前日譚
「……そろそろ私たちも進路を考える時期だね」
「えっ?そんなこと言ったってまだ――」
「1年ある、なんて言うつもり?」
「……」
「ハァ……私達、あと1か月したら3年生、あと1年したら高校生なんだよ?悠長な事を言ってる場合じゃないって分かってる?」
「それぐらいは勿論、先生とかが言ってくるから分かってるけどさ……なんか、実感が無いんだよな」
「実感?」
「あぁ、今仲良い奴らとバラバラになっちまうっていうな」
「……確かに、そもそもこの近くあまり高校無いからね。頭の良い子は県外、それ以外も県内でバラバラ」
「そうそう、それに結局頑張ったとしてもみんなバラバラになっちまうのは何か……虚しいつうか……」
「虚しいって……よくそんな難しい言葉知ってるね?」
「……流石に馬鹿にしすぎだろ。いくら幼馴染と言えど怒るぞ」
「アハハッ、ごめんごめん。でも、そう言うってことは君はどの学校に行くか決めてるの?」
「うーん…………一応、桜花学院かな……」
「へぇー、何で?」
「やっぱり、部活が強いからかな。特にサッカーに力入れてるし」
「あぁ、そっか、君サッカー部だったね。でも、桜花学院って学力で言えば中の上ぐらいだけど……大丈夫なの?」
「うるせぇな、そこは頑張るんだよ。……まぁ、無理だったとしても桜花、スポ薦あるし」
「……逃げてる」
「んなこと分かってるよ。だから、そうならないように今度お前が勉強を教えてくれるんだろ?」
「それにしては勉強会の決断が少々遅かった気がするけど……まっ、君がやる気になってるならそれで良いや」
「……と言うか、そういうお前はどうなんだよ」
「どうって?」
「だから……志望校」
「私は……いや、実は私も……君と同じ桜花学院だよ」
「えっ、マ、マジで?何で?」
「何でって……あー……君がさっき言っていた通り桜花学院って部活動が強いでしょ?私、バスケ部だし桜花、バスケも強いからさ」
「あぁー、なるほど、そういうことね」
「まぁ、私は君と違ってスポーツ推薦なんかじゃなくて学力で行くつもりだけど」
「ホントお前という奴は一言が余計なんだよな。そこは同じ高校を受けるから一緒に頑張ろうで良いじゃねえか。でも、そうか……そうか……」
「……何で、そんなホッとしたような顔してるの?」
「え、あ、いや、何でもないよ」
「……ホントに?」
「マジで何でもないって……あっ、そう言えば近くにあるスーパーの新商品でいちご大福が出たらしいぞ」
「ホントに!?」
「おぉ……食いつきが凄いな」
「そりゃあ、私はいちご大福には目が無いからね~。折角だからこの後買って帰らない?」
「あ、あぁ、別に良いけど……」
「やったー!楽しみだな~」