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マリンガールズ〜思いを乗せた方舟〜  作者: ハナビ
航海実習
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目指す場所と問題

翌日。私たちが起きたのは六時三〇分でした。

それぞれの部屋で出航に向けた準備がされており、確認が終わり次第、出航することになりました。

「艦長、食料は異常ありません。」

昨日のうちに積み込みが行われた食料は不足分を含めて異常がないようで、給養員のみんなから報告がきました。

「ネズミはテイトクに任せていますので、被害も減るかと…」

「それなら安心だね」

「艦長。ご確認を」

私が食料の確認をしていると、美岬ちゃんが確認済みの補給物資をまとめたリストを見せてくれました。

「ありがとう、美岬ちゃん。あとは薬関係とトイレットペーパーだね」

「非常時を含めて多めに準備されているので、安心かと」

私が心配な表情で見ていたので、美岬ちゃんは察して言いました。

「それじゃあ、大丈夫だね」

「はい」

私たちは出航の準備ができたため、航海経路の確認を始めました。

「ここからだけどどこへ向かう?」

「艦長。しっかりして下さい!」

最終目的地が決まっているものの初日のゴタゴタで決めていなかった途中の停泊地を決めることにしました。

「艦長、私たちは現在においても他の船より遅れていることを忘れないでください!なので最短ルートを向かうことが大切なります」

マチちゃんは初日と同じように机に広げた地図を指して動かしました。

「私の考えと致しまして、次に向かう場所として父島を目指すべきだと思います」

「今までは日本列島のプレートに沿って流れている波に進んでいたお陰で進むことが楽になりましたが、この先は太平洋の波に逆らいながら進むことになると考えます。それに私たちは素人です。慎重に向かうことが早く向かう手段かと…」

美岬ちゃんはリアルタイムで変わっている海流のデータを手にマチちゃんの意見を否定的な意見を言いました。

「それに今は黒潮大蛇行があります。流れが変わっていることもありますのでイレギュラーが発生する恐れもあります」

「だけど…」

黒潮大蛇行。30年以上前、紀伊半島沖の海底で湧き出た水が強くなったことにより、起きた潮流変化をそう呼んでいました。

さらに20年ほど前に起きた南海トラフ地震後。海洋の歪みによって形が変わった海流変化の影響により、今まで以上に異常な流れとなった黒潮は潮流データを見るサイトによって、データがバラバラになってしまい、確かな情報が未だに確立できていません。

「危険を犯すのはアクアマーメイドを目指すものとしてダメだよ」

「確かに…」

マチちゃんは美岬ちゃんの言葉に神妙な面持ちで返事をしました。

「だけど私たちが遅いことには変わりないし、打開策を考えないと…」

私は二人の雰囲気が妙に怖くなったため、間を取れる案を考えました。

「蛇行の影響があるのは御蔵島と三宅島の間の潮流が強いみたいだね」

「ええ。潮の速度は秒速八〇メートル程。房総半島に沿って波が強く集まっているみたい」

季節の変わり目で天候も変化しそうな状況でもあるため、潮だけでなく天候の変化にも注意する必要がありました。

「八丈島まで向かうのはどうでしょう」

「どうって…」

伊豆大島から出港した場合、約一七〇キロ。単純な移動時間として一一時間程かかる距離と言うこともあり、不可能ではないと感じました。

「三宅島を越してその先…時間も一一時間だけど」

「航海のプロがスムーズに行った場合だからそれ以上はかかると考えて良い。むしろ今までが出来過ぎている」

氷華ちゃんは言いにくそうな言葉をはっきりと言って他の人にも伝えました。

「確かに…改めて考えてみても今までが異常ね…。距離が間に合う以前に遅刻しているものね…」

マチちゃんは自分で出した目標が大き過ぎたことに気がついて私の意見を考えました。

「艦長、私の意見だけど不可能ではないって言える。だけどこの計画には当直の人たちにも念入りに伝達が必要になります」

「そうだね…」

私は昨夜の当直担当の人たちと情報共有をしていなかったことを思い出しました。

「艦長、私も手伝います」

「良いの?」

私はマチちゃんからあまり良く思われていないと思っていたため、協力してくれることに嬉しくなりました。

「私だって、良い提案には協力するわよ!」

マチちゃんは拗ねた表情で言いました。マチちゃんは案外分かりやすい性格かもしれないと感じました。

「何よ!」

「何でもありません。お願いしますね!」

私はマチちゃんと協力して、八丈島へ向かうことしました。

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