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4話 アルフレットの注告

「エッジスタートは楽しんでくれているかな」

 久しぶりにアルフレット国王と一緒に夕食をとった。

「はい、フェルがあちこち案内してくれ、住民の方々も親切でやさしく、楽しく過ごしております」

「そうか、それはよかった。ところで、あとで私の書斎でお茶でもしないか。フェリーシアも一緒にのう、、」

「はい、わかりました」

 リルネはフェリーシアのうなづくのを確認して答えた。

 アルフレット国王はただお茶に誘うだけで、その理由までは言わなかった。


 フェリーシアと一緒に国王の書斎に入った。大きな応接テーブルにはすでにお茶が用意されてあった。

「さあ、座りなさい。夜分にすまんな。どうも日中は、あわただしくて落ち着かんのだ」

 改まって一体何の話をしようとしているのだろうか、、リルネには思い当たるところがない。

「あ、そうそう、先に言っておくと、新大陸に渡る日時はフェリーシアと二人で決めればよいぞ。別に急かすことでもないからのう」

「はい、わかりました。ご配慮ありがとうございます」

「さて、君が向こうに行く前に、伝えておきたいことがあるのだよ」

 リルネは、また何か来ると身構えた。


「君が行く新大陸は、ここより200年ほど進んでいる。ここからすれば未来になるな」

 えっ、、、リルネはぽかんとした。身構えた自分のはるか上をいっていた。

「旧大陸の人々からすると、私たちは200年ほど進んだ新大陸から来ているのだよ。もちろん君もね。どうしてそんなことが可能なのかというと、神仙峯の力なのだ」

 リルネは、まだぽかんとしている。

「神仙峯の聖職者たちは時間を越える橋を架けることができるのだ」

「あ、あの、、、ええと、、海を西に向かっていくと、、その、新大陸は、、今の時代にもあるのですか、、」

「ああ、あるよ。ただ、今の新大陸はこの旧大陸ほどまだ開けてはいない。向こうは向こうで独自の文明を持った人たちが生活している」

 ああ、なるほど、、だから未来か、、。

「すると、、、未来の新大陸を東に行くと、その時代の、、この旧大陸も、あるのですか、、」

「ああ、あるよ。今の、ここの200年後の姿でな」

「すると、、皆さんは、、二つの大陸を、時間を越えて行き来しているのですか、、」

「そういうことだ。よかった。理解が早くて。はっはっはっ」

 アルフレットは笑って、お茶を飲んでいる。


「神仙峯は聖人たちが集まっている土地でな、兄上の国だけでなく遠方からも詣で参りする聖地だ。そこの聖職者たちは大陸の平和を祈り、精誠を尽くしておられるわけだが、、。もう何年前になるかのう、、世界の趨勢が悪い方へ傾いていると言われて、「歪の橋」を架けられたのだよ。そして我々に、200年前の旧大陸に来て、ここの歴史を良き方向へ修正してほしいと言われたわけだ。新大陸は旧大陸から影響を大きく受けて発展していった。だから新大陸の歴史の流れを良くするには、旧大陸の歴史から変えないといけないというわけだ」

「ええ、、と、ちょっと、待ってください、、。歴史って、、歴史を変えると、、未来も変わってしまうことは、、ないのですか? 例えば、私たちの存在自体が、なくなるとか、、、」

「ああ、それはない。時間線が増えるだけだ。ただ、橋は1本しか掛けられない。理由はわからんが、、。君はどうせ神仙峯にいくのだから、そこで橋のことを詳しく聞いてみるとよい」

 リルネは、何だかすごいところへ行こうとしているように思えた。


「まあ、それで、新大陸の歴史の流れを良くするために、200年前の旧大陸に来て、ここの歴史を良き方向に修正しようとしているわけだね。何しろ我々の知る旧大陸は、これから先、大きな戦争を数回行って多くの戦死者を出し、その後資本主義というのを発達させるが、これもまた経済格差と自然破壊を増やして、不和や対立を激化させていく。その歴史の流れへ速度を速めたのが、この時代なのだよ」

 なるほど、、。理屈では理解できたとリルネは思う。気持ちはついて行っていない、、。

「新大陸の今を良くするには、旧大陸の今が、キーポイント、、ということなんですね」

「そうだ。そういうことだ」



 リルネは部屋に戻ってからも、さっきのアルフレット国王の話が頭から離れなかった。おじいさんもおばあさんも未来の新大陸から来た人、、そして自分も。また、今自分は、そこへ里帰りしようとしている、、。

 そういえばこの数日間、エンブルを回ったが、この短い間だけでも、他の国では感じられない先進性や洗練さを感じていた。大国のフレンクランやサックセンの首都では見られない姿だった。それは未来の人々がこの時代に作った国だからと考えれば、何となく納得もいく。


 ここに来てから、驚かされることばかりだ。リルネもだんだんと耐性ができてきた。これは考えてもしかたないことで、そういうものとそのまま受け入れ、そう理解するしかないのだ。

 リルネは、それについてもう考えるのをやめた。そして眠りについた。



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