長くて暑い行事
時刻は八時五〇分となり、多くの生徒が静かになり出し、大人の方々も忙しそうに動き出していました。
静まり返った体育館は、刻々と時間が過ぎていき、席に座る生徒は、席で待機していました。待っていると後では、生徒の親御さんが入ってきており、椅子を座る音が鳴り響いていました。
入学式が始まるまでの一〇分間。多くの人が時計や携帯電話を見つめていました。
小さな子の鳴き声が聞こえると笑いも出ており、外へ向かう人も何名が見られました。先程より時間経過が長く感じたものの入学式が始まる前は、こんな感じと思いながら一〇分間を待っていました。時刻が八時五五分を過ぎると、女性先生がマイクの調整を始めました。音量を確認が終わると一度お辞儀をして声を出しました。
「一同。起立。礼。開式の言葉。」
女性が言うともう一名の女性が席から立ち上がり、マイクの前に動くと、校長先生による始めの挨拶をしました。
「これより、二〇五〇年度。国立海洋学院第一高校、第一〇年期生の入学式を執り行います。」
「礼。」
司会は、再び女性に戻って進められました。
「国歌斉唱。」
体育館の壇上から左右に一つずつあるスピーカーから曲が流れました。
曲が流れると壇上に掲げられた日本国旗を見つめながら、小さな声で歌いました。国立の学校であるためなのか海洋学校であるためなのか私には、分かりませんが、先生たちによる国歌斉唱は、他の人より大きく聞こえていました。
国歌斉唱が終わると、司会を執り行っていた女性が着席を促し、入学式を進めました。
「校長からの祝辞。校長、久方沙雪一等海佐。」
校長先生の名前が呼ばれると、周囲では、緊張感が広がり、背筋が伸びている生徒が何名かおり、どこか委縮しているように感じました。しかし、私は、それ以外にも先んじて聞き入った久方という名前に引っかかりました。
校長先生が壇上に上がると、祝辞を述べ始めました。どことなく、久方さんに似ており、誠実な人のように見えます。
「ご入学おめでとうございます。晴れてより、今日から海洋学院の生徒となったあなた方は、多くのことをこの学び舎で学び、学友と青春を謳歌してもらいたいと考えております。現在、私たちの世界では、環境変動によって変わっていく地形や天候の対策として、船の上で暮らす生活が国によって、取り組まれています。しかし、それに伴って、海洋技能を持った人材が必要となり、各国は、教育の一つとして、海洋学を授業にする政策や海洋学校を設立する政策を立ち上げ、人材育成に力を入れています。そして、その一つがこの学院です。皆さんには、多くの事をここで経験していただき、どこまでも広がる大海へと羽ばたいてもらいたいと思っております。」
校長先生からの話は、少し難しかった気がしましたが、改めて頑張ろうと感じました。
「校長先生ありがとうございました。」
司会の女性がお礼をして、進行しました。
「続いて、生徒会挨拶。生徒会長、海田蛍。」
「はい。」
生徒会長の方は、とても綺麗な姿勢で歩き、華のある女性でした。前に立つと、その姿がとても美しく見えました。
「新入生の皆さん。ご入学おめでとうございます。生徒会長の海田です。今日から海洋学院の生徒として暮らすため、そのことを自覚したうえで、勉学に勤めていただきたいと願っています。私から以上です。」
生徒会長の内容は、とても短く、内容に関しては、厳しいものでしたが、私は、話を聞いて身を引き締めました。
「礼。」
壇上から生徒会長が降りると、入学式をさらに進めました。
PTA(保護者と教職員の会)の会長から挨拶では、入学祝にシャープペンを頂き、他にも多方面から頂いた祝電披露と進みました。
「続いて、新入生誓いの言葉。新入生代表鹿島彩夏さん。」
入学式のスケジュールは、折り返しを迎えました。
名前が呼ばれると、私たちが座っていた生徒席の右側に座っていた女子生徒が一名立ち上がり、壇上に上がりました。
「残暑も収まり始め、夜が次第に長くなってくる季節に今日、私たち八六三人の新入生は無事に入学式を迎えることができました。本日は、このような立派な入学式を行って頂き、ありがとうございます。今日から私たちは高校生になりました。これから始まる高校生活に対する期待と不安を胸に抱きながら今日この日を迎えました。国立海洋学院第一高校の一員となったことに誇りを持って、学友とともに学業を勤めていきたいと考えております。
未だ。私たちは、新入生の身であるため、右も左も分からず、怠った所もあるかもしれませんが、先生方、上級生の皆さま方、温かい目で見守って頂き、ご指導くださいますようにお願い申し上げます。 西暦二〇五〇年九月五日 新入生代表鹿島彩夏。」
新入生の方は、誓いの言葉を終えると、壇上で一礼をして降りてきました。
基本的に誓いの言葉をする生徒は、新入生の中でも最も優れた人に任せるようで、周りの生徒は、壇上に上がった女子生徒の噂で盛り上がっていました。
『学生艦は、武蔵の艦長を任されているのではないか』と言う話や『試験の点が満点だったのではないか』と噂が聞こえてきました。
聞こえてくる声をかき消すように司会の女性は、進行しました。
「担任紹介。」
司会の女性は、手に持っていた二つ折りの紙を開き、担任の先生の紹介を始めました。
「戦艦級。武蔵担当、白海癒逗先生。比叡担当、有田洋子先生。土佐担当、高梨愛先生。巡洋戦艦級。筑波担当、麻生陽子先生。生駒担当、縄恒子先生。鞍馬担当、安藤幸恵先生。伊吹担当、赤坂春枝先生。重巡洋艦級。青葉担当、内海渚先生。以上八人が各組の担任となります。」
担任の先生の紹介が一息つくと、入学式の司会が再開されました。
「校歌斉唱。」
在校生と見られる数名の生徒が立ち上がり、新入生の前に移動すると、ピアノの演奏が始まりました。
私は、初めて聴く校歌に合わせて、歌詞が書かれている紙を見ながら聴いていました。
歌う生徒の方には、生徒会長も含まれていました。
校歌を歌い終えると、入学式は、校長先生が閉式の言葉を告げました。
「以上を持ちまして、二〇五〇年度国立海洋学院第一高校の入学式を閉会いたします」
「新入生、退場いたします。」




