75節 せめて当てましょう?
パンパン。
火薬が炸裂し硝煙が鼻孔をなでる。一発ごとに役目を終えた薬きょうが薬室から排藥され金属特融の音が奏でられる。
最後の輝きが地面にバウンドしたのち、少女はスライドを戻し構えていた銃を下げた。
そのまま、付けていた耳栓を外し近くにいたインストラクターと後輩に振り向き返答を待つ。帰ってきた言葉は。
「酷い」
「えっと、せめて半分は的に当てましょう?」
批判と慰めの言葉であった。
話は少し遡る。俺が装備していたHMD搭載カメラをパソコンで流し終えた所からだ。
部屋の中が静寂に包まれる。楔が慣れていないだろうという配慮のこと、何時も使用される会議場を使用しないで来客室内での映像の閲覧だった。
室内にいたPMCのメンツとSSの重要役職の中、ポツンと俺たちは混ざっていた。
方っ苦しいのは無しってことになってるが、深刻な空気と知らない人が周りにそれも近くに感じるからどちらかと言うと悪化しているような気がする。
「よく、帰れたわね。腕は大丈夫なの」
「おかげさまで……」
「まぁ、嬢ちゃんが啖呵切った時は肝が冷えたがな。よく止めた……嬢ちゃんもまぁ、気持ちはわからなくもないがな」
「はひ」
ガシガシと大きな手のひらで少女の頭を乱雑になでる獅子王陸。壬申の身長三十を超える大男にいきなりなでられればビビらない女の子はいないだろう。
「けど、緊急事態とは言え扱い方も知らん道具を渡すお前もお前だ。反省しろよ」
「わかりました獅子王さん」
にやりと白く輝く歯を見せながら元の場所に戻っていく陸さん。
確かに、いくら緊急事態とは言えいきなり説明も無し銃を渡したのは後から考えれば失敗だった。
人容易く殺害してしまう道具を一般の女性が使う。それも、指導員無しで。安全面と言う観点であれば渡す前にせめて安全管理ぐらい教えておけばよかった。
「そうね。けど、判断的にはナイスだったわ。そうでもしないと手が回らなかったでしょう」
「敵は私たちが考えるより強力だ。寄生体を複数それも連携をとれているだと。我々は機械生命体を倒すために組織された部隊だが、こんなのは荷が重すぎる」
歩兵の小回りさと装甲車並みの防御力にチーターなみの瞬間速力、そして戦車なみの突破力と攻撃力。
こんなのが連携して襲ってくる。そして、予備戦力もありとは果たして一回も抜かれることなくこっちが攻勢にでるのは無理だ。
他の人間もそう思ったのだろう。一斉に立ち上がり。
「とりあえず、陸は部隊出して警備を……緊急防御態勢(DEFCON3)よ。対物も持っていいわ」
「了解。ちょっと物騒な見回りに行くか」
「そうか。ならば私達(SS)は警察での調査記録を洗い出して出来れば持ち出してこよう。あんなのが有ったばかりだ、私も今の法務省は信用ならんからな。怪しい所があるかもしれない」
適宜解散持ち場に戻れ、そう精華が宣言し部屋からそれぞれの目的を果たすために外へ歩みす進むのだった。
ふぅ、とかすかに息が漏れるのが届く。
ふと見れば、楔が安堵していた。そんな彼女に、ポンと手を置き精華は。
「ちょっと疲れちゃったかしら」
「えぇ、そうですね」
「でも、貴女もやることがあるのよ」
「え?」
「あんな啖呵切ったんだもの……せめて時間稼ぎくらいは出来るようにならないと駄目よ」
「え。え?」
「じゃあ、射撃場に行きましょう。大丈夫、私インストラクターの資格もってるから」
そうして彼女は精華につられて今に至るのだった。
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