93節 肉欲
さて、皆様はタグを覚えているだろうか?
R15そしてシリアス……。
「……目を使うのはどうかな?瞬間的に使うのであればそれほど負荷がかからないと思うけど」
「それしかないか」
魔視の魔眼。それは、礼と繋がった際に会得したものだ。
これを使うと目が赤く光り、機械生命体や魔法などの魔力の流れが視認でき干渉が可能になる。
見えた線のようなものをなぞる事によって、魔法と言う幻想を現実の上に塗り替える糸が細くなり崩壊し無力化することができる。
そのため、寄生体や機械生命体が纏う魔力障壁をなでるように突破可能である。
ただし、効果があるのは肉体が触れている箇所のみであり、銃弾や投擲物などは手を放してから時間や距離が経つごとに効果が薄くなっていく。
その他、副次的な効果でリミッターが切れるのか運動能力がオリンピック選手並みになったりもする。
だが、メリットもあればデメリットもあるのが世の中の摂理。魔視の魔眼は継続で発動できるのは五分間以内だけであり、五分を過ぎれば脳が負荷に耐え切れなくなり気絶する。
また、発動中も頭痛や嘔吐症状などに悩まされる。
が、見た目が金属で出来ている扉がコンクリを勝ち割る事が出来る礼の回し蹴りを歪むことなく健在するのは、魔術的なものが働いている可能性があるのは明白。
単純な力技で実は厚さ八十ミリとかいう戦車並みに装甲でした、なんてことがなければ何とかなるはずだ。
「礼、装備をくれないか?」
「わかった」
そうして、彼女は胸のクリスタルに腕を突っ込み手探りで探し出している。
何度も見て思うのだが、腕を動かすたびに黒い体液が漏れ出ているし……胸の宝石の中には眼があるがそれって大丈夫なのだろうか?
十秒後、彼女は何時も俺が使う装備を取り出してくれた。
ナイフシース一体型プロテクターに強化プラスチック板が入ったベスト、そして妹が作ってくれたヘッドマウントディスプレイ。
HMDを懸け起動する。近未来的なユーザーインターフェースが浮かび上がり位置情報を基準としたマップが映し出されるはずが。
「でねぇ……」
電波が届きにくい材質で出来ているのか、或いはこのコンクリートに見える壁に電波遮断塗膜が塗られているのかはわからない。
致し方がない。俺は、腕に付けたプロテクターを軽く叩いてナイフシースを展開させる。
そこには、俺が何時も使う相棒のナイフ。アイゼンヴォルフが収められていた。
そう、ここに拉致された時点で没収されたのはレッグホルスターに収められていた拳銃のみであり、礼の中にしまってあったものは無事なのだ。
クルリと回しながら、ナイフを構える。手先がぶれることは無い。
そのまま、瞼を閉じイメージをする。スイッチを切り替えていく様を!
バッと、目を見開き眼前に広がる扉を見てみれば魔力がまとわりついている。まるで、工作ではみ出しまくったボンドのようだ。
だが、固着するにはちょうどいい方法だ。
そのまま、俺は浮かび上がった魔力の流れに沿ってナイフを素早くなぞっていく。
バシっと緑色の火花が散り白い白濁とした魔力は霧散した。
「よし……。礼、ゆずき」
「うん、もう一度蹴破ろう」
「じゃぁ、私も手伝いましょうかねぇ……」
ゆずきも何時も間にかに戦闘着をまとっていたのだろう。
ハイレグのようなパンツの横に隠さない程度にサイドスカートが添えられ、露出している腹部にはシミは無くリンゴより少し大きな胸の下部が惜しげなく野外にさらされている。
少しでもずれてしまえば大事なところが見えてしまいそうだ。最近知ったことだが、ベアバックと呼ばれるドレスの一種らしい。
半面オペラグローブで腕の露出はさけ、外気に触れる掌は小さく爪には桔梗色色マニュキュアが塗られている。
菖蒲色の髪をサイドテールにまとめ紫式色の瞳に、首には黒紅色の首輪に胸元には瞳と色と同色なクリスタルが肌に埋め込まれていた。
そんな淫靡な雰囲気を醸し出すゆずきは、礼と一緒に扉の前に行き。
「せーので行こうか」
「はぁい」
「「3、2、1、せーのっ!!」」
バコンと軽金属で出来た扉は中心を起点として谷折りに折れ曲がり、勢いよく壁にぶつかりオブジェと化す。
時速一八〇キロのアルミ板が衝突すればそれなりの騒音になるわけで。
「なんだ!?」
「どうなってるんだ」
「どけや」
「こっちは客だぞ」
と、様々な声と足跡が耳を転がす。
……?扉の前に見張りすらいないのか。いや、明らかに組織されたものではない動きだ。
だが、音の波をかき分けるように覆面付けた二名の兵士が奥からこちらに駆けつけ、持っていた銃をぶっ放してきたのだ。
ダダダダッンと、火薬の破裂音と小口径弾特有の少し高い廃莢。それが、鉛と共にこちらに襲ってくる。
礼とゆずきは二人でうなずき返した後、銃弾の雨に飛び込んだ。
まず、ゆずきが先ほど蹴とばした扉を生成した鞭で絡めとりぶん投げる。いくら訓練された兵士であろうとも、肉眼でとらえられる高速物は反射的に回避しようとするはずだ。
ゴウ、空気を割いて飛んでくる質量兵器に動揺したのか射撃が止まり、とっさに状態を中心からずらしてサイドステップを試みようとする相手。
だが、そのたった刹那の間視線が外れれば礼にとってこの距離は無いも等しい。
彼女は、生成した大剣のレーバテインを前面に構え地面とほぼ平行にスタートダッシュを決める。
嫌な予感か偶然か、瞬時に仰向けの状態から射撃を行うが剣身で防ぎそのままバッシュ。
チーター並みの速さを持つ速度に大剣の質量が合わさった攻撃で兵士の銃と体が空に舞い、勢いを保ったまま礼は小ジャンプをしながら大剣を垂直に叩きつけたのだった。
体が真っ二つになりバシャと赤い液体が自己視聴し、彼はそのまま永眠していった。
一方、ゆずきはと言うと扉を投げた後にすぐ走りだしていた。
彼女が所持する武器の鞭……正式名称はエキドナと言うらしいがこれの特徴は伸縮自在と言う事だろう。
知っての通り寄生体が扱う武器は自身の細胞によって造形作りと硬化させている。そのため、自身の細胞分裂が許す限りある程度武器の長さを自由に決めれるのだ。
あのであったばかりの小悪魔と戦闘をした際には、地面に埋めて下から強襲すると言う強引な手を使ってきたこともあった。
今回は手軽に十メートルほど伸ばし、そのまま相手の足を絡みつかせ華奢な見た目からは想像できないスイングで壁に叩きつける。
ベタンとまるでハンバーグを作っているときになるような音が廊下に響き渡り、まるでファションショーの女優の様に膝立ち状態の頭部に向かって近づきサイドキックを叩きこんだ。
ヒール部分が相手の眉間にめり込んでいき、深々と突き刺さったのちに圧力に耐えきれなかったのかダンプに潰されたかのようにペースト状に霧散するのだった。
ある程度、戦闘が終わったのを確認し俺は隠れていた部屋から頭を少しだけ出す。すでに瞳は赤くはなっていない。
そこには、一刀両断にされているものと脳の中身が爆発四散した死体が。
うっわ。くっそ……あぁ。視線を逸らしながら、けれど彼女たちに確実に歩み寄る。
「ご主人様……ケガはないかい?僕、二時間ほど前は役に立てなかったから。……頑張れたかな?」
「先輩……私達のゆうしぃ、視てくれましたかぁ?って、ぁー……少しぃ派手にやりすぎちゃいましたか」
「いや、襲われてる最中に綺麗に戦えとは言えないだろ。流石に、臓器がこんにちわァ!してるのを見て不快感がないと言えばうそになるが、まぁ……うん、今時ネットとかに転がってるから大丈夫。大丈夫。大丈夫」
正直に言えば、魔眼のせいで頭痛と吐き気が出ている最中にこんなものを見せられて大丈夫なわけないのだが……そこはみんなを心配させたくないから虚栄心を胸に張る。
幸い、死にたてほやほやなため腐乱臭はなく臓器を見なければ問題はあまりないだろう。
小さくため息をつきながらねぎらうためにゆずき達に近づく。
彼女たちは付いた血潮を蒸発させたのか、消しこちらにやってくる。
「大丈夫ならいいですけどぉ」
「あぁ、さてと」
「マスター?どうしたの」
「いや、武器を調達しようと思ってな。礼の胸から引っこ抜いてもいいが……予備を持っておきたい」
それに、指紋が付着したものを咲さんに出せば何か手がかりが付くだろう。
そう思い、頭が無いしたいに近づいて飛び散った脳髄から視線を逸らしつつそばに転がっている銃を見る。
「VHS-K2か……」
「VHS……?それって昔のテレビのやつかな」
「ん?違うぞ。VHSはクロアチアの正式アサルトライフルだ。近代化回収モデルだな……アメリカでも売ってるが市販品はフルで撃てなかったはず。改造したのか?まぁいいか……全長が短いからこう言う場所にはちょうどいい」
「ならぁ、もらっちゃいましょ!」
「ま、所有者はもう使わないし。俺が相続したって事でもらうか」
そう言い、マガジンを抜きチャージングハンドルを動かし(排莢)コッキング。薬室内に入った小口径高速弾を弾き飛ばし、叩きつけられた衝撃で破損してないか確かめる。
セレクターも動き、外観上はへこみなどもなく問題はない。振ってもカラカラと音はせず、内部パーツが外れたことはなさそうだ。
ベストから予備弾倉が入っているとされるポーチを探せば、マガジンが6つ入っていた。
(……?よく見ればこいつらの装備って妙に綺麗なんだよな。ほつれもないし傷も少ない。ぶっちゃけほぼ新品か?)
よく見れば、衣服もアメリカ製のアルファ社が作っているハイクオリティものだ。
普通は手に入れやすいように、また日本の特徴的な四季気候に合わせたものを装備品に選定するはずなのだが。
そのまま、武器を持ち立ち上がる。礼が殺害した兵士のものは体と同様に一刀両断されていたので、指紋が付いてあるだろうグリップ部分を回収した。
「どうする?やっぱり、ここは脱出を目標にしていくのかな?」
「ぁあ、楔の事を見捨てると言えば聞こえは悪いが……孤立無援で何か出来ることはないしな」
「じゃあ、階段かエレベーターを使って上に行くって事ですかぁ?窓、液晶でしたしぃ……地下の可能性が高いですしね」
「そうだな、しかし……ここまで暴れてサイレンも無しか?通信をしてるような印象もなかったが」
何かしら違和感を感じながらも、海斗は通路を進んでいった。
トコトコと警戒しながら歩いていけば、T字路に突き当たる。そこには、この階層の案内図が示されている。
俺達が来た方向はゲストルームと呼ばれていて、階段はここから右に進んで多目的ホールが隣接した廊下を進んでいけばあるらしい。
人が多くいた気配があったのもこっちだ。注意して進んでいこう。幸い、何か輸送していたのか所々身を隠せるようなプラスチック製コンテナがある。
検品をしたい気持ちがあるがそんな事をやっている暇はない。一部を無理やり礼のクリスタルに詰め込み俺達は右に曲がっていったのだった。
「しかし、結構広い施設だな……」
「チラリと扉の中を見たりしましたけどぉ、何かの研究室……或いは薬剤保管所みたいですねぇ」
「人の気配もない。僕たちを止めるために駆けつけた警備員が彼ら二人だけって事は無いと思うけどね」
「ん?待て……っ!なんだこの匂い」
階段が見えてきた、そう思った矢先ふと鼻孔を甘い匂いが掠めた。
香水のような甘ったるい匂い。粘りつくような深い感を覚えるそれは、上階から俺達を仕留めるために流された訳ではなく……よく見れば多目的ホールからピンク色の煙が続いているようであった。
瞬間的にタオルで口と鼻をふさぐ。微粒子ではまぁ、布の繊維を透過してしまうかもしれないが何もしないよりましだ。
「きっつ。此処って換気されてるんだよな?」
「上の機械の機動音はちゃんとしてるね」
「て、事は何かしてたのか」
こちらの角度からは暗闇に包まれていることしか確認できない。
本来であれば、出来るだけ吸わないようにしてここをスルーするべきなのだが、何故か何故か……袖を引かれるかのように興味を持ったのだ。
「一応、視てみるか……。後ろからやられたらいやだし、さっきまで人が居たとするなら何かしら資料とかこう……場所がわかるものがあるかもしれない」
「そうだね。やられっぱなしは性に合わないから」
そう言って俺は多目的ホールと書かれた扉の前に立つ。
急いで出ていったためか、鍵はかかっておらず扉は開いたままではあるがくらい。
基本的に照明器具のスイッチは入口近くの壁にあるはずだと思い、銃を左手で構えながら右手で手探りで探せば指先に冷たい感触が。
礼たちに視線を合わし、電球をつけると同時に大剣を持った彼女が飛び込んでいき。
「え?」
聞こえてきたのは、銃声ではなく困惑の声であった。
俺は礼の背中から顔を出し部屋の辺りを見渡せば……そこには。
「ぁ、ぁぅ」
「薬ィ、薬。もっとぉ!」
「ぁはは、あへへ」
少女がいた。至る所に寝っ転がる少女がいたのであった。
だが、衣類は着用しておらず年頃の裸体が惜しげもなく広げられていて壊れた機械の様につぶやく物。
部屋の中には、棚と何か液体が入ったプラスチックに少女が散乱していたのだ。
「――」
「うっわぁーこれはひどいですねぇ」
一応、善意か何かが働いたのか俺は彼女たちにゆっくりと近づいた。
至る所に少女としての尊厳が破壊されたのが見て取れ、口からも肛門からも体にも……もちろんあの部分にも白濁色の粘性液が掛けられ地面に垂れていた。
腕には、紫になるほどに貼れ点々とつく跡。
「甘い液体がしていた理由は多分このプラスチックに入った液体が気化したものだね。原理は水煙草と同じかな」
「こんなの……いやぁ裏社会ではあるってしてはいたんですけどぉ」
「生で見るのは……ん、こいつは!」
汚物を触るかのようにためらいながら、異様にテカテカベタベタした裸体を晒した少女の脈を測っていくとそこには俺達を拘束した少女がいた。
それも一人ではない。こちらに来ていた四人全員だ。
『ねぇ……二日後に地域交流会があるの知ってるよね』
『うん。私達色々な人を救ってる。最初は怖かったけれど今では達成感しかないわ』
『ふふ、羽目を外せる瞬間。抑圧されたものを開放する快感……』
『さぁ、また人を救いに行きましょう?』
そういう事か……。
あの塾は入会してきた少女を見定め、こちらに誘拐し体を売らせる。
少女たちには並行して薬剤により洗脳させ行為自体を良い事であると誤認させ、自ら進んでやらせるように行動させていたのであればそれは証拠はほぼ取れないだろう。
そして、地域交流会は隠語でこれの事を指していたのか……。
力が強かったのは薬を打っていたから。
罪を吐き出させるって、違うものが出てるじゃねぇか。やっぱりシスターじゃない、聖母の名をかたる偽りの宣教師だ。
しっかし、派手にやってるいる。近くに転がる注射の数を見れは優に五本を超えている。
男性も使用したのか、いや注射跡からすれば少女が?ただ、致死量ってやつにならないのか?
「どうやらこの棚にあるのはお薬ですねぇ。それも、結構やばい奴……大方行為をする際に女の子を狂わせて反応を楽しむために置いてるんでしょう」
「マスター……」
「なんだ?」
「こっちに資料だと思うんだけど」
「人身売買の記録?と言うよりかはぁ、遊び方みたいなものですね。先に見つけてみたんですけどぉ、閲覧注意ですよ」
そう言ってゆずきはこちらに資料を手渡してくる。
その中に書かれていたものは常人では理解できないようなことであった。
薬でボロボロになった内臓の標本が欲しいからと言い、意識がある少女を解体する画像。
子供が出来たからといい、生き物を撃ってみたいと言う要望で吊るし射撃の的にしたりと価値観が違いすぎる。
それも、これら残虐な行為を少女たちが直前インタビューで進んで受け入れて快楽まで得ていたのは……苦しんでいないから救いと取るべきか、哀れと取るべきか……。
「捕まえるか?それとも、殺――」
こんな資料と惨状を見た後、あの足音の持ち主は否応なしに理解できる。
確かに俺は、知らない人間が不幸になろうとも知ったこっちゃないと考えていた人間だ。いちいちニュースで誰々が死にましたと流れてきた所で、涙を流す奴がいるか?
けどな、どちらかと言えば自己中心的な俺でも心の隅位には正義感くらいはある。
「――いや。よし、水ぐらい何処かにあるだろ。探して飲ませるぞ」
「水?でも、こいつらが起きたら」
「流石にここにポン置きは出来ねぇよ。それに、いくら空調が効いているからって外は夏だぜ」
「はぁ、優しいんだかなんなんだかぁ」
「言ってろ。水を与えるのは俺がやる……流石に女の子があれを触りたくないだろ。俺も嫌だが」
そうして、俺は資料を仕舞い水を探す。よく見れば、隅に冷蔵庫と水道がある。
スポンサーの満足度を高めるために設置してあるのだろう。
俺達は冷蔵庫に入っているペットボトル飲料を全て流しに捨て、水道水を注いだ。もしかした、何か薬剤が混入している恐れがあるからだ。
そのまま、意識がもうろうとしている少女の背を押して無理やり起き上がらせるが、首が座ってない赤子の様にガコッとなるのを手で押さえる。
カピカピになった髪の感触に抵抗を覚えながら、少しずつ水を与えていった。幸い、と言ってもあれだが口に突っ込めば調教されたのか勝手に下を動かしながら飲んでくれるので問題はないだろう。
そのうちの一人、比較的注射跡が少ない少女がこちらの足首をぐっとつかんだ。
「ぁあ、私」
「おい!まだこいつ、ほかのやつらと違って重症じゃないぞ!」
「え?」
「まぁ」
注射を刺されたであろう右腕で、しっかりとつかみこちらに視線を送る彼女。
それは、ほかの物のねっとりとしたものと違い……ぺたぺたと張り付くような者ではなくきちんと欠片ほどの理性があった。
しっかり抱き上げようと、彼女に駆け寄ったその時ふと視界が染まった。
平べったい体をしている少女からは体の奥に確かに、寄生体と同じ魔力を感じたのだ。
「こいつは」
「それがお気に召しましたか?」
「!?」
バンバン!
ふと、背後から声が掛けられる。入口にいる気配に反射的に持っていたアサルトライフルの引き金を引く。
銃弾が飛んで行った先には一つの人影。礼やゆずきは内心動揺していたのか資料を見つけた後、入口を警戒していなかったのだ。
礼とゆずきが武器を構えながら進む。彼女の視線の先には……。
「まぁ、体は貧相ではありますが……。大きい方しかいらっしゃらないようなので、そういった気分もあるでしょう」
「……」
そこにはマリアが立っていた。二時間ほど前に見た露出が多い修道着を着用し、瞼を閉じ壁に寄りかかる彼女。
こちらを見たのか?いや、目をつぶっているので見たという表現は正しくないか……。こちらに向いた後、汚れを落とすように腹部に腕を触る。
そこには、先ほど発射された銃弾が付いていた。皮膚を食い破りめり込んでいるとか、貫通したとか、そんなもんじゃない。まるで両面テープでくっつけたように肌の上に置いてあるんだ。
彼女は砂埃を払うように銃弾を捨てるとこちらに微笑みかける。
「あら?心配してくださるのですか……。この程度では傷つきませんよ。今回は、忘れ物を渡しに来たのですが、どうです……気にいる子はいましたか?御子様であれば、私達など物と一緒……どうぞ彼女たちを凌辱してください。楽しんでいただけますよ」
「は?少なくとも不快感しかないな」
「最低だね」
「死ねばいいんじゃないのぉ」
「そうですか……お気に召しませんでしたか。まぁ、ここはあくまで失敗作の処理場的なものですから……誰も盗んでも構いませんよ」
「しつこいぞ」
「うーん?不快なんですよね?汚れているからでしょうか?なら、汚した犯人を処分しておきましょう……大丈夫、貴方が気に病むことはありません。彼らなど資金があるから遊ばせてるだけの屑ですから」
パチンと、指をならす。そうすると上層で微かな振動と銃声と悲鳴。
「――!?」
「誤解しないでいただきたいのです。私達は味方です……と、言っても信じてもらえないですよね?ですから信頼の証としてこの部屋にいる少女たちを貴方に差し上げます。きちんと洗浄と洗脳をして死兵にも下のお世話にも使えるようにいたします。もともと彼女たちは人工的な寄生体である天使を作ろうとしてできた欠陥品であり、人間ではないので人権は――」
「話がかみ合ってねぇな!!」
「あ、っと。銃を構えないでください。そんなことをしても時間と体力の無駄です。彼女たちは心配しないください。処置が完了次第送っておきます。それとこちらを……貴方が所持していた拳銃です」
「マスター」
「加工などしてませんよ?それと主任がお待ちです。楔と言う少女もいらっしゃいます……上階の特殊研究室にいらっしゃいます。地上に出るためにはそこを通らなければなりませんから、一石二鳥ですね」
「やはり地下なのか」
「察しがいいですね。ここは地下です……と言ってもお客様はワープしてくるので知りもしませんが。何かしらで殺す際に都合がいいですしね」
……どうする。こいつの話を聞いて信じてよい物か。
今ここで戦闘もせずに会話をしているのは、戦闘の余波で少女たちを巻き込まないためでもあるが……最大の理由は足首をつかまれた状態のため回避が難しい状況だからだ。
こいつは絶対寄生体だ。攻撃を食らえば最後、良くて肋骨が折れ悪ければ心臓がつぶれるだろう。
「あ、彼女たちの事は気にしないでください。それとも直に持っていくつもりですか?大体四十名ほどいるので疲れると思いますが」
「すぅ」
わかってるそれは。だが、死に体四十名を連れて接敵した場合を考えれば。
「はい。良いご決断です。では、こちらで預かっておきますね。それでは、貴方に神のご加護が有らん事を」
「……」
「先輩」
「走るぞ、せめて距離を取るしか……俺達に出来ることは無い」
俺たちは少女たちを部屋に置いていったまま背を向け走りだした。
走っているのは罪から逃げるためか?いや、罪を背負えるほど立派な人間じゃないだろうに。
海斗たちは、今までに感じたことのない思いに心を支配されながら階段を登って行った。
首ぐしゃ、体ザク!!
「大丈夫、大丈夫」(震え声)
天使の教会がどうやって資金を稼いでる現場を見て
「――」(うっわ)
多分、これ海斗くんSAN値2ぐらい削れてる。
こういった描写を入れるのは単純に、敵として残虐な行為をしているよと読者に伝えようとしたためです。
銃で撃って生き的にするのも、最初のプロットでは主人公が肉眼で見る予定でした。(笑顔で笑いながら撃たれる様は、流石にグロすぎてやばくね?って思い切りましたが……)
因みに元ネタはきっちりとあって、元ネタの方では銃ではなく下から生きたままデカいドリルでやってました。(18歳以上用なので検索する際には要注意さね)
ブックマークは新着小説で投稿されたのがわかりますし、ポイントは作者のやる気にもなります。
また、ご意見ご感想も受け付けていますよ!
ブックマークは上部に、ポイントはお話を読み終わり『<< 前へ次へ >>目次』の下に入力案がありますよ!
作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします。