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ノラロウ参戦! オレのオススメを聞け!


オレはノラロウ。某大学に住みついている野良猫ではあるが、読サーほにゃらりのゆるキャラ的存在でもある。


もちろんギャラはもらってない。いや、新聞紙に包まれた唐揚げは、時々もらってる。それも弓月チャンから直接、だ。


羨ましいか?

羨ましいだろ?


煽ってるわけじゃない。正直に言え。羨ましいだろう? はーん?


ところで最近、読書サークル研究会ほにゃらりにて、愛読書のおススメ大会が催されていると耳にしたのだが。


野良猫のこんなオレでも愛読書のひとつやふたつ、ある。


オマエたち読者が、ノラロウさまこの通りっっっと頭を下げるなら、教えてやらんこともない。


さあ! 土下座してノラロウさまと、……あ、ちょ、待って……


(2分経過)


や、すまんすまん。どこまで話したっけかな……あそうそう、こうべを垂れてオレさまに教えを乞うん……ん? え? 待て待て待て


(3分経過)


はあぁ時間を取らしちまったな。悪かった。で……


くそっっ、あのバッタめ! 追い払っても追い払ってもこっちに向かってきやがる。肉球(猫パンチ)をかましてやったんだが、全然懲りてないらしいな。


オレさまの猫爪(アイアンクロウ)をお見舞いするしかなさそうだ。


悪いがもう少し待っててくれ。(←どうしようもできない猫の(サガ)


(2分経過)


……ふうふう。さあもういいだろう。完全に駆逐した。手強い相手だったぜ。


それでは今から第一回ノラロウ愛読書の発表に移りたいと思う。


みな、耳をかっぽじって聞け!


ダララララララ ダン!




『ライオンのおやつ』(著:小川糸 出版社:ポプラ社)




読サーの本棚の一番左側にひっそりと置かれている。題名を見ろ。


『ライオン』は怖いが『おやつ』は大好物。


なんのおやつについて書かれた文献なのかが気になって飛びついた本だ。


ん?


野良猫が字を読めるのかって? 本を読めるのかって?


バカにするな! オレは弓月チャンの膝の上に乗って一緒に新聞を読む仲なんだぜ?


字くらい読めるっつーの。


で。まあ。この本だが。内容は……ん〝ん〝ん〝 〜〜 ←喉の調子


とにかく泣ける話だ。あの弓月チャンが鼻水を垂らしなが……おっと、涙を流しながら完読した本だ。


泣ける話に間違いない。


(人生の最後に食べたいおやつは何ですか――若くして余命を告げられた主人公の雫が最後に選んだおやつは? 死をテーマにした感動作)弓月による後々の補足


ちなみにオレの好きなおやつは、時々長谷部が持ってくる『マルコポーロ』だ。や、違うな。『マルボロ』これも違う。あ、そうそう『タマゴボーロ』だ。(←横文字に弱点)


あれはうまい! この世のものとは思えないほど美味。口に入れた瞬間にふわりと広がる甘い香り。噛めば、シャリシャリと崩れていく優しい歯ざわり。舌の上で一瞬で溶けていってしまう芳醇な味わい。


うまい。あれはうまい。


長谷部はこのタマゴボーロを持参しては、弓月チャンと半分こしようとしてことごとく失敗している。


長谷部がポケットからタマゴボーロを出すと、弓月チャンはいつも、「じゃあこれ」と言って新聞紙で折ったコップをサークル員分出してきて、みんなで分けてしまう。


「長谷部くん、いつもタマゴボーロ持ってきてくれてありがとう。美味しいよね〜〜。私、タマゴボーロって、赤ちゃんの時から好きだったの。嬉し〜〜」(だいたいの赤ちゃんはタマゴボーロが好き)


そんな弓月チャンはオレさまの分まで用意してくれるってわけ。女神か! 女神だ! タマゴボーロの神、卵棒露ノ神だ!


長谷部はどうだと見てみると。寂しそうに、数少ないタマゴボーロをぽりぽりと咀嚼している。弓月チャンと半分こしたくてたまらんらしいが、バカめ! 弓月チャンと半分こなんて、百万光年早いっつーの!


それで時々、神田川が空中へ放り投げてから口キャッチしながら食べるのだが。それを横目で見ていて、隙あらば、ぽろりしたものをダッシュでいただく。これもまた一興。


だが、(おとこ)の中の(おとこ)、神田川も負けてはいない。あいつは水泳部のエースでもあって、とにかく跳躍力が凄い。筋肉も凄いが、弓月チャンにもらった(正確には長谷部)タマゴボーロへの執着も凄い。


「ごるらあああぁぁぁ! ノラロウ! 弓月にもらった俺のタマゴボーロを横取りするんじゃねえええぇぇぇ!」


水泳の飛び込みで鍛えた足腰で、本棚の隅へと転がっていったひと粒のタマゴボーロに飛び込んでくる。その勢いで前転二回半し、本棚に身体ごとぶつかっていき、倒れてきた本をかぶる、ということを繰り返している。


賢明な読者(キサマら)にはわかるだろう。これほどの乱闘のあと、タマゴボーロは握った手の中でクラッシュするということを。


神田川はショックを受けながらも、手についたタマゴボーロの残骸までもをペロペロしているわけだが、これほど、俺の! 俺の! と主張してくる神田川は、狂気としか言いようがあるまい。


その存在自体が、狂気。オレが唯一、漢と認めた男。神田川。





そんなわけで、オレさまの「愛食オススメのおやつ」の発表、これにて終了。


ご静聴、どうもね。


あ、チクショウ! また来やがった! 懲りないバッタ野郎めええぇえっぇ!



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― 新着の感想 ―
[一言] 小川糸さんのエッセイ(ペンギン=水谷公生さんとの生活が主のお話)は読んだことがあるんだけど、この作品は読んだことなかったです。 全体に、優しい感じの、大人の童話っぽいお話を書く方というイメー…
[一言] 正直に言う。 ノラロウ。羨ましい。
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