正気を疑うね
タイトルが好き。
浮かべた小舟が沈むのを待つように
水かさを増す楕円に 揺れる月を愛でていた
船底を穿つ悲壮の槍が早いか
北天の柄杓が汲み出すが早いかで
潰えた欲望もあるもんさって
夢見人の物言いに貌を顰ませたけれど
正気を疑うね 明日を疑うな
悪趣味な雅を隠した屏風が倒されて
目論見が露呈しても
手持ちの駒では埋め尽くせぬだけの
枡目は残されてるさ 試す価値はある
結んだ朱の緒を風が喰む儘にして
静けさを問う寡黙が 欠けた月を悼んでた
鈍色の鋏を閉じる指が早いか
歳月の咀嚼が断ち切るが早いかで
ほつれを待てないの窘めたって
世捨人の物憂いは貌を歪ませたけれど
正気を疑うね おのれを疑うな
身勝手な都合で描いた屏風が破られて
謀 頓挫しても
巻かれた糸では縫い合わせきれねば
裂け目を塞ぐことなど 試す価値もなく
こんな、渋いのもっと描きたい。