3話 外街と内街
翌朝、二人は王宮のサロンで朝食を取った。
リルネがサロンに入った時には、フェリーシアはすでに朝食を終え、紅茶を飲みながら、タブロイド紙を広げていた。テーブルにはいくつかのパンフレットが置かれている。
「おはよう、リルネ。よく眠れた?」
「ええ、どうにかね、、。昨日一日で一気に年を取ったような気分、、」
「そうね、、。初めて聞くことばかりだったものね」
マリーネが朝食を運んできた。リルネがゆっくりとパンをちぎって口に入れるのを見ながら、フェリーシアは言った。
「今日は、のんびり、街歩きでもしましょうか。ぶらりと」
城壁内はまだどこか宮殿内を歩いているようだった。フェリーシアを見ると皆会釈する。朝の時間で、これから皆それぞれの仕事場へと向かっているようだ。規律正しく歩く姿は、それぞれに国の中枢に関わっているという気概や意欲が感じられる。
皆、庁舎や学校、ギルド街などにそれぞれ向かっているようだ。
「首からカードをぶら下げている人がいるでしょう。あの人たちは新人さんだったり、城壁外から通っていたりする人たちなの。城壁内に入るには身分証カードが必要で、城門でチェックされるのよ」
「へえ~、厳しいのね」
「ギルド街が中にあるから、特にね。そうでなくても、ここは政治の中心地でもあるから、チェックは厳重なのよ」
子どもたちもわいわいしながら学校へ通っている。
「ここで生活していている子供たちは、だいたい城壁内の学校に通っているわね。たまに城壁外の学校に通っている子もいるみたいだけど。でも、城壁外の子供たちは城壁内の学校には基本通えないのよ」
「それって、なんか不便そうね」
「そうね、、どうなのかしら。このまま城壁を越えて外に出ればわかるけれど、外街の方が活気があって、遊ぶところも多いのよ。だからここの人たちもよく外街へ遊びにいくわ。外街の人も身分証カードを見せれば入って来れるけど、内街は仕事が中心の街だから、遊ぶ施設もあまりないのよ。外街の子どもたちが学校行事で見学に来るようなところだから、別に好き好んで内街に遊びに来る人はあまりいないわね」
城壁まで来ると、門衛に挨拶をして外に出た。
がらっと空気が変わった。外は賑やかで活気があった。馬車から見た時より人々の息遣いが伝わってきて、よりエネルギッシュに感じられた。フレンクランやサックセンの首都のように往来も盛んだが、乞食や酔っ払いが見当たらなかった。
少し歩いていくと、道の中央に噴水が現れた。周りのベンチには画材を広げ、絵を描いている人々がいる。反対側からはバイオリンの音色が響いており、人々が群がっている。
「うわ、何かすてき。絵本の町みたい」
リルネは思わず子どもっぽいことを言ったと思ったが、実際、絵本の挿絵がそのまま出てきたような光景だった。
「あら、あそこで、何か配っているわね。何かしら」
フェリーシアの言った方へ歩いていくと、そこはパン屋で店の前で何やら声を張り上げている。
「さあさあ、お客さん、これが今週の新作パンだ! 午前の1時間はサービスだから味見して行っておくれ。食べたら必ず、私に感想を言っていくんだよ。さあ、召し上がれ!」
リルネはこんな光景を初めて見た。
「パン屋さんが新メニュー披露に、無料でパンを配って宣伝しているのね。おもしろい!」
「エンブルは2、3か月に1回は何かしらのお祭りがあるから、人の流れが多いのよ。食べ物に関しては、ずっといてもきっと飽きないわよ。太るかもしれないけど」
少し歩くだけでも、活力みなぎる街であることがわかる。コンサートホールや大学などがある場所は、またその色合いをまとった賑わいがあるんだろうと思うと、わくわくしてくる。
「お祭りが2、3か月に1度あるって、多くない? どんだけ祭好きなのか、、、」
「祭好きというより、行事がおおいのよ。製鉄ギルドの新作お披露目会みたいなお祭りもあるわよ。今は大親方が10人いるから、10組の工房グループが自分たちの組の、新作道具や剣、発明品なんかを披露して競うのよ。おもしろいわよ」
「へえ~、ギルド街にも行ってみたいな」
「ええ、今度案内するわね」
夕方、馬車で宮殿まで戻ってきた。
「オーケストラの生演奏って最高ね! 音に包まれるってああいうことを言うのね、、ああ、今日は興奮して眠れないかもしれない!」
「喜んでもらえてよかったわ。今日は近場しか行けなかったけど、まだまだエンブルは広いわよ」
「大祝祭を楽しめなくても、ここでお祭り一つ参加したら、それでチャラになりそうね」
リルネは山間の村から出てきて、初めて新しい国や都市を満喫していた。




