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6話 希望と不安

 リルネはフェリーシアに、新大陸にはいつ出発してもいいと告げていた。


 堤防まで乗馬をした日に二人で語り合ったことは、二人の人生が出会い、大きな流れとなってうねりだす出発の時となったのだが、二人にその自覚はまだない。しかし、深い絆を感じ始めていた。

 フェリーシアは希望と不安が半々、リルネはなぜだか大きな希望とたった少しの不安だった。


 夕食の後、アルフレットはお茶に二人を誘った。

「明日、新大陸に行く船が出る。リルネ、準備はもうできているかな」

「はい。もともと荷物もありませんし、フェルがついていてくれるので、安心して出発できます」

「そうか、それはよかった。二人が来てまだ二週間くらいしかたっていないが、新大陸への橋は月に1回しか、こちらからは開かないのでな」

「新大陸の方からはいつでも橋を架けられるのだけれど、こっちからは月一回だけ、向こうから架けてくれるのを待たなければならないのよ」

 何度も行き来しているフェリーシアが言った。

「橋を渡るのは歩いて渡るの?」

「いいえ、船でよ。新大陸は同じ時間軸でも海の向こうでしょ。移動しながらゲートをくぐると言った方が近いのかしら」

「そうだな。神仙峯の人々は橋を架けるというから我々もそう言っているが、実際は船で新大陸に向かう途中、時間軸を超えるゲートを知らないうちにくぐっているんだ。我々にはまったくそんな実感はないがな」

 リルネは不思議そうにお茶を飲んだ。


「そういえばその後、フレンクランや教皇の目立った動きはないのですか?」

 リルネは気になっていたことを聞いた。

「ああ、あの後、フレンクラン国王は国内のロッジの聞き取りを始めているらしい。しかし話が複数、それもあちこちであるらしく、まだ集約するには時間がかかるだろうな。教皇はフレンクラン国王に今のところ袖にされているよ。相手にされずで意気消沈といったところかな。まあ、こちらはトーボルクを押さえようとしているところだよ」

 リルネはアルフレットたちが歴史の方向修正のためにここに来ており、そして未来の見識と高い技術を持っていることを知った今となっては、ある疑問が湧いてくるのだった。

「エッジスタートに来て、あちこちを回り、人々とも接して、この国が先進的な国であることがよくわかりました。大陸列強のどの国にも負けない見識と技術を持っていることを知りました。そこで疑問に思ったのですが、例えばこの国の技術力で、戦争を起こす必要はありませんが、他の国々を軍事的に圧倒することもできると思うのです。大陸に平和をもたらすには、エッジスタートが大陸の覇権を握って、良き治世を築くことはできないのでしょうか?」

「そうだな。ただ目の前のことだけを思えば、そのような方法もあるであろう。しかし長い目で見ると、それでは何も解決されないのだよ」

 アルフレットはいい質問だと言わんばかりにニコリと笑って、お茶を飲んだ。


「力で支配された者は力で支配しようとする。良き治世下であっても、それが力で始まったものであれば、人々は次も力で何かを成そうとする。人は体験したことを繰り返すのだ。それは良くも悪くもだ。私は力でなく、人々の自分が幸せになりたいと思う意欲、それと同じくらい誰かを幸せにしたいと願う思い、それを土台にして国を治めたいのだ。だから芸術や技術、もしくは騎士鍛錬や勉学にいそしむ事、何でもよい、己が道を見つけ、そこに生きる意味を感じてほしい。それがゆくゆくは国力となる。

豊かな生活はもちろん、豊かな経済が国の基盤だ。それをわれらが形作っていけば、民たちはそれを片方の手で生きる糧として握りながら、もう一方の手で多くの可能性を掴む、ゆとりと活力ができる。消費が増え、産業が強靭になり、国力が増せば、それは良きスパイラルを生み出すだろう。もし国家に危機が訪れたとしても、皆が自然と団結し自分たちの国を守ろうとする精神も培われる。私はそんな国を作りたいのだ」

 アルフレットは何とも優しく、生き生きした表情でそう語った。


 リルネはアルフレットにこう言わしめる新大陸の世界にとても好感を持った。

 おじいさんとおばあさんが、そしてフェリーシアが、生まれ育った新大陸。明日には、そこに向けて出発する。

 今のリルネには、不安は限りなくゼロに近かった。





お読みいただき、ありがとうございました。

とうとう新大陸への出発となります。


第三章は、来月内にはスタートさせたいと思っています。

また、遊びに来て下さい。

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