66節 コンシールド
まさか感想が来るとは……こんなにうれしいことはない!!
「同じ匂い?」
「においと言うのはどちらかと言えば比喩表現ですがぁ……あながち間違えてないと思いますぅ。先輩、機械生命体がなぜ人を襲うのかはご存じですよね?」
「あぁ、確か人間がマソを分解してできたマナを取り込むために襲ってるんだろ?精華さんから聞いたし視れるからな」
確か機械生命体においてマナは酸素と同じであり、マソを分解しマナを作成できるのが人間だからである。
言ってしまえば、彼らは一般通過酸素ボンベを殴って何とか呼吸しているのである。
最も、人間の体を持ちある程度貯蔵できる寄生体や契約者と契約した個体はある程度緩和または克服できる。
「寄生体は人間と同じ器官を持っていますのはご存じですよねぇ。故に、マソをある程度分解してマナをある程度自活できるのです。まぁ、砂漠に五百ミリリットルのペットボトル一つで放り出される並みに頼りないですが」
まぁ、すぐに持たなくなるな。
「で、ここで重要なのは同じ器官をもっているという点です。同じ料理を作っても人によって味が変わるのと同じで、マソも少し変化するんですよ。些細な違いなんですけどねぇ」
「つまり、あの生徒会長さんのマソ臭が似てたからあったのが妹じゃないかって予想を立てたわけね」
「そう、先輩の妹さんなだけあるぅ」
ビシと指をさしその後イェイとハイタッチする二人組。
確かに、寄生体関連であれば俺が放っておける案件ではない。並行世界の真実、また今後相対するかもしれない天使の教会の情報を入手できるチャンスだ。
実際に交戦経験のあるゆずきが気が付いたことにも合点がいったし、納得もした。
けど……。
「やっぱ相談はしてくんね?」
と、言わずにはいわれなかった。
とにかく、引き受けてしまったものは仕方がない。たった四人で出来ることも限られるし、ここはコネと言う名の精華さんヘルプを使用しよう。
『ごめんなさい。こちらでも色々あってね。特にSSとの関係で探られてて……』
「あぁ、そう言えば咲さんが単独行動してた理由ってそれでしたね」
携帯電話から聞こえてきた声は疲れ果てた声だった。
二日経過しているとは言え、やはり民間警備会社は色目で見られているのだろう。どうやら、査察が入ってしまったらしい。
スピーカー越しに聞こえる声からでも吐息が多くくたびれて居るのは人生経験の少ない海斗でも理解できていた。
『とにかく、こっちでも調べるから無理はしないでね?』
「了解」
「……で、どうだった?」
「無理だった」
「あぁ……てへ」
「おぃ」
今回は致し方がない。せっかく進むチャンスだが放棄するしかないだろう。
だが……。
「胸騒ぎがする」
「マスター。どうするの?」
「散歩、を夜にしようと思う。連れが一人増えると思うけどな」
「オッケー。じゃあ、こっちから連絡しとくね兄」
際はすでに投げられた後だ。自分が知らない場所で、自分が知らない手で……そして自ら自身によって。
越しに見る自身の行動には疑問しかない。しかし、情報を手に入れることで並行世界の秘密や世界の秘密を知ることができるのなら。
いや、そんな蛮勇じゃない。
ただ、ゆずきが受けた借りを返すだけ。
自分の部屋に上がっていき、棚に飾ってあった小柄な銃を手に取るのであった。
――冷たい夜風がほほをなでる。まるで、鉛のようにまとわりつく暑さを拭うように。
所々さび付いたベンチに腰を掛け辺りを見渡す。と言っても視界なんて聞かない、関東統合都市ならいざ知らず田舎なんてこんなもので、所々にそびえたつ虫が群がる街灯と星空だけが唯一の光源だ。
人も居ない。管理する人も、スポーツをする広さもない。そんな寂れた公園に俺たちは待ち人を待っている。
各々が遊具に座ったり滑り台の上で見渡したりしていると、静観な世界に揺らぎが現れる。
自然に視線を向ければ今度は私服姿の楔がこちらに歩みを進めていた。
公園の入り口にある街灯によって彼女の容姿が浮かびだされる。
顔をどちらかと言えば吊り目でまじめな印象を持ち、瞳の色や髪の色も遊んでいないだろうから黒。髪の長さも肩で揃えたセミロング。
背は俺と礼との中間あたりだろうか。体形も一般的な女子で、太っているわけではなく、モデルのように引き締まっているわけではない。
容姿も優秀な方に入るだろう。
服装はロングスカートに半袖と最近よく見る夏服だ。そして、斜め掛けのポーチを付けている。
「こんばんは、夜分遅くにお呼びして申し訳ありません」
「いえ、協力を申してるのはこちらですから。妹を探し出すためなら」
「電話で申し上げた通り、本格的な捜査は後日になりますが。それでも事前調査は行った方がいいでしょう?」
実際に、事前情報は少なかった。
最近起こったロシア内戦と呼ばれる津波によって日本国内のニュースは濁流に飲み込まれシャットアウト。
知りえた情報は纏めブログや掲示板などの信ぴょう性が低い物ばかり。
舞が監視カメラを徹底的に調べても、証拠は一切なく。錯綜するばかり。
故に被害者の身内や警察カチコミをした彼女については信頼できるだろうと判断だった。
「とにかく、現場とかが視たいので案内していただければ」
「わかりました」
「あ、マス……海斗アレ渡した方がいいんじゃない」
「あ、そうだった。楔さんこれを」
そうして俺はプラスチックの容器に入ったものを手渡した。
受け取った彼女は目を見開く。何故なら、飛び込んできた形状が触れ慣れなく見慣れたものであったのだから。
「スミス&ウェッソン ボディガード380。持ち運び用小型拳銃です。レーザーガード付きなので初心者でも扱いやすいですし、使用する弾丸はショートパラベラム弾で反動も少ないです。装弾数は6+1です」
「え?え?」
「グリップも握りやすく女性にも人気ですよ。特にアメリカだと護身用として、法執行機関だともしもの時用の――」
「まってまって!」
「なにか?」
「何か?って、私そんなもの使った覚えないし使うつもりもない。それに警察に見つかったら」
「安全が確保言出来る状況とは限らない」
え?戸惑う楔の手のひらに無理やり拳銃を乗せる。
彼女の瞳を貫くようにしっかりと瞳孔を見て言葉を継げる。
「誘拐がどんな状況で起きているかも不明で、そもそも俺らが協力を申し出たのはゆずきが誘拐されかけたからだ」
「な!?」
「まぁ、襲われたが正しいですけどねぇ。近くにいた警官が守ってくれてその後銃撃戦起こりましたけど」
「だからまぁ、もしもの時は自分の身は自分で守れ」
「……いいわ。上等じゃない……誘拐犯に一発泡吹かせてあげるわ」
「お。これがセーフティーでマガジンがこれな。あと通信機も渡しとく」
バックから取り出した装備を静かに受け取った彼女は緊張したまなざしで、空を見上げた
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