77節 捜査
「ふぅいいいい。やっと終わった。これからは明日の分をやろう」
会社「あ、これもやっといて、材料は今日(お昼)来たけど今日まで(後四時間)にやっといて200個(八時間かかる奴×二個)」
「……ふぁ!」
( ゜Д゜)ナニイってのオマエっ!?
2022/06/06
ルビ振りを追加
白くよく整理された部屋。新しく新調された蛍光灯型LEDが明るくまんべんなく照らしている。
カーテンを閉じ締め切った空間の中でも、空調がしっかりしているためか息苦しさはない。
そんな人が余りよりつかない場所に咲は訪れていた。
所狭しとおかれるスチール製の棚の中から目的のファイルを探し出す。
捜査資料室と呼ばれた名称通りここには警察が集めた捜査資料が綺麗にまとめられていて、ここ十年のものを年代別に並べられているのだ。
本来であれば、個人情報の保護のために入室には上司への事前相談が必要なのだが。
「見つかったのです?」
「あぁ、大体はな。しかし、そちらも仕事があるだろうに付き合わせて悪いな」
「んん。そんなことは無いよ!咲ちゃんが頑張ってるのはみんな知ってるのです!」
ぴょんぴょんばんざーい。と子供のように体で感情表現する彼女に癒されながら私は彩と一緒に資料を探していたのだった。
保安庁の要請で一度活動を停止したSS。表向きは装備転換やら配置転換やらを理由にしたものであったが、政治家や有識者の働きによって無事に活動は再開された。
しかし、法務省の傘下である警察庁の人間からの目線は冷たい。
まず、装備の優遇だ。機械生命体によって装備予算が増額されたからと言っても、すべての隊員に装備が行き渡るわけではない。現に、警察官の多くがメイン武器として自動拳銃を所持している。
そう、拳銃である。アメリカの一般警官ですら車の荷台に|単発式の突撃銃(AR-15)を配備されているのにそれすらない。と言うか警察の中でも拳銃あるだけましである。今でもリボルバーを使っている者もいるのだから。
無論、これでは装備は傭兵未満と言うことで更新が叫ばれているが……弾薬にホルスターに教育にとお金がかかる。
故に、高価な装備は優先的に特殊部隊で配備されると言う訳。
そして、尚且つSSは上に目を付けられている。色々な無茶をやらかしたことに自覚があるが市民を守るため致し方ない。
だが、その行為がお偉いさんには目についたようで。
(少なくとも、我々に目撃されたくないことは行っているのは理解できる。腐らない組織は無いがここまで膨れ上がるものなのか)
冷戦期の|ドイツ民主共和国(東ドイツ)のように国家保安庁は無いが、部隊の再編とかの理由で僻地に飛ばされる可能性が高い。
だが、カチコミをするのにも|証拠(弱点)がない。
元から兵員不足なんだ。無駄に戦闘しても意味がない。
故に今は派手な行動はしない。まぁ、嫌がらせしないとは言ってない。
「あ、探してるのってこれじゃないのですか?」
「あぁ、楓ありがとう」
「はいなのです!」
ファイルを手渡してくる楓にお礼を言う。
楠木楓。彼女はこの捜査資料室を管理している管理官だ。
身長は一五〇センチ程と中学生にも劣らぬ身長に暑さ対策のためか、やや茶色の髪をアップヘアーにした女性。年齢は二五歳とまだまだ若手であるが、魔境である資料室の番人を許されているのだから優秀だ。
少し大き目な制服を着用し、背伸びする彼女は中学生が大人に渡すほんわか様子に見える。
「重ねてありがとう、いろいろ合ってな正式な閲覧許可が出る頃には遅いと感じてしまった」
「わかっているのです。だから、清掃中の立て札を掛けたのです。これなら一時間ぐらいは問題ないのです。私はわかっているのです……咲さんが頑張っているのを」
「そう言ってもらうとうれしいよ」
そうしてペラペラと私は受け取った資料をめくっていく。
事件現場、日時、付近に散らばる証拠、付近の住民からの聞き取り、被害者の家族構成、被害者の情報とう吟味していく。
(証拠はない。防犯カメラも使用不可能、付近からはマソ反応が検出され機械生命体の仕業だと上層部は断定……か。寄生体の計画的反応は考えに行った手もないか)
被害者氏名は雨宮翡翠。年齢は十五歳。女性。近くの中学校に通っており成績態度運動能力どれも平均より高く姉と同じように頼りになる人扱いされていた。
正義感が強く、手助けをしたりボランティア活動をしたりと外見のお淑やかさからは想像できないようなアグレッシブさを持つ少女であった。
夜遊びも基本せず、被害にあった時間帯は習い事である塾での帰り道でありその塾もボランティア活動をしていたりと大御所ではないが評判はいい。
塾に入ったのは受験勉強のためであり、三か月ほど前らしい。
(怪しげな団体に属していたこともなく品行方正な少女だ。……容姿目的に攫われた、にしては出来が……ん?)
一つ気になったことがある。
犯行時間だ。午後八時四二分。至ってなんの変哲もない暗闇。
いくら日射時間が長い夏だからと言ってこの時間では地平線の影に隠れる時間。
時間……。
(いや、おかしくないか。だって……)
「な、なぁ、楓この捜査資料には確かに塾の帰り道に犯行に巻き込まれたと書いてあったな」
「はいなのです。なので、彼女をはじめから狙っておいて待ち伏せと――」
「それは、おかしい。何故なら中学生の塾のピーク時間は夜八時半だからだ」
中学生の基本的な学習塾のピーク時間は午後八時半である。これは、この時間が一番生徒数が多いという意味だ。
それは、夏休み中でも変わらない。学生ならば、いや、特にまじめな彼女の事だから夏休み中も生徒会やらなんやらで忙しいはずだ。
故に行く時間は、フリー時間の午後六時過ぎ。
余りにもおかしい。
「真面目な彼女が……わざわざ抜け出してまで帰宅する、離れる理由とはなんだ?」
きな臭くなってきたな。そう思いながら咲は次のページをめくったのだった。
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