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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第3章 欠けた緑柱石
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87節 それはそれとして

 中の人が体調を崩したのでいつもより半分です。申し訳ありませぇん!!

「おはようございます……。精華さんはどちらに?」

「いや、精華さんはいない。多分、今頃書類で出来た机に頭を突っ込んで唸っている所だろうさ」

「そうなんですか。わかりました、えと」

「あぁ、ご飯ならあっちにあるよ。券売機であらかじめ買っといて提出してればくるよ。案内してあげよーか?私も何回か来たことあるし」

「……舞さん。ではお言葉に甘えて――」


 そうして、妹は楔の手を繋いで歩いていった。

 大方、女子の柔らかい掌を堪能してご満悦しているのだろう。ほら、横眼からでもわかるエゲエゲとした表情……前にいるからばれてないだろうが俺たちからはバレバレだ。

 そうして、お盆の上に朝食を乗せてやってくる。

 日本人の性質さがなのか、テーブルに乗る食事は全て和風。味噌汁に鮭にご飯にお浸し、海斗は追加でサラダを選んでいた。


「いただきます」


 そう、楔は手を当て食べ始める。

 この、一つの動作で彼女が厳しい教育或いは性格の良さがにじみ出ている。礼はいざ知らず、昔お嬢様学校に通っていたゆずきはこんな事見たことないし、海斗と舞がいただきますと言ったのは中学以来だ。

 箸で運ぶさまも庶民ではうまく表せないものがあるし、スマホ弄りながら食べないし。


「なんですか?」

「いや、様になってるなぁと」


 そうですか、そう返答をしながらも茶を飲む。その滑らかな動きにゆずきは、彼女が茶道を経験したことがあると言う事に気が付いたが、なんか負けた気がする……と思いほほを膨らませ口を紡いだ。


「胸の痛みは?」

「胸?肋骨の事ですか?問題ありません。処方された痛み止めが効いているのか、苦痛や動きにくさは感じませんね」

「なら、いいか……?とにかく、何かあったらすぐ精華さんの所に連絡を入れるんだぞ」

「えぇ、前日で学びましたから」


 今まで学んでなかったんかい!と心で突っ込みを入れつつご飯を食べていく。

 二十分もすれば皿の上にあった朝食は綺麗に平らげられていた。


「さて、私はもう一度診断しに病院に向かうのですが……皆様は?」

「俺たちは……何もないかな」

「復旧作業中の町を見て回ってもいいけど……瓦礫見ても面白くないしね」

「そうですねぇ。ゲームセンターもショッピングモールもやっていませんし」

「……?もう復旧作業をしているのかい?」

「あぁ、一応防衛陣地の後方にこの町は位置しているからな。たまに砲弾やら機械生命体のビームやらが飛んできたり襲撃されたり色々あるんだよ。瓦礫の山は撤去しないと廃墟(犯罪)都市になっちまうし、クレーターが出来たらすぐに直す。これが日本の当たり前だよ」

「……礼さんはここら辺に住んでいなかったのですか?」

「あ、っと」

「あぁ、田舎に住んでいたらしい。機械生命体は人口が多い所を襲撃してくるからな、過疎地で尚且つ山岳部だったらまだシェルターとか整備されてないんじゃないか?」


 シェルター。日本語では避難所と表記される。

 一昔前と言えば避難所と言えば、学校や公民館や図書館など市や県が運営している公共施設。或いは民間ボランティアが作成したテントなどもこのうちに入るであろう。

 だが、現在では意味合いが大きく違う。

 この場で指すのは医療用設備や避難所として使用できるトーチカ(コンクリ製要塞)だ。シェルターと違うのは避難してきた民間人を守るために固定兵装を取り付けられていることだ。

 ブローニングM2マシンガンやMINIMI機関銃などが備え付けられていて軍が到着するまで耐えられるようになっている。

 とは言っても火器は軍や警察、免許持ちしか使用できないのだが。

 そんな厳重な設備である軍用シェルター。だが、強固ゆえにかかる費用がとんでもなく普及しているのは都市部や県庁所在地などである。ギリギリ地下鉄が簡易防御陣地に入るか入らないか。

 なので、楔の疑問は勝手に消化されたのだ。実際には田舎生まれでもないし人間でもないのだが。


「そうですか。田舎では急激に過疎化が進んでいるといいますし、急に廃校になる学校があるそうで」

「まぁ、営利団体ではないが……」

「なんやらかんやらあって、知り合いの家に来たわけだね」

「私はぁ拾われて?」

「勝手についてきたの間違いなんだよなー」

「きちんとお手伝いはしてますよ」

「ふふふ、何となく貴方達のことがわかってきたような気がします」


 こうして、彼女は微笑んだ。

 そう言えば、焦らない楔を見るのは初めてだった。冷静になればなんと言うか礼儀正しく強かな女性で、生徒会長をやっているのにも合点がいった。

 少しだけ改めるか。そう思いながら水を飲んだ。


「さて、どうするか」

「どうするったってどうしようもなくない?」

「そうですねぇ、楔さんは病院に行きましたしぃ。私達が出かけたら入れ違いになる可能性の方が高いんじゃぁないですかぁ」


 時刻は八時。生徒会長は病院に向かい俺たちは待機状態と言う訳で。壁に立てかけられたテレビを見ながら話す。

 今頃、ある程度掃除は終わっているだろう。盾にしたであろうテーブルの残骸に排莢された空薬きょうを片付け、受け付けはもうできる状態だ。

 そんな中ドタバタと大きな足音を上げてくる。

 振り向いた先には階段が、誰かが走って向かって向かっているのだろう。

 段差から出てきたその顔に、アレっと表所を変える。向けられた主もこちらに気が付き。


「咲さんじゃないですか。無事だったんですね」

「あぁ、海斗君か。あれくらい捌けなければ特殊部隊の部隊長などやっていないよで精華はどこに?伝えたい事があるんだ」

「じゃあ、執務室じゃないかな。書類とかを夏さんにつかまってやってるはずだと思うけど」

「なるほど……わかった。君たちもついてきてくれ」

「はい」


 そうして、廊下を掛ける咲の後ろを追いかけた。

 最上階、もともと市民多目的ホールでありちょっとした展望台があるエリア。その中の一部屋に精華が居る執務室がある。

 木製の外装をした扉を三回ほどノックすれば横に取り付けられたインターフォンの画面が明転。夏の姿が映し出された。


「はいはい。こちら夏っす。現在しゃちょーはデスマーチ中っすー」

「書類仕事の中すまない私だ。色々あったが捜査資料の件について話したい。出来るだろうか?」

「あー咲さん。んぁ……あー?んーいや、このまま書類の山に埋もれさせてると脱走しだすっすよねぇ」


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