほどき、顔を見て言った。

「フェリーシア、、君の力が必要だ。このことはエッジスタートにも知らせる。本国の危機だからね。そして、、君に巡視チームを引っ張って行ってもらいたい」

 フェリーシアは力強い国王の言葉に、何の返答もしなかった。明らかに国王は、フェリーシアの同意を求めているのに、、ただ父親の顔を見ているだけだった。

 隣でそれを見ているリルネの方がいたたまれなくなってくる。フェリーシアは、、どうするつもりなのだろうか。


「私はこれから全国民に向けて会見を行うよ。こうなったからには皆の前に情報を開示し、まずは落ち着いてもらわなければいけない。そして、連邦政府として本格的に動き出す。君にも心の準備をしてもらいたい」

 フェリーシアは変わらず何も言わなかった。


「そうそう、リルネ、神仙峯から老師様が来ているんだよ。本来なら、私が紹介して引き合わせをしなければいけないのだが、ご覧の通り、私は会見の準備をしないといけないのでね、、フォーエンに案内をしてもらってくれるかい」

「はい、わかりました」

 ここでフェリーシアが初めて言葉を発した。

「お父様、私も一緒に老師様にご挨拶してもいいかしら。私は神仙峯の方々にまだ一度も会ったことがないと思うの」

「あ、そうだったか、、。ふむ、そうだね。君もこの機会に、挨拶をしたらいいね」

 国王はフェリーシアのしっかりとした声を聞け、少し安心したような面持ちだった。


 フェリーシアは悩んでいた。これから隠遁者たちと相対するにあたり、自分が期待されていることをひしひしと感じている。その期待には応えたい。しかしそれとは別に、リルネが神仙峯に関わることになぜか不安を感じている。自分の立場からすれば、どっちを優先すべきかは明らかだったが、彼女の中では踏ん切りがつかなかった。



 フェリーシアとリルネが去った後、執務室では国王を中心にミーティングが行われた。

 あと1時間もすれば建国以来はじめて、報道チャンネルだけでなく全チャンネルを使った国王の会見ライブが流される。

 ジムヨーク知事が捕まることによって、その実兄である国王への信頼はもちろん落ちているだろう。事件の全貌をある程度説明し、国王に対する国民の信頼をつなぎとめ、そして時代に逆行した動きを封じ込まなければならないのだ。みんな真剣であった。

 国王の会見放送まであと1時間を切った。



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