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1話 新大陸上陸

第三章が始まります。

楽しんでいただけると、嬉しいです。

 リルネは窓から外を眺めた。そこは一面の大海原だった。彼女の乗っている乗り物はすごいスピードで波をかき分け進んでいた。



 朝、リルネはいつものようにサロンでフェリーシアと朝食を取っていた。

「さあ、今日は出発ね。昨日説明したように、西の海まで河を下らないといけないから、食事が終わったら、荷物をまとめて宮殿横の船着き場へ行くわよ」

「海まではどれくらいかかるの?」

「そうね、、夕方前には着くでしょうね」

「そうか、、それからまた船に乗るのね、、。新大陸に着くまで、何日くらいかかるのかしら、、」

「すぐよ。ここから海まで下る方が時間がかかるわよ」

「へっ?」

「高速艇で出航するからすぐなのよ。新大陸の港にはその晩に着いてしまうわ。今日はそこでゆっくりして、明日、出発しましょうね」

「はぁ、、、」

 リルネは想像すらできなかった。もう、、フェリーシアにすべてを任せるしかない。


 そして今、新大陸に向かって高速艇に乗っているのだが、船というか卵を長細くしたような乗り物で、海上に船体を半分浮かせて、すごいスピードで前へ進んでいる。周りの景色はどこまでも海なので、それほど速度を感じないが、出航時の離岸の様子を見れば、途方もない速さで進んでいるのがわかる。

 前方には日没のきれいな夕焼けが空を覆っていた。


 フェリーシアに「そろそろ着くわよ」と起こされた。リルネは椅子に座って外を眺めていたが、いつの間にか眠っていたようだ。

 すっかり夜も更け外は暗いのだが、前方には、先ほど見た赤い夕焼けよりも強く鮮明な光の粒が見えている。近づくにつれ、それが街の明かりであり、建物の群れであることがわかった。高速艇はその光の中に入って行き、止まった。


「さあ、下りましょう」

 先ほどから無言になっているリルネを急かし、フェリーシアは開いたドアを出た。リルネがついて来るのを確認して、歩きだした。

 まずは帰国チェックをしないといけない。エスカレーターで上に上がると、専用ポートのデスクがある。リルネはきょとんとしながらも、ちゃんとついて来ていた。


「こんばんは、IDの確認とリングの返却をお願いできるかしら」

「おかえりなさいませ、フェリーシア様」

 デスクAIロボットは、フェリーシアの人体認証をすませると、腕輪のようなものを渡した。フェリーシアはリングを左腕にはめながら言った。

「この子は私の友人で国王のお客様なの。登録は王宮に行ってするわ」

「王宮での登録、承知しました」

「さあ、リルネ、お腹すいたでしょう。何か食べましょう」

 リルネはさっきから一言も言葉を発していない。理解することに全神経を集中させているようだ。フェリーシアとAIロボットとのやりとりをじっと見て、うなづいてフェリーシアの後を追った。


 フェリーシアはリルネを連れてそのままホテルに入った。部屋は一つだけにした。

「リルネ、お腹はすいていない? ここで食べることもできるし、下のレストランでも食べられるわよ。それとも、体を洗ってもう寝る?」

 リルネにフェリーシアの声が聞こえているのかいないのか、、壁にかかっている画面をじっと見ている。

「イーエルパネル、つけましょうか」

 フェリーシアは説明がてらパネルをオンにすると、ちょうどコマーシャルが流れていた。

 リルネは、微動だにせず、立ったままそれを見ている。

 フェリーシアは「失敗した」と思いながら、フロントに夕食の注文をした。



 翌朝、リルネは目を覚ますとすぐにベッドを起き上がり、横の大きな窓から外を眺めた。

 自分たちは目もくらむような高さにいた。はるか下は、きれいに木々が立ち並び、その周りに花が植えられ、芝が広がっている。前方を見ると高い建物がいくつか立っており、地面を歩く人もいれば、建物をつなぐ連絡橋を歩いている人もいる。


「おはよう、リルネ。よく眠れた?」

 隣で寝てたフェリーシアも目を覚ました。

「おはよう。私たち、ずいぶんと高いところにいるのね」

 リルネは、驚くことにだんだん慣れてきて、今や面白がっている。これが彼女の長所の一つだとフェリーシアは思う。適応能力が高く、それを楽しむことができる。こういう人がどこでも生きれる人なのだろうと思う。

「ええ、エレベーターで上がってきたから、わからなかったわね。さて、顔を洗って、下で朝食を取りましょう」


 1階のカフェテリアにはもうずいぶんと人がいて、皆、楽しそうに会話しながら食事をしていた。フェリーシアとリルネも窓際の空いた席に朝食を運んで来た。

 リルネはフェリーシアの真似をしてコーヒーを入れてきたが、思ったより苦かった。

「砂糖とクリームもあるわよ。あまり濃いようだったらミルクを入れたらいいわ」

 リルネは言われたものを全部を入れた。ちょっとバターぽかったけれど、それでもおいしかった。


 二人ともお皿を空にすると、コーヒーをお替りして一息ついた。

「ここは不思議なところね。きれいだし建物は大きいし、人は地面や橋を歩いて乗り物は空を走るのね」

 リルネは大きな窓から見える、空色の高架道を眺めて言った。

「そうね、、ここは旧大陸とは時代が違うから、、最初はびっくりするかもしれないけれど、きっとすぐ慣れるわ。ここの建物は石や木材でなく石灰岩かアルミニウム系のコンクリートを使っているの。あ、それから鉄ね。乗り物は車が多いかしらね、、。下を走ることもできるけれど、規則が煩わしいから大体上を走るのよ。ここはまだ港湾エリアだから、高架道も少ないし、人も建物もまばらだけど、中心部へ行くと、どちらも多いわよ」

「うわ~楽しみ!」

「お父様の所へ行く前に寄りたいところがあるから、車で行きましょうね」

「フェル、、あれを操作できるのね」

「車は全自動だから、誰でも運転できるわよ。基本的な知識さえあれば」

「そうなんだ~、じゃあ、私、馬の次は車ね!」

「あなたはどこでも楽しめるのね、、。いいことだわ。さあ、そろそろ行きましょうか」

 フェリーシアは笑いながら立ち上がった。


 二人はホテルから連絡橋を通って隣のビルディングに入った。そこはいろいろな事務所が入っており、人の行き来が多かった。建物の中央は吹き抜けになっており、屋上のガラス天井から明るい光が入ってきてフロアを照らしている。エスカレーターは中央に設置されていて、光の中を右に左へと上がって行く。いくつか上がっていくと高架道のインターが現れた。

 フェリーシアは案内板に腕のリングをかざし、反応したパネルに触れながら何やら入力した。すると後ろから車が一台出て来た。

「さあ、乗りましょう」

 フェリーシアが乗り込むと、同じようにリルネも助手席に乗り込んだ。フェリーシアはエンジンをかけ、ハンドルに手を置くと車が動き始めた。ビルディングから高架道に出ると、きれいでまっすぐな道が伸びていた。

 車はどんどんと加速し、リルネはまわりを見回した。後ろには大きな海が広がっている。昨日はわからなかった大きな貨物船やデラックス客船が並んでいた。自分たちの高速艇は専用の屋内ポートに入っていったので、下船時に人はいなかったが、今見ると、多種多様な重機が動いて物を運び、人々がちらほら見える。

下は住宅や公園、運動場があり、もっと遠くには小さな森も見える。その向こうに、またたくさんの高いビルディングがかすかに見えていた。

 高架道はビルの合間を抜けるように緩やかなカーブをとっている。高い建物が少なくなってくると、緑の牧草地が現れた。周囲にちらほらと家が見え、使われていない古い鉄塔が立っている。車は牧草地の上をまるで空を飛ぶように走っていた。




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