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まず目が覚めた時からおかしかった。


1、知らない女性に起こされる

2、ベッドが広すぎる

3、シーツがホテル並みに綺麗、パジャマがフリル付きワンピースのようなもの

4、髪の長さ…や色(ここら辺で夢かと一瞬逃避しかける)

5、自分の声

6、身長


―――そして…


「どうなさいました?ステラお嬢様?お顔に何か付いているのですか?」


7、名前

8、お嬢様呼び

9、近くにあった鏡の中の見たこともない美少女…


「…だから…どうしてこうなるのか…」


目の前の女の子は、疲れた目をして私と同じタイミングで溜め息を吐く。


「お嬢様?お加減が悪いのですか?直ぐにお医者様をお呼び致しますね!?」


そう後ろで青ざめた女性が言うのが聞こえ、私は、


「…ちょっと待ってね?今、頭の中で色々と整理してるから…」


と鏡の中から目を離さずに女性を引き留める。


―――声まで違う…何だこの鈴を転がしたような可愛い声。


「ですがお嬢様…!」


様子がおかしいです!と言う彼女の言葉に、


(まったくだわ…)


と同意する。


(―――取り敢えず、お決まりの、夢かどうか確める方法をやってみよう)


私は早々にこれは夢と割りきり、ある行動を起こす。


その瞬間、


「!?お、お嬢様ぁぁぁ~!!!!」


推理ものだと絹を裂くような悲鳴、と書かれそうな声を上げながら、女性はバタリと倒れ込んだ。


驚いてそのままの格好で固まっていると、


「お嬢様っ!ご無事ですか!?」


と大きな扉を蹴破らんばかりにやって来た男女が私を見つめ、男性は固まり、女性は青ざめ、そして―――また倒れた。


誤解の無いよう言っておくが、その時私が試みた方法というのはただ自分の両頬を摘まんで痛みを感じるかどうか試しただけだ。


決して人の道を外した行動をとったという訳では無い。


私は気まずくなって手を離し、呆然と先頭で立ち尽くして居るモノクルを掛けた初老の男性を見つめ、


「…あの…」


と声を掛けた。


すると、その男性は呆然となんかしていませんでしたとばかりのしれっとした表情で、


「…おはようございますステラお嬢様。本日もお健やかなご様子でこのセバスチャン、安心致しました」


と答えた。


だが動揺は言葉の最初の間に現れていた。


「今すぐにお召し替えをご用意致しますので暫しお待ち下さいませ」


セバスチャンさんはそう言うと、固まっている若い男性たちに倒れた女性を運ばせて、扉を静かに閉めて去って行った。


――突然静寂が訪れた、本来の自分の部屋より広い部屋の中で、取り敢えず私は大きすぎるベッドの上で正座しながら腕を組んだ。


(…どうやら私は夢を見ているようでは無い…)


と痛む両頬からそう判断する。


(…けれども体が縮んだり、容姿が変わっているなんて非科学的よね…)


そうくるくる、と胸元まである豊かに波打つ金髪を細くて白い指で玩びながら考えていると、


(――タイムスリップ?)


そんな言葉が浮かび、けれども直ぐに違うな、と眉間に皺を寄せる。


(アレは姿形が変わるって事は無いんだろうし…そうすると私、あのまま死んじゃって過去の人間に憑依してるとか?)


う~ん…と体が縮んだりすることよりも非科学的な考えに眉間の皺を更に深めていると、


「…ステラ?起きているの?」


と扉が少し開き、可愛らしい声が聞こえてきた。


その声に、


「…誰?」


と問いかけると、


「あぁ、良かった…セバスがお医者様を呼ぶと言っていたから、私、ステラが病気になってしまったのかと思ったわ…」


そう言いながら部屋に青いドレスを着た銀髪ストレートの美少女が入って来た。


「少し頬が赤いみたいだけどお熱は無い?」


ベッドの近くに寄り、ベッドに腰掛けた少女は滑らかな白い手を私の両頬に宛てた。


――近くで見て解ったが、少女の瞳は鏡の中の少女と同じ、紫の瞳だ。


私は思わず、


「きょうだい?」


と呟くと、銀髪の少女は瞬きをし、


「…ステラ、私が解らないの?」


と驚き、少し泣きそうな表情をしながら、そっと私を抱き寄せた。


生粋の日本人の私には突然のハグに心臓が跳ねた。


至近距離で見たら更に美少女でもう何というか、思考と体が固まる。


そんな私を余所に、銀髪の少女は私の頭を撫でながら、


「私は貴女のお姉さまでしょう?」


と言った。


(あ、やっぱり姉妹か)


私はそう思うと、少し彼女から体を離し、その美少女ぶりに思わずモジモジしながら、


「…あの…お名前、は?」


とまるでお見合い相手に趣味を訊ねる感じで問いかけた。


すると少女は、まぁ…と可愛らしく声をあげ、心配そうに私を覗き込みながら、


「私は貴女の姉、ソフィアよ?貴女は私の妹、ステラ・アルト・キャンベル…本当にどうしてしまったの?」


ソフィアはそう言い、私の額や首筋に手を充てる。


(()()()()?ソフィア・アルト・キャンベル?)


私は恐る恐る目の前の優しい()を見つめ、確認する。


『サラサラの美しい銀髪

紫の神秘的な瞳

白く美しい肌に薔薇色の頬

女神の様なその容姿は、学園の令嬢の中で一際目立ち、王子の婚約者』


(…まんまあの本の人物紹介で出ていた特徴そのものじゃない…!表紙の絵より断然美人だが、このソフィアという優しい美少女は…

あの本の…悪役令嬢…?…と、いうことは…ここは本の中の世界ということ!?)

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