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18話 対決の序章

 そのままカフェに残っていたフェリーシアたち3人に、ウォルシュから連絡が入った。ランスがリングのパネルを立ち上げ、二人に見せた。


「『Mr』の事情聴取を午後イチで取りました。昼の休みを入れて始まりますので、昼食後に先ほどの巡視チーム室までお越しください。その時、マイクをヨハン様に装着いたします」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

 ヨハンは、そう返答した。


 3人は外に出てバーガーショップに入った。ヨハンの希望だった。それぞれバーガーとドリンクを注文すると空いている席に座り、無言で食べ始めた。


 ヨハンはこれから相対する『Mr』のことを考えていた。

 フェリーシアとランスは、彼が失敗した時のことを考えていた。フェリーシアは彼が『Mr』によって再び精神的苦痛を受けた場合、どう対処したらいいのか、どのタイミングでストップをかければいいのか、、そんなことを考え、ランスはヨハンの失敗で『Mr』が余計に居直り、供述が取れなくなった場合、次にどういう手を打てばよいか、、を考えていた。


 3人は食べ終わると、巡視チーム室へ戻った。

 部屋に入ると、ウォルシュがすぐに寄ってきた。

「お食事はされましたか?」

「ええ、済ませてきたわ」

 ウォルシュは手に持っていたコメ粒ほどの小さなマイクを見せた。そして、ヨハンのシャツの前合わせの裏に装着した。

「取調室にも、極小音まで拾えるレコーダーが回っています。音の重なりを避けるためのものですので、マイクのことは気にせず、ヨハン様は気を楽にしてください」

 ヨハンはうなづいた。

「それから『Mr』ですが、彼は広い取調室に移っています。隣の部屋は、取調室がミラー越しに見えるようになっています。まずそちらへ行かれて、『Mr』を一度ご覧になるのがよろしいかと思います」

「そうですね。わかりました」

「それでは、まいりましょう」

 そう言って、ウォルシュは3人を案内した。


 『Mr』の取り調べは別館で行われていた。近くまで行くと、前方に警官が立っているのが見える。4人は警官に軽く会釈をすると、その隣の部屋へと入って行った。

 ウォルシュが取調室側の壁に設置されているブラインドを上げると、確かに隣の部屋が丸ごと見えた。

「ご安心ください。向こうからはこの窓はただの壁です。ほかの壁面と見分けがつきません」

 3人は椅子に座っている人物を見た。

「あれが『Mr』ね」

「はい、そうです」


 『Mr』と呼ばれるその男は、どこにでもいそうな中肉中背の男だった。容姿が洗練されているわけでも、カリスマ性に溢れているわけでもなかった。横顔しか見えないので、まだ何とも言えないが、ただ狡猾そうな細い目は、横から見ていても不気味さを感じさせた。

 ヨハンは何も言わず『Mr』を見ていた。以前会った時のことを思い出しているのか、無表情のままだった。緊張するでも臆するでもなく、ただ淡々としていた。


「ヨハン様、ご覧のとおり部屋の中央にデスクを置き、『Mr』を座らせております。向かいの椅子がヨハン様のお使いになる椅子です。私はドア横にありますデスクに座ります。もし、ご用が生じましたら、すぐにお申し付けください。何かご不明な点はございますか」

 説明を聞きながらも、ヨハンは『Mr』から視線を外さなかった。

「いいえ、大丈夫です。行きましょう」

 ヨハンは踵を返した。


 フェリーシアもランスも不安だった。心臓の鼓動が早まり始めた。ヨハンは『Mr』と面と向って普通に会話ができるだろうか、『Mr』の好きなように振り回されはしないだろうか。


 ウォルシュとヨハンは待機室を出て、隣のドアの前にいる警官に合図を送った。そして、ドアの前に二人は立ち、ウォルシュがドアを開けた。

 ウォルシュとヨハンは部屋に入った。ウォルシュはそのままドアの横にある小さなデスクに、持っていたタブレットを置き座った。ヨハンは後ろ手にドアを閉めて、そのままそこに立っていた。





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