表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/126

0話 フェリーシア

 幼い頃、絵本が好きでよく読んでいた。ある日、白馬の王子の童話を読んでいると、急に胸の奥からなつかしさが込み上げてきた。幼いフェリーシアには何が起きたのかよくわからなかったが、ただ、なつかしい人のいるらしいことがわかった。そしてその人に会いたいと思った。

 名前も顔もわからない。だから探しようもない。月日が経てばそれは消えていくのだろうと思った。しかし、それは消えることも色褪せることもなく、フェリーシアの心の中にずっと残っていた。


 物事の分別がつく年齢になると、彼女は誰だかわからないその人を探すようになった。新大陸のあちこちを回ってみたが、それらしき人は見当たらなかった。

 思い切って旧大陸に来てみた。旧大陸では旅という形でしか各地を回ることができないから、靄の中を歩いているようだった。

 自分はいったい何をしているのだろうかと思うこともあったが、そんな時、彼女を迎えに東の山岳地帯へ行くことになった。


 彼女に会った時、突然、あの幼い時に感じたなつかしさが込み上げてきた。その場は自分の感情を押さえて、すぐに気持ちを切り替えたが、その晩は一睡もできなかった。自分の探していた人は彼女に違いないと思った。

 しかしびっくりした。こんなところで出会うなんて、、それも女の子だったなんて。



 2ヶ月後、彼女は私に言った。

「私は嬉しい。本当に嬉しい。きっと、これは違う世界じゃない。見ている方向が違うだけ。背中をくっつけていれば私たちは一緒だよ。そしてそれはきっと同じ世界だよ」

 彼女は私の手を取った。手と手を合わせてしっかりと指を組み合わせた。私の心の中の憂鬱が溶けて消えていくようだった。彼女はまぶしくて、温かくて、つないだ手を離したくないと思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ