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怪盗は盗んだ宝と恋をする  作者: 野良猫氏
地下街の魔術師編
1/42

プロローグ

 この世界は、ゴミで溢れている。

 例えば、街。人間が鉄屑で作った建物。人間が勝手に生み出して、路上に捨てたガラクタ。

 例えば、宝石、絵画。これらも、人間の作ったゴミだ。

 それらを飾って、眺めて楽しむ変わった人間がいるから、ゴミは増える一方だ。

 例えば、命。人間の命は無価値に等しい。彼らは、世界の破壊者だ。

 そんな生物に生まれたことに腹が立つ。


 俺は、ゆっくりと顔を上げた。

 現在、博物館と呼ばれる場所にいる。


 この世界は、ゴミで溢れている。

 そんなゴミを盗んで、然るべき場所で処分する。それのどこが悪いのか?

 俺は、世間様からはこう呼ばれていた。


 “怪盗捨て猫”、と。


 どういう意味があるのかわからない。

 とある雑誌の記者が命名したらしい、ということくらいしか知らない。

 どうやら、猫のように音も立たずに侵入する不気味さ、警備員を回避する危機回避能力や運動神経の良さを猫と例えたらしい。

 まさに、ゴミ共にふさわしい例え方だ。

 そして、盗んだゴミを廃棄すること、世間様から見放されていることから“捨て”猫。


 俺は、目当てのものを前にしてため息をつく。


 今回に関しては、ゴミ廃棄のための盗みではなかった。


 “神の涙”と呼ばれる宝石の奪取を、とある組織から依頼されたのだ。

 一魔術師としては、魔素の源である神のものがゴミと同列に並べられていることが許せなかったので、胡散臭いと感じながらも、その依頼を引き受けたのだが。


 “神の涙”………。想像以上に多くの魔力を含んでいるらしい。

 俺は、盗みに特化した魔術師だ。

 足音を立てない、高い身体能力、鍵開け(ピッキング)スキルなどは、素の能力だ。

 では、俺の能力は何か?


 それは、〈能力解除(スキルキャンセル)〉である。


 人間誰もが、魔術を使えるわけではない。

 生まれつきの運と、神様に愛されたか否かで全てが決まる。

 能力の強さも、神の祝福に比例する。

 俺は、自分以外の魔術師については詳しくないが、〈能力解除〉は強くもなく、弱くもない能力だと考えている。

 常に発動しているわけではないので、不意打ちに弱く、肉体的補正も働かないので運動音痴なら宝の持ち腐れ……それこそ、ゴミのような能力になっていただろう。

 俺は、神様に会ったことはないが、スラム育ちとしては愛されて良かったの一言だろう。

 この能力さえ有れば、ハッキング無しで警備機能を停止させ、防犯カメラに映ることも、警報音を鳴らすこともなく、物を盗むことができるのだから。


 しかし、手袋だけはつけている。指紋はどうしようもないからだ。魔術が科学に勝てないことは多々あるが、俺は不便と感じたことはない。

 なぜなら、科学は万能ではない。

 しかし、神は万能である。人によっては、科学ではできないことを成し遂げる。

 例えば、死者の蘇生。それは、世界において禁忌とされている。しかし、その魔術を与えたのは、神。つまり、その魔術を使えるということは神から使用の許可が降りたに等しいのだ。

 世界中の魔術師が、喉から手が出る程欲しい能力に違いない。

 俺にとっては、どうでもいいことだが。


 さて。

 “神の涙”も盗ったし、とんずらするか。


 俺は、その博物館を後にした。


   ○○○


 その少女は、一千年も昔からそこにいた。

 音も、光も、何も無い虚無の中で、確かに生きていた。


 少女は、重罪を犯したわけではなかった。

 神に祝福された“神子”として、生まれただけだった。


 しかし、能力は人々を狂わせた。

 少女の強大な力は人々を戦争の渦へと巻き込んだ。

 多くに人が死んだ。多くの人が、少女に助けを求めた。


 少女は断らなかった。

 その結果、敵の魔術師に封印された。

 魔術師は、その能力の危険さを少女に伝えた。いかにそれが神からの祝福であっても、無闇に使うことは許されないのだと。


 少女は、殺されることを望んだ。

 しかし、魔術師はそれを良しとはしなかった。それどころか、少女が死なないように、期日まで鎖で縛り上げた。

 魔術師もまた、少女の能力によって歪んでいたのだ。


 そして少女は封印される。

 眠ることも、話すこともできない闇の中で、ただ一人。一縷の希望を望んでいた。


   ○○○


「さてと、後は期日までこれを持っていればいいわけだが」


 俺は“神の涙”をどこに保管するのか悩んでいた。


 俺が住んでいるのは、北大陸一の街であるシャンカラである。

 科学もそれなりに発展しており、電気や上下水道も完璧に整備されている。

 そんなシャンカラの地下街に俺は住んでいた。

 地下街は不良や金のない年寄りが多く住み着いているが、それ以上に魔術師が多い。

 もっとも、シャンカラの地下街に住んでいる魔術師は俺を含めて片手で数える程度しかいない。

 俺達は、定期的に情報交換をする程度には面識があり、協力関係を築けていた。


 しかし、“神の涙”の存在を伝えられるほど、お互いに信用し合っているわけではない。

 俺は、ため息をついて小箱にしまう。

 これをベッド裏にでも隠せばバレないだろう。


 念のため、と“神の涙”を入れた小箱に〈能力解除(スキルキャンセル)〉を使った。


 誰も予想できないだろう? まさか、“神の涙”に裸の少女が入っているなんて。

 

 俺は、すぐに一日中暇であろう女魔術師に電話をかけた。


『なんだい? そっちから連絡なんて明日は大雪だな』


 明らかにタバコを吸っている。

 機械をいじりながらタバコを吸うなといつもなら注意するところだが、それどころではない。


「お前、女ものの服を持ってきてくれないか? 俺の家まですぐに」

『ああ? 女でも妊娠させたのか? 全く、相手は………風月(ふうげつ)だろ』

「馬鹿なこと言ってないで早く来い!」


 知り合いの魔術師の名前を出してきた相手に俺は怒鳴る。


『やれやれ、それが人にものを頼む態度かね……。もちろん、冗談だとも。すぐに行くよ』


 妙に頼もしい声の主は電話を切った。

 俺はため息をついて、気を失っている少女に毛布をかけたのだった。


   ○○○


「………大賢者の封印が解かれた」

「なんだと!?」

「あれは、絶対に解けないのではなかったのか!」


 聖教会本部。

 司教達は突然開かれた会議にて、その事実を知った。


 世界を救った魔術師“大賢者”オーリィ・マクスウェルは、世界中を戦争の渦へと巻き込んだ“大天災”ローリエの封印に成功した。

 本人談にて、ローリエは殺傷をも上回る魔術を有していたらしい。“大天災”の能力を知る者は、歴史を振り返っても、両の手で数える程度しかいないとされる。

 オーリィはその内の一人だったわけだ。


 “大天災”を封印した“神の涙”は長い時を経て科学側へと渡り、魔術の世界からは忘れさられていた。

 もちろん、封印は科学技術では解けるわけないので、聖教会も放置していたのだが。


「どうやら、“怪盗捨て猫”が盗んだものと思われており……」


 司教達は首を傾げる。

 そんな人間は聞いたことがなかった。


「北大陸で活動している盗人です。知名度はそこまでではありません。しかし、一部では魔術師と噂されております」

「能力は?」

「………不明です。“捨て猫”に戦いを挑んだ魔術師は全て死んでおり、詳細は不明。メディアも、“捨て猫”の不思議な力(まじゅつ)については語っておりません」


 司教達はため息をついた。

 上手く隠蔽されているようだ。


「これも噂なのですが、情報の隠蔽には“北の情報屋”が絡んでいる、と」


 “北の情報屋”は、北大陸の裏社会に潜む凄腕の情報屋のことである。

 姿を見せずに情報を渡す手腕は、この中央大陸の聖教会暗部ですら舌を巻くとか巻かないとか。

 一部では元は暗部に所属していたエージェントと言われており、教会も手を焼いている人物であった。


「そんな奴らに、封印が解かれたと?」


 これで北の勢力が一気に高まる。

 “大天災”の魔術についてはわからないが、北の魔術師共が勢い付くのは目に見えている。

 今もっとも警戒すべきは、やはり“怪盗捨て猫”か。


「それなのですが」

「まだあるのか?」

「はい。何せ一千年も昔の術なので自然に封印が解けたのではないか、と。“怪盗捨て猫”も、人間の作った宝石や絵画を盗むだけのただの盗人なので、“神の涙”は盗んでおらず、メディアの早とちりの可能性が高い、と」

「ふん、北大陸の奴らは田舎者だからな、金になる話にしたかったのだろう」

「つまり、“神の涙”を盗んだ人物は別にいる、と?」

「はい」


 司教達は顔を見合わせる。


 “大天災”がどんな者かは知らない。

 ならば、まずは盗人を捕まえて詳しい話を吐かせるべきだ。


「よし。では、聖騎士(パラディン)数名を北大陸へ向かわせよ!」

ノリで描き始めた作品なので、変なところがあったらごめんなさい。

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