83話 ワルツ
2022/07/10
誤字修正
ルビ振り
読みやすいように句読点の追加などを行いました。
と、啖呵を切ったはいいが実際には笑えない状況だ。
身体能力的には圧倒的な二人。だが、軍事的な訓練を行ってないから多数一の状況に慣れていない。
基本的には同じ人数を相手にする際には、一斉より一人一人処理していく方が時間がかかるが容易でと言われている。それは言わずもがな、人間の手が二つしかないからだ。
故に、辛くて一人が相手に出来るのは二人。それも、相手に壮絶な実力差がある場合のみで全力を出せる状況をもってしての客観的な思いで、である。
が、ここにはもう二人役立たずがいる。そう、俺と楔だ。
俺はいくら軍事訓練を軽く行い流れ込んだ記憶によってなんかよくわからないスゴスゴ武術が扱えても、相手の量産品に負けるほどのスペック。五分間だけ超人になれるが主に耐久性がないのが頂けない。
そして、一番の足手まといが楔だ。頭がよかろうが運動が出来ようが人を撃つ覚悟が足りない人間が、役に立つと言えるのだろうか。あの距離であればワンちゃん弾速的な問題で仕留められる可能性があったのに。
(鎧袖一触か)
けどな、そっちにも一人役立たずがいるだろ?
俺は事前に礼から受け取っていた黒い物体を取り出した。
それはプラスチック製で出来た武器であった。片手で持ちながらフルオートで弾をばら撒ける連射力。
H&K社製、MP7A2であった。
MP7は、ドイツ軍やSSなどに採用されている短機関銃であり4.6x30mm弾と呼ばれる特殊な弾丸を使用する。様々な銃と互換性がないが、この弾薬は拳銃弾(9mm)よりも貫通力と威力が向上している。
思い出すのは昨晩。
拳銃に装填された徹甲弾を発射した時だ。槍を持つ少女は撃たれた所を抑えていた、まるで苦痛に抗うように。
何度でもいうが、機械生命体の特に注目される特徴は頑丈さだ。拳銃は豆、小口径高速弾でまし、大型弾薬で対応が基本。そう豆でっぽうなのだ……当たり所が良くて仰け反るくらいでダメージにならない。
が、彼女たちはうつむいて動きを止めたのだ。武器が効くなら、問題ない。
この場を切り抜いける方法はただ一つ。
俺たちがジャブを礼たちがストレートパンチをお見舞いすること。
Aを殴ったあとはBに、Bを殴った後はCに、と一回引かせてその引いた隙間にほかの相手をすると言う防御作戦。
包囲された状況下に飛び込むことは事前に把握していた。なら、増援を待てばいい。
「行くぞ!」
まずは、俺が正面にいる二人相手にトリガーを引き絞る。
照準なんてしない。この作戦はスピードが命……狙っている暇が有ったらとっとと撃ての銃撃狂大歓喜案件。
片手撃ちを設計段階から盛り込んだ技術者様々。ハンドガンより百グラムほど軽い本銃の性能を遺憾なく発揮発揮し、まずは二人を仰け反らせたりダメージを与えることに成功する。
その横っ腹にハイヒールで蹴りを叩きこみながら礼は翡翠にゆずきは赤い色のやつに突撃を開始した。
「ちょ」
「言いたいことがあるなら後ろに撃て、余裕が出来れば手加減もできるだろうさ」
異議申し立てをわき目を振らずに却下して、近づいてきた槍を持つ寄生体を蹴り銃を放つ。その後、振りむきざまに楔に忍び寄っていたピンク色を撃ちぬいた。
青が槍、前回いたやつか。ピンクはナイフこれは初見。
とにかく、胸のコアの発光色で個体を判断する。七人それぞれ色彩が違うため雑だがこれでいいだろう。
青が銃弾で所々出血をしながらも苦し紛れに槍を放ってくる。鋭い突きだ。
ギュンとおそらく殺さないように急所を逸らした、しかし当たったら肩からしたは千切れ飛ぶような強烈な一撃。
しかしその攻撃は横から来た礼によって弾かれその後、瞬時に切り返した大剣を受け吹っ飛んだ。
『兄、ちょっと応援呼んどいた』
「応援?精華さんの手は足りないんじゃなかったのか?」
斧を振りかぶる黄色の攻撃を回避して、銃弾を撃ち込みながら通信に耳を傾ける。
『確かに、それはそう。けど、軍事組織に知り合いが最近できたでしょ?』
「――ぁ」
『連絡先、地味に交換してたからね私達。あっちは自分だけ守ってればいいから余裕あるんじゃないと思ったら案の定。ただ、実際にはいけないから花火を射るってさ』
「了解。……各員フォーメンションを維持相手を近づかせるな。弾切れを気にしないでいい」
「ん?わかった」
「はぁい」
つまり、数十秒ほど待てばこの場を切り抜けられる。
今重要なのは一瞬のスキで突破する突破力。包囲を抜けるために必要なのは礼の高い攻撃とゆずきの妨害力あってこそ。だが、それもマナがなければ意味がない。
つまり、先ほどの発言は負担をこちら側に賭けていいということ。
『連絡が来た今から二四秒耐えて』
「だそうだ、やるぞ」
そうして、死闘が始まった。
続々と迫る攻撃を回避し、適切な反撃を行う。
斬撃を半身になり避け、打撃は受け流し、強力な一撃はバックステップして躱していく。
攻撃はどんどん苛烈になり、殺さないようにと一人が攻撃している間は控えるようになっていたが今では連携して来るようになっている。
「ぐぅっ!」
斧をサイドステップで避けたその後、着地の隙を槍で狙われる。何とか左手で持っていたサブマシンガンで逸らす事には成功はした。
だが、受けた武器はバキンと音を立てて粉砕され大きく仰け反る。そして、次の一手を迎撃しようとしたその時……楔の側面から近寄る黄色いフードの女を捉えた。
「おい、みっ」
只、助言できる範囲はこれだけであった。相手もしびれを切らしているのか猛攻がすさまじいく、回避するだけで精一杯で無駄口を叩く暇もない。
黄色が翡翠に向けてメイスを振りかぶった。そのまま、腹部にめり込むかと思ったが瞳は攻撃の軌跡を確実にとらえていた。
クルリと回転をしながら半身をひるがえし、そのまま一歩足を踏み出す。
本来、近距離戦と言うのは獲物の長さが長いほど有利に働く。何故なら、訓練をしなくても適当に振ったりすれば良いため扱いが容易で間合いが開くから負傷もしない。だから、銃が出る前には主力武器の一つとして使われてきた。
だが、その長さゆえに取り回しが悪くなり有効打を与えられる刃や鉄塊が付いているのが尖端にあるため、この部分を過ぎれば当たっても痛いで済むのだ。
相手の懐に踏み込み横っ腹に拳銃を突き出し打突、アンダーレールに取り付けられた照準補助機が嫌な音を立てたがなんのその。勢いのままゼロ距離で相手に向けて発砲したのだ。
『へぇ……やるじゃん生徒会長。伊達に文武両道って言われてないわけか』
「聞こえてますよ舞さん。横からの攻撃なんてドッチボールで嫌と言うほど体験してますから、それにいい加減邪魔なのよ!」
『あのね。僕、今思ったんだけどスパイク取り付けた方が良かったんじゃないかなって』
「確かに、ゼロ距離じゃあ照準補助機いらねぇな」
『まぁ……ただ、あれ先輩からお借りした銃だってこと頭から外れてないですかぁ?』
その行為に手ごたえを感じたのか、或いは神経を使って狙い撃つのが癪に障ったのかはわからない。けれど、彼女はコツをつかんだようで相手の攻撃にカウンターを入れる戦法に切り替えた。
「ねぇ、妹を救う手立てはあるの?」
「さぁな?確証は出来ないが、いける可能性がある。だが今は無理だ」
「すぅ……なら今回は諦めてあげる」
『おん?何時もの突っ込み癖はどうしたの会長らしくない』
「私だって今すぐにでも行きたいけど、今回の件でやりすぎてしまったと反省しています」
『私の打撃で反省って……』
距離が離れた黄色がもう一度足を踏み出してくる。だが、その一歩は足首に巻き付く黒い紐によって阻止された。
「はぁい。先輩がお話し中なので邪魔しないでいただきませんかぁ?――よっ!」
そのまま、すらりとした細腕からは想像できない怪力をもってしてフードの男に投げつける。だが、翡翠の籠手の裏拳によって思いっきり叩き落とされたのだ。
やばい、音が聞こえたような気がするが……やはり彼にとってほかの寄生体は消耗品なのだろう。倒れ伏しピクピクと痙攣する姿を見ても御くびを返さない心情に悪い意味で敬意を表しよう。
「そろそろか」
『みんな集まってね……こっちでカウントするよ。スリーカウント!ツー、ワン』
「礼、ゆずき!」
「「了解!」」
「これは、お土産ですよォ!」
「僕からもね!美少女からのプレゼントちゃんと受け取ってくれ」
礼は胸のクリスタルから筒なようなものを取り出し、ゆずきは鞭から液体を生み出した。
妖精が踊るように局部を隠すというより装飾の意味しかないスカートが翻える。クルリと回ったあと、前屈みになりパチンと指を鳴らす。そうすると、紫水晶で出来た柱が地面から生成され海斗たちを上部に移動させたのだ。
無論それだけなら、只の上下運動。魔法で撃ち落とされるだけだ。だからこそ礼が投げた投擲物が役に立つ。
パンと閃光、のちに煙。
礼が投げたのは閃光手榴弾と発煙手榴弾。閃光手榴弾で目と耳を壊し、煙でパニックにさせるためだ。それもスモークに色が付けられているおまけつき。
「これは、ちょっとっ」
「はぁ、何で私がこの人を運ばないと行けないんですかぁ」
「ふふふ。僕がうらやましいだろう」
「いや、早く飛べよ……弾着するんだからな!」
――。
町の至ると頃では銃撃戦が行われていた。だが被害が低い場所が所何処にある。一つは人が少ない場所、もう一つが軍事施設だ。
そして、その中の一つにロシア大使館が含まれていた。
ロシア大使館にいる人員はもともとスカーレットクイーンと言う特殊部隊員であり、地下には戦闘車両は無いが十分に戦闘できるほどの個人用火器があったのだ。
手早く侵入者を殺したあと、ヴェロニカは庭に出た後、すぐに弓を構え外に出た。恰好はいつものパンツもろだしドレスだ。
「ふふ、旦那様がわたくしを頼ってくださるなんて光栄ですわ」
旦那じゃねぇよ!と声が聞こえた気がするが無視。
魔力を高め威力を上げる、人と言う殻を破り姿が赤を基調とした姿から黒を基調とした露出が多い医療に切り替わっていく。
胸の宝石が光輝き右手には黒い焔で作られた矢が握られていたのだ。ゆっくりと愛おしむようにつがえ。
「さぁ、わたくしの思いを受け取りなさい」
手を離した。
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