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エッセイ

暴走族から金を巻き上げる

作者: 七宝

 よぅ、オレは暴走族の雑古(ざこ) (すぎる)ってんだ! 今日はオレのナイトルーティンを紹介するぜ!


 みんな仕事や学校が終わって家に帰ってから寝るまで何やってる? オレは暴走一択だね。悪い仲間とつるんで、大人数でブンブン住宅街を走り回る。大人数だから怖いもんなしよ。2月の真夜中でも走り回っちゃうぜ。なんたってオレたちゃ暇人だからな!


 こうやってバイクに乗ってだな、ブロロ⋯⋯と走るわけよ。1人の時はあんまりでかい音出せないんだよな。人が来たら怖いから。


 んで仲間たちの所に着いたらブンブン鳴らすわけよ。5人以上いれば気が大きくなるからな。オレたちの暴走はどれだけ人を集められるかが鍵なんだ。少人数だとオレを含め全員弱いから、強いやつが来たら逃げるしかねぇ。


 でも、20人とか居ればさすがに勝てるっしょ! そういう考えで大人数で暴走してまーす!


 基本的に22時から翌日の2時頃まで走ってるんだがよ。これが楽しいのよ。まずみんな寝てる時間だから道が空いてんのね。んで寝てる時間だからこそブンブン大音量で鳴らすんよ。ああ、みんなに迷惑かけてるオレカッケェ〜。普通の人が出来ないこと出来るオレカッケェ〜。


 たまにマジで怒鳴りに来る奴がいるんだがな、そういう奴は危ないから逃げるに限る。「俺は朝5時に起きないと仕事に間に合わないんだぞ!」なんて言ってらあ。おまえの都合なんか知るかよ。


 みたいな暴走族を今朝ついに1人捕まえた。今朝って言っても夜中だけど。私は毎週月曜の夜中から数時間、家の近くの大通りを張っていたのだ。金曜よりなぜか月曜の夜の方が多いのだ。なぜわざわざこんなことをするのかというと、こいつらのせいで眠れないからだ。


 夜中にブンブンブリブリと走り回り、私の安眠を(さまた)げるのだ。しかも一夜につき1度ではない。この(あた)りを何周も回っているのだ。以前私はこれに対し鬼のような顔で布団の中で憤怒していた。


 やがてその怒りは溢れ、2ヶ月近く前に実行に移した。おもちゃのナイフと石を持ってその大通りに立つことにしたのだ。(たまに座ってたけど)


 そしてやっと! やっと! 捕まえたのだ! 新鮮な人間の小僧を1匹捕まえることが出来た!

 私は嬉しかった。それはそれは喜んだ。私がこの行動に至ったのにはもう1つ理由(わけ)がある。金が欲しかったのだ。普段弱そうなおじさんからカツアゲしているような悪い奴なら、傷つけて金を巻き上げてもかまわないと思ったのだ。


 私はその時歩道から大声で叫びながら暴走族に石を投げた。今思えばこれも近所迷惑だったかもしれない。だが正義のためには仕方のないことだった。


 私が投げた7つの石は全て暴走族に命中し、そのうちの1人が転倒したのだが、誰もそいつを助けようともせず、そのまま走り去っていった。恐らく今日は2周目は来ないだろう。


「大丈夫か? 立てるか?」


 その小僧に私は声をかけた。


「え、あ、はい⋯⋯」


 怪我はなかったようで、小僧はすぐに立ち上がった。夜中の1時とはいえ、こんな大通りでバイクを置いておく訳にもいかないので、私は小僧を狭い道に誘導した。


 そこでおもちゃのナイフを取り出し、小僧に突きつけた。それを見た小僧は腰を抜かし、尻もちをついた。


「お前ら人に迷惑かけてる自覚あるか?」


「は、はい、あります!」


 私の質問にハキハキと答える小僧。STAP細胞みたいだな。やはり人に迷惑をかけている自覚があるようだ。さすがにそこまでバカではないよな。


「俺はお前らのせいでいつも眠れなくてな、ついに会社を辞めちまったよ(本当は別の理由)」


「え⋯⋯すみません」


 大人しくなり、目に涙を溜め始める小僧。謝って済むなら警察は要らねぇよ。まあ、今日は私がやるからどの道警察は要らないが。そういえば私の地域に警察はいないのか? 暴走族がまったく居なくならないのはなぜなんだ? もしかして暴走族って合法なの?


「金出したら許してやるよ」


「そ、そんな⋯⋯」


「じゃあ死ぬか」


 私は仕事を辞めてから遊んでばかりいたせいで本当にお金がないのだ。こうしてめちゃくちゃな頻度で小説を書いているのも、遊ぶ金がなくなったからに他ならない。本当は遊ぶはずの時間をこれに充てているのだ。


「分かりました⋯⋯」


 小僧は財布からポケットを取り出した。あ、逆やん。そして、その中から1000円札を4枚取り出した。


「お前、こんだけか」


「はい」


 悪い奴ならもっと持ってると思ったが、そうでもないんだな。いや、逆になんでこんな時間に金持ち歩いてるんだ? コンビニで何か買うつもりだったのか? そうか、夜中はコンビニしか開いてないからこいつらはたむろしてるのか。


「もう2度とやるなよ。他の奴らにも言っとけよ。次見つけたら全員殺すからな」


「分かりました! ありがとうございました!」


 なんでお礼を言ったのか分からないが、こうして小僧はバイクで帰っていった。


 正直4000円では全然満足していなかったのだが、悪人だからといってあまりいじめるのも心が痛むのだ。群れている時は憎たらしいが、1人になるとまるで子犬のようなのだ。


 それにしても、こういうのって犯罪になったりするんだろうか。次見つけて全員殺したら怒られたりするんだろうか。でも、いったい誰にそんな資格があるんだ? そいつらの親か? そいつらの親は子供が夜中に爆音でバイクを走らせているのを知らないのか?


 翌朝私は4000円を握りしめ、パチンコ屋へ向かった。これが全財産なので0.5パチしか打てないが、4パチ換算で32000円分あるのだ、十分当てられるだろう。


 そう思っていた時期が僕にもありました。はい、ストレート負けですよ。また大通りの歩道に立ってなきゃいけないなぁ。あいつら来なかったら困るなぁ。来てくれよぉ⋯⋯

 さて小僧は今頃何をしているのでしょうか。あれから普通に学校に行ったのでしょうか。親や警察には言ったのでしょうかね。暴走してたら紳士にカツアゲされましたって言ったのかな。言えるわけないか。


 というわけでね、これを読んでる暴走族のみんな! 世の中いろんな人がいるから気をつけた方がいいよ! 数が多ければOKなんて考えはもう捨てな! 安全運転が1番よ!


 


 テャハ!(´∀`*)

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