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パラサイト・エヴェレット parasite_Everett  作者: 野生のreruhuさん
本編:第3章 欠けた緑柱石
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68節 数撃ちゃ当てるさ!


「がっ!」


 突如ほとばしる衝撃と浮遊感によって遅れて俺が攻撃されたのだと気が付いた。何とか、何とか顔面には当たらないように出来たが、回避するのは極めて困難なことで。

 間一髪防御のために差し込んだ腕は鈍い音を体内で響かせ、圧迫された腹部は生成された胃液が逃げ場を無くし口の端から軌跡のように漏れ出ていた。

 そのまま、陸揚げされた魚のようにべちべちと地面をみっともなくバウンドし背中を壁に叩きつけ静止した。


『あに!!』

「マスター!!」


 例が沸き目を振らずに海斗のもとに駆け寄る。

 甘かった。もっと纏まって行動すればよかった。そうすればご主人様を傷つける害意にも気が付き、防ぐことができたというのに。

 この濃霧の中では安否を確認するだけでも十分に近づかなければならない。

 マスターの容体は……生死にかかわるものではない。只、とっさに攻撃を防いだ際に使用した右腕が明らかに紫色に変色している。骨にひびが入ったのは明らか。

 内臓は大丈夫そうだ。けど、圧迫された影響で多少の機能不全を起こしている。


「がふ、がは」

「ねぇちょっと大丈夫?」

「これは、一体……。いぇ、お客さんですかぁ」


 コツコツ、牢獄に入る番犬が現れる。

 それは、三名の少女であった。バイザーとローブと身を出来る限り隠しながらも、隙間から見えるクビレのついた体と胸元には半分に欠けた。


「くっ……初日に、接敵エンカウントとか……マジかよ。こりゃ、一週間経たずに病院送りだな」

『これは……逃げられないね』


 さて、真っ先に出た案が逃亡。相手の素性がわからない今、戦闘行動は限りなく避けたい事柄だ。

 しかしながら、負傷者一名と民間人一名を背負いながら三人を相手取るほど礼とゆずきは戦闘経験豊富ではない。

 尚且つこの周りを包むきりだ。明らかに自然現象で出来たものではない。もし魔法で出来たモノであれば、下手に飛び出して方向感覚不利だし、そもそもこのフィールドで逃してくれるとも限らない。

 唯一の救いが純粋な寄生体よりスペックダウンしているというゆずきからの情報だけなのだが。


(戦いは数だ。一騎当千と呼ばれる兵も逆に言ってしまえば千人以上で殴れば死ぬと同義。相手の数が多いのに背を見せるのは自殺行為だ)


 俺の事を蹴り飛ばした少女が槍をもってこちらにやってくる。だがその歩みは横から飛んできた飛翔物によって中断されたのだ。

 カコンと支えを失ったかのように首をかしげる彼女の視線、その先には不格好ながらも銃を構える楔の姿がそこにあった。


「動かないで!次変なことをしたら撃ちますからァ!!」


 銃口から漏れ出る硝煙。なるほど発砲したのは彼女のようだ……どうやら結構覚悟があるらしい。

 非力な少女には荷が重いかもしれないが時間稼ぎ的には問題ない。

 ゆっくりと力を入れ立ち上がろうとした瞬間、何処からか声が耳に届いたのだ。


『ふむ。想定外だったぜ。まさか銃を持っているとはな』

「だれ……ですか?こんなこと許されると思ってるんですか!!」

『いやぁ、噂道理の正義感だ。君の妹が誇りに思いのは当然だったか』


 ややくぐもった声。まるで壁一つ通しているかのような他人事。

 なるほど……胸に光る人口光……あの槍を持った寄生体に小型カメラとスピーカーを取り付けているのか。

 自分は引きこもっといて指示だけ出すとは良い性格してるな。

 だが、サラリと「妹」の事について言及したことに俺は聞き逃さなかった。たった二言の会話で海斗は今後の行動方針を一気に定めたのだ。


「妹……?まさか」

『まぁ、気が付くか。いやぁ、このぐらい察してくれないと面白くないか!うん、そだよ。俺が誘拐したのさ。君の妹は優秀でさ……使い心地がすごいのなんの色々取引先にも好評でね。せっかくだったら両方ともコレクションして姉妹丼として使おうと』

「言いたいことはそれだけですか?下半身に思考が引っ張られてるみたいですね。この場にいないからこそできる余裕と言うやつなのでしょうか」

『ははは。元気で息のいいこだ。後にしようとしてたけどやめた……メインディッシュを最初にいただくとしましょうかァ!四足を捥げ(ヤレ)!』


 開始のゴングは地面の踏みしめる音だった。ハイヒールと言う本来走行に向かない靴であったが寄生体にはそんな常識は効かない。

 一歩踏み出したと同時に反作用で地面が少し陥没し、距離を詰める。

 音と勢いに押されながらももらった銃を握りしめ、レーザーに合うタイミングでトリガーを引くが半身を逸らされ回避されてしまう。

 バンバンバンと楔は続けて発砲するがやはり初心者何発かは回避するまでもなく弾道が外れ距離を詰められる。まるで、狩りで獲物を追い詰めるような感覚に高揚感を覚えたのだろう。

 あざ笑うかのようにスピーカーの男がしゃべり。


『ねえ、さあ。当たらなければどうと言うことは無いって言葉知ってるよね?君がやってることは無駄なんだよぉ!』

「じゃあ、俺が当てれば問題ないな」

『は』


 バンと音と共に走っていた少女が横から殴られたかのように倒れる。

 銃撃された方向に目を張ればそこには腹部を抑えながら立ち上がり、しっかりと相手にあてた海斗の姿があった。


「機械生命体にダメージを与えられる徹甲弾(AP)は痛いだろう?寄生体なら仰け反るはしても負傷はしなかった。やっぱパチモンだな」

『な、けりを食らって意識不明になってないだと』

「まぁ、こういうのには最近出くわすことが多くてさ。それも押し売りなのがたちが悪い」

『へぇ、だからって最近の未成年は銃を持つのが流行ってる(トレンドな)のかい?』

「ちょっと特殊な環境でね。故に色々知りたいのさ……特に胸の宝石が半分になっている理由とかね」

『それは困る。社外秘なんだ……よし、女は生かして君は殺そう』


 よほどおもちゃを傷つけられたのが癪に障ったのだろう。殺すと言葉が発せられた瞬間に槍が掲げられる。ほか二名も礼とゆずきに向かって歩み寄っていく。

 なるほど、人質にでもするつもりか。でもお生憎様、俺たちの中で彼女たちが一番強い。


「礼、ゆずき。出来る限り遊んで」

「……なるほど、わかったよ」

「へぇ。まぁそうなりますよねぇ」


 礼だけはこちらの容体を気にしてか不満げな態度を一瞬取ったが、これが相手取るのに一番適している。

 ゆずきはニヤリとほほ笑んで手をちょんちょんと向けて挑発し、礼は精華から教わったのであろう構えをし体制を整える。

 二人とも何時もの獲物は使わず、戦闘着にも変えず立っていた。

 マナを使った戦闘はしない。今はその時じゃあない。


『お前ら俺らなめすぎだよね?』


 双方の準備が整い、辺り一帯緊張感が訪れる。

 わずかな動きすら見逃さないと集中し……槍を持つ彼女の姿勢が下がった瞬間。俺は手荷物銃の引き金を引いた。



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