焦りと不安
私が目を覚ましたのは携帯のアラームが鳴り出してすぐの事、時間を見ると一八時になっていました。
「艦長、おはようございます」
「おはよう。って、夜なのに変な感じだね」
千沙ちゃんはすでに起きていたようで布団を畳み、制服に着替え終えていました。
「起きるの早いけど大丈夫?」
「え?そうですか?」
私も千沙ちゃんに遅れないように部屋を整えて制服に着替えました。
「でもそうですね。八丈島に行くのが初めてなので楽しみで…」
「そっか、くれぐれも無理はしないでね」
千沙ちゃんは初めての場所への期待があるようで嬉しそうに話をしてくれました。
「部屋の外も賑わってきましたね」
「うん」
一九時になり、夜交代のために起き始めている人や八丈島にあと少しで着くと知り、起き出す人たちで廊下の声が大きく聞こえてきました。
『ボンボン』
「艦長、緊急事態です」
部屋の金属製の扉にノックの音が響き、次に聞こえてきたのはマチちゃんの焦った声でした。
「どうしたの?」
「学校から東雲さんの端末って電子端末に緊急メールが届いたと」
「ありがとう。マチちゃん」
「いいえ。私は東雲さんから聞いた話を伝えただけなので」
マチちゃんは目を擦って、起きようと頑張っていました。
「千沙ちゃんも必要みたいだから着いてきて」
「分かりました」
「私も向かいます」
マチちゃんはようやく目が覚めたのか、いつもの厳しそうな目になっていました。
「お待たせ!状況は?」
私たちが急いで司令室に向かうと美岬ちゃんと凛ちゃんが深刻そうに話し合っていました。
「西之島の沖合から海底火山が隆起しており、新たな島を形成し、以前から活性化していた火山とともに黒い噴煙を出しているそうです」
美岬ちゃんも急な出来事で焦っていながらも私たちに正確な状況を伝えようとしてくれていました。
「父島の被害は?」
「噴煙と風向きからも被害があるようで、すでに噴石と火山灰が降っていると」
私も学校から来たメールを確認して被害の状況を把握しました。
「一番近い船はどこか分かる?」
「父島沖合に比叡が停泊しているそうです」
「比叡…鎖霧ちゃん…」
私は行きたいのを我慢して、冷静に今できることを考えました。
「私たちは予定通り八丈島に行き、非常用補給物資を積みます」
「艦長…」
マチちゃんは私の方を見て、辛そうな表情をしていました。
「急いで行きたい…けど。行っても何もできないから」
「被害状況が更新され次第、報告していきます」
「お願いね。美岬ちゃん」
美岬ちゃんは深く頷き、電子端末を手早く動かしました。
「八丈島まで距離はあと少しだから積み込む物を確認しておこう」
「はい」
積荷の中から非常用に使われる補給物資を十分に普及できるのか確認をしていきました。
「艦長、西之島の状況が更新しました。映像もあります」
「これはヘリね」
映像には、赤くなった地面と欠けた山、煙を上げた海様子が映っていた。
「これは船、近づけないわよ」
「確かに。このままだったら父島沖合の海面も形を変えてしまう恐れもあるし、火山性地震…火山性津波も…」
千沙ちゃんはこれ以上の可能性を出し続け、深刻そうな顔を浮かべていました。
「久方さん!憶測はやめなさい。根拠のない考えは思考を鈍らせるし、周囲を惑わせてしまうわよ」
「ご…ごめんなさい。今、出来ることを考えるね。潮原さん」
マチちゃんは千沙ちゃんに強く叱り、冷静に対処しようと動いてくれていました。
「マチちゃん」
「何ですか?」
「ありがとう」
「か…揶揄わないで、業務に集中して下さい」
私が笑顔を向けて感謝をすると、そっぽを向いて怒りました。
艦内が慌ただしく動く中、司令室からは八丈島が見えてきた。
「ここからは時間との勝負だね」
「はい…」
マチちゃんは早くすることが大切だと分かっていながらも複雑そうにしていました。
「何か不安があるの?」
マチちゃんの不安を少しでも取ろうと聞いてみると困った顔で言い淀みました。
「えっと。私たちがこんな時に早くできた試しがないので心配で…」
マチちゃんは千沙以上にネガティブな発言で場の空気を凍らせました。
「た…確かに遅いけど!私たちは八丈島に必ず行くよ」
「は…はい!」
事実が痛く刺さりましたが、それよりも先のことを考えることでいっぱいになっていました。
「見えた!八丈島」




