74節
「と言う訳で、本件は我々も尽力すべきことと判断いたしました。公安からは機械生命体対策部隊(SS)も対応いたします」
翌朝、俺たちは石竹精華たちを連れて楔の家へ訪れていた。
寄生体を使って誘拐事件が起きた。そして証拠映像がある。この二つで彼女たちが動くには十分すぎる理由。
だが、世間様からの民間警備会社印象は悪いと言ってもいい。いくら石竹民間警備会社が周辺住民と交流を重ね融和をしていても山を一つ越えれば声は届かない。
それにいくら精華自身が成人のように優しい性格だとしても営利組織、たった一人のお小遣いで請け負うなど無理がある。
よって、今回も都合よく暇な咲さんに介入してもらうことになったのだ。
本人曰く、今現在はSSの待機命令は却下され今まで通りの業務に戻っているとのことだが、彼らが受けた不信感はぬぐい切れなく警察とは一定の距離を取っているようだ。
じゃないと、まじめな彼女たちの事だ。きっちり報告書に書き俺らは両腕が前に出てしまっていたかもしれない。
「どうも、SSの小鳥遊咲と申します。本日は急な訪問に答えてくださりありがとうございます。先日、お宅の妹さんの件について新たな情報が入ったので詳しくお伝えしたいと思い来訪いたしました」
因みに高校生である俺たちは車の中で待機している。明らかに子供の外見をした俺らがあの場所に居ても交渉はうまくいかないだろう。
交渉、何を話し合うのか。
それは単純に言ってしまえば、彼女……楔を撒き餌さにするのだ。
あの、声は楔を狙っていた。コレクター精神だからと電子音声で加工された……彼と仮定しよう。
彼はあんなちゃちな理由で貴重な戦力を三人も振り分けられるのか、と考えずにいられない。寄生体は希少だ、コア本体の数もさることながら戦力して得られる時間も長い。
故にもしかして、俺たちが知らない何かしらの条件があって何かしらの適性のようなものがあることがわかったのなら……狙うだろう。
だからこそ彼女を生き餌として使う。相手を半殺し、あるいは資料を手に入れる。
「と、いうことなので今後数週間我々が彼女の事を保護しようと思うのですが、よろしいでしょうか」
もちろん、そんな事を白昼堂々と言えるわけもなく。あくまでも保護、守るためですからしばらくお願いと言う形を取っている。
どちらかと言えばお願いと言うよりは強制だけどな。
楔の母親だろうか、長い髪をかすかに揺らし思考を一巡したあとペコリとお辞儀をして家の中に去っていた。どうやら荷物を取り入ったようだ。
「さて、これからどうなることやら」
「まぁ、現状維持じゃない?咲さんは警察だからね……僕たちが持ちえない情報収集能力できっと力になってくれるよ」
「あぁ」
兵員輸送車の中で俺たちはゆっくりと水を飲んだ。
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