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迫り来る矢(サンサ視点)

 セリが戻り一月が経つ。よく食べ少しは肌艶も良くなったように思うが、まだまだ華奢であどけない顔が私の周りをうろうろしている。目の届く所にセリが居るのはハラハラせずに済む故良いのである。西や南は騒ぎ立てる様子はなく穏やかと呼べるかは別として特に雲行きが怪しくはなかった。つい先ほどまでは。


 今朝は早くから、セリはカヤと共に山へ狩りに行ったそうだ。か弱く思ったが勇ましい面もあるのかと関心していたが、なかなか戻らない為タイガと森を探すことにした。

 ったく手のかかるやつだ。


「カヤ!カヤ!」タイガがカヤを見つけ馬を走らせた。


「タイガ様、ああ殿下まで……」

「セリはどこだ?」

「セリ様はあちらに。実は帰ろうとした際、首飾りを落としたようでして……申し訳ございません」


「それをずっと探しておったのか?」

「はい」

「マリ様ならさっさと諦めて違うものを買うところ流石はセリ様です。ねぇ殿下?」

 とタイガは嬉しそうにこちらを向く。代々受け継がれる石だと聞き、恐らく責任を感じたのだろう。


「ありました!!カヤさーん」

 ああ、向こうから叫ぶセリが目に入った。

 馬を走らせこちらへ来たセリは私達まで居ることに驚いたように馬から飛び降りる。


「っサンサ様」

「失くしたなら、私に言え」

 きつく言った為か視線を下に運ぶ。

「首飾りの紐を結んだのは私だ。結び目が弱かったのやもしれん。……見つかって良かったが、帰りが遅いと、こちらの気が持たぬ」


 なんだ……理解していないのか。きょとんと間抜けな顔で頬に土を付けたまま立ち尽くすセリをただ眺めていた。


「セリ様!あれですよ。殿下はセリ様が心配だと言ってるのです。失くしたならこのタイガや他が探すのですから、言えば済むと、自ら土まみれになり探すなと仰ったのです。それに首飾りの紐を結んだ殿下に責任もあると。ね?殿下」


「ああ そうだ……」

 何も同じ事をわざわざ繰り返す必要はない。なんだ……。私の言葉は伝わらぬのか。


「……はい。サンサ様、あ、ありがとうございます。気にかけてくださって」



「タイガ!!!みな下がれ!馬に」

 木の影に矢を構えたものが見えたのだ。刺客か?

 各々馬にまたがりその場を去ろうとした時、林からガサガサと矢を構えた者たちが出てきた。


「走れ セリ!」

 タイガと共に剣を構えながら走る。届いてくる矢を弾き落とす。

 先に山肌の高い位置に着いたセリが止まり矢を放ちだした。


「セリ!先に降りろー!!」

 しかし、聞く耳を持たず私達を援護しているようだ。


 その時だった。セリが矢を切らした刹那、数本の矢が私達の頭上を飛び越えセリをめがけて放たれた。


「セリ!!!!」


 馬を走らせ矢を剣で振り払おうとしたが、一本の矢が腕に刺さりその場に崩れ落ちたのはカヤだ。


「……カヤさん……カヤさん!!!」


「タイガ!追え」

「はっ」


「カヤ、毒矢か……」

「サンサ様 サンサ様……どうしましょう」

 意識が朦朧としたようなカヤを見てセリは震える。

「私がカヤを運ぶ、セリ、馬に乗れるか?」

「……はい」



 ◇



 城へ戻り医師に解毒薬を煎じさせ飲ませたが、カヤは高い熱を出している。

 うなされるカヤの枕元にセリがずっとついておる。


「殿下 戻りました。一名捕え吐かせました」

「そうか。誰の刺客だ?セリを狙うなら、西ではないな、ヒュウイでも無かろう」

「はい」

「……マリか?」

「はい。既に山の牢へ収容するよう命じました」

「分かった セリには……」

 言うなと言おうとしたが、すぐ扉の横にセリが居た。

 聞いてしまったようだ。


 セリの目は、いつもの柔らかな眼差しでは無く赤く染まりその奥は研ぎ澄まされたものだった。




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